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幕間:警備と子供とお祭りの過ごし方
街は祭りということもあってかいつもとは様子が違っていた。
特に街の外からやってくる旅行者や行商人の数が明らかに多い。
それだけに街の玄関口となる北東二つの門は重要な役割を担っていた。不審者や野生動物の侵入を防ぐことに一役買っているのだ。
北門の前、街灯に背中を預けている男の姿がある。
佐野 和輝(さの・かずき)だ。彼の近くにはまだ幼さの残る少女と賢狼の頭に鎮座している妖精の姿もあった。
アニス・パラス(あにす・ぱらす)とルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)の二人である。
「お祭りだ〜♪」
「お祭りですよぉ〜」
嬉しそうにはしゃぐ二人に佐野がため息を吐いた。
「残念だが仕事優先だ」
「うにゃ〜……」
「楽しいことを目の前にお仕事は、辛いですよぉ〜……」
門の内側、街の方から警備員らしき男が佐野に話しかける。
「定期連絡ですよ」
「ご苦労」
佐野は男から手紙を受け取って一読する。
その内容は警備状況と捜査状況の詳細だ。特に新しい情報などは見当たらない。
大きな問題が起きていないということは良いことだが、逆を言えば進展がないということでもある。
「ふむ、異常なしか」
「異常ないなら遊びに行っても〜?」
「仕事だ」
「うにゅ……あれ?」
うなだれたアニスの視界に見知った人物の姿が入り込んだ。
「和輝、和輝和輝!」
「飽きたのは分かってるが真面目にだな……」
「ルーノたちがいる!」
「あ、本当ですぅ〜」
ルーノたちも気づいたようで佐野の元へと駆け寄ってきた。
露店で買い漁ったのだろう。焼きそばやお好み焼きといった食べ物の類を抱え込んでいた。
本当に食べ切れるのだろうかと不安になるほどの量だ。
「久しぶりだな」
「かずきー! あにすとるなもひっさしぶりだな!!」
「にゃっ! 久しぶり〜♪」
「お久しぶりなのですよぉ〜」
ルーノの付き人のように後ろに控えていたクウが頭を垂れた。
そして真顔で言った。
「めずらしいやないの」
「……ああ奇遇だな。というかなんだその口調は」
「最近、クゼからアニメなるものをミセテもらいまして。それに登場するヨウセイなる小人がカワイイことこの上なく、話し方をマネてみたくなりました。いかがです?」
(影響されやすい子だな)
佐野はクウの頭を撫でるとルーノに声をかけた。
「二人だけで回ってるのか?」
「おうよー! くーちゃんがいるから迷子にならないのだ」
「ん」
クウが親指を立てた。任せろという意味なのだろう。
しかし見た目は少女でしかない二人の姿には不安を覚えざるを得ない。それは佐野も同じだったようだ。
(……二人だけにしとくのは不安だな。例の野盗の件もあるし)
佐野がアニスに告げる。
「はぁ……アニス、ルナ、遊びたくてウズウズしてたし、休憩も兼ねて二人と一緒に遊んでても良いぞ」
「ふぇ? イイの和輝!? やった〜♪ ねぇねぇ、どこを回ろうっか?」
「これからクゼに教えてもらったチャヤに行くところ」
「いいですねぇ〜。4人で遊ぶとするですよぉ〜♪」
佐野に見送られて四人は門を後にした。
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