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ニルヴァーナ学園祭、はじめるよ!

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ニルヴァーナ学園祭、はじめるよ!

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5章 人々の想い

「あんまり人がこないかと思ったけど、結構くるわね」
「そうね。いいことじゃない」
こちらはニルヴァーナでのイコンを題材とした展示をしているイーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)ジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)の二人である。
「こうして昔の画像を見てみると、懐かしいわね」
「そうね、アトラスの傷跡にある打ち上げ台まで行ってアンカンシェルに乗って……」
「今はゴアドーのゲートあるから楽になったものよね」
「本当よね。最初なんてイコプラ状態までバラして運んだり……。今じゃ二度とそんなことしたくないわ」
二人は自作のビデオを見ながら昔を懐かしんでいた。
「技術の進歩ってやっぱりすごいわね」
「なんかいつものイーリャらしくないわね」
「こういう特別なイベントだもの。そこは大目に見てよね」
「すみませーん、これってなんですかね?」
すると一人の男性が展示品について質問をしてきた。
「それはBIM搭載フィーニクスの『コルニクス』よ。……って、私展示した覚えないんだけど」
「あっ、それあたしが持って来たの」
「ジヴァ、あなたって人は……」
「まぁまぁ、イーリャが過去を振り返っているみたいだからあたしはこれから先の展示をってね」
「はぁ……。まぁ、いいわ。それでこれは……」
それを言うとイーリャは先ほどの男性にコルニクスの説明を軽くしていた。
「イーリャ、結構楽しそうにしているみたいでよかったわ」
「ジヴァ……。貴方、第三世代機の予想図モデルまで持ち出しているわね……」
「今見るとレアものじゃない? せっかくだし展示しないとって思って」
「勝手ねぇ……。紛失しないようにしっかり見張っててね?」
「そこはしっかりするわよー」
二人は二人なりの方法で学園祭を楽しんでいるようだった。
ちなみに展示品を回収する際にいくつか壊されたイコプラがあったが
「壊れちゃった。ごめんなさい♪」
と言ったたいむちゃん直筆の置き手紙があったのは内緒である。


「こうやってみると圧巻だな……。こりゃ……」
初等部で展示をしているのはシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)である。
彼女は子供達がニルヴァーナでやりたいことを絵や作文、歌などにしてもらいそれを展示しているのである。
「なんでもいいとは言ったが、ほんとなんでもありだな。……なんだよこの絵は」
シリウスがとったのは一枚の絵である。
その絵にはシリウスと一緒に昼寝をしている子供達が書いてあった。
「おいおい、ニルヴァーナに来てまで昼寝がやりたいとはな……幸せな夢だな」
子供らしい内容の中にはアイドルになりたいなど、壮大な夢を描く子供達もいるようだ。
「こっちはアイドルになってみんなを笑顔にしてやりたいか……」
するとそこに五月葉 終夏(さつきば・おりが)達が遊びにきたようだ。
「おっ、子供連れか。オレはシリウス・バイナリスタだ」
「私は五月葉終夏だよ。こっちの子たちはタタとチチだよ。それにしてもすごいね……」
「あぁ、オレも驚いている」
「私達じゃ考えられない夢ばっかりだね……。タタとチチの夢ってなに?」
「おねーさんとチチとあそぶのー」
「おねーさんとタタとあそぶのー」
「ははっ! なんだ小さな夢だな!」
「それでも子供らしい夢でいいけどね」
「そうだな。ガキらしい夢だ。こういうの見ているとさ、割と世界は大丈夫なんじゃないかって思えてくるな」
「そうだね。子供達が笑っているならそれだけで世界は希望に満ち溢れているんだよ」
「だな。……ところでいつたいむちゃんは遊びにきていたんだ?」
「えっ?」
「あれ見てみろよ」
シリウスが指差した先は今回の学園祭の風景を描いた絵があった。
「ほんとだ。しっかり作者たいむちゃんって書いているね」
「相変わらず不思議な人だぜ」
そんな会話を繰り広げる二人であった。


「賑やかな祭りだな」
「そうですね……。周りは、ですが」
そんな会話をしているのは矢代 月視(やしろ・つくみ)フェレス・レナート(ふぇれす・れなーと)である。
「飛都、どこかに出かける気は……」
「今研究の中間纏めをしている」
部屋の奥で自身の研究の中間纏めをしているのは玖純 飛都(くすみ・ひさと) である。
彼達の展示教室の前には「実験にご協力を。ただし、事故防止の為、契約者及びパートナーの方に限ります」と書かれた一枚の張り紙があった。
「はぁ……。せっかくの学園祭なのに……。飛都に探求以外を求めるのは贅沢なのでしょうか……」
「いいじゃないか、遠くに聞ける喧噪、人気の無い教室。雰囲気があって……」
月視は溜息をつき、フェレスは不適な笑みをこぼしていた。
しばらくすると飛都の研究内容に興味を持った人たちがいくらか集まったようだ。
「飛都、ギャラリーが集まってきた。どうする?」
「契約者かパートナーがいたら実験に協力してもらう」
そういうと飛都は機晶石の声を聞く実験の準備を始めた。
幸い契約者の協力者を得たため、実験は実行に移された。
「今回実験に使用する装置は対象物に刺激を加え、その反応を音の形に変えて特徴を浮かび上がらせるというものだ」
飛都はギャラリーに向かって今回の実験内容を説明した。
「勿論過去にも用いられた事はあったのだが、その度に測定装置に狂いが生じた為に失敗とされて忘れられたらしい。と、言うわけで測定の部分に機械を使わず、人に介して貰おうという事だ」
説明が終わると早速飛都は実験を開始した。
実験は問題なく終わりデータが採集された。
「飛都、どうだった?」
「……有意な結果は得られなかったな」
実験に協力してくれた人の中に「なにかを聞いた者」も「身体の状態に変化が起きた者」も現れなかった。
「……ふむ、なぜだ? 実験の内容自体に問題は無いはずだ……」
ブツブツ呟きながら飛都は教室の奥へと戻って行った。
飛都の後姿を見ながら二人は何かあきらめた表情をしていた。
「……周りは賑やかですね、フェレス」
「そうだな、周りは賑やかだな」
二人は少し遠い目をしながら会話をしていた。
するとフェレスはなにから怪しい動きで飛都の元に向かおうとしてた。
「フェレス、なに教室の奥に向かっているんですか? 忍び足で」
「いや、暇でな。飛都にちょっかいでもかけに行こうかと……」
「フェレス、ちょっとそこに座りなさい。だいたい君は目を放すとすぐに……」
暫く飛都の展示教室の前で説教されるフェレスと説教している月視の姿が目撃されたという。