リアクション
終/今は戻れぬ眠りの中で
果たしていつから、そこにいたのだろう? 一体どのくらい、そうしていたのだろう?
「あれ?」
なにも思い出せない。前後関係がまるきり、頭の中から消え失せていた。
記憶喪失……というには、他のことがあまりにもはっきりとしすぎている。
「なんで……ええと? ここは、一体?」
青空の広がる緑の草原に、彩夜はいた。
まったくそこは、知らない場所だった。なのにひどく、心が安らぐ。
愛用の創作ノートと、シャープペンシルを手に、ひとり彩夜は気付けばそこでうたた寝をしていたのである。
誰かと一緒にいた気がする。どこかに、いたような気がする。なにかを自分は、やっていた。
少なくとも、ここではないどこか。ここでやっていたことと違う、なにか。自分は、ひとりではなかったように思う。
とりあえず、ノートを閉じる。誰かに見られたりしたら、恥かしいから。
思い出そうとすると、なぜだか軽い頭痛がした。頭の奥底に靄でも、かかったようだった。
「……あら?」
よっこいしょ。そして立ち上がったところに、人がいた。
見れば、向こうにもひとり、ふたり。
「彩夜じゃない」
「ええっと……セレンフィリティ、さん?」
見知った顔だった。水着の彼女が、立っていた。
「どうしてここに? ……っていうか。ここ、どこなんでしょう?」
「それは──あたしにもわかんないなー」
向こうのふたりもまた、彩夜たちに気付いてかこちらにやってくる。
綾耶に、ウィルヘルミーナ。手を振る彼女たちの他にもまだどこか、誰かいるのだろうか?
彼女たち四人は、見知らぬ場所にいた。
「ほんと。どこなんだろう、ここ」
そしてそこが現実とは違う精神のみを切り取った世界だということを、彼女たちは知らずにいる。
自分たちに何が起こったのかさえ、忘れさせられたままで。
彼女たちは、なにひとつ、気付けずにいる。
(続く)
ごきげんよう、ゲームマスターの640です。リアクション『琥珀に奪われた生命』、前編をお送りいたしました。いかがだったでしょうか。
今回、ちょっと前編「らしさ」というものを今迄より意識した内容に、皆様からいただいたアクションからお話を構築してみましたが、楽しんでいただけましたでしょうか?
後編では、前編ではこちらの用意した設定上、眠っていることが基本であった面々にも色々と動いていただくことになると思います。
それでは、後編のシナリオガイドでまたお会いいたしましょう。