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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 10

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 10

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第7章 大きな侵略者・みーんなワレらのモノッ story6

「エリシアおねーちゃん、お薬用意しておいたほうがいい?」
「そうですわね。傍に盾役でもいない限り、全てを回避するのは難しいですもの」
 ノーンと一緒に解毒薬の生成を始める。
「呪いの抵抗は、俺たちがクローリスくんに頼むよ」
「任せましたわ、クリストファー・モーガン」
「―…クローリスくん、頼んでもよいかい?」
「めんどくさいわね」
 クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)に呼び出されたクローリスは、相変わらずツンとした態度だった。
「おにーちゃんってさ、やっかいごと好きなのね。まっ、どーしてもっておねがいするなら、助けてあげてもいいけど!」
「きみの力がどうしても必要なんだ。お願い、クローリスくん」
「しかたないわねー」
 肩にかかったピンクのウェーブを風になびかせ、仕方なく聞いてやると言い放った。
 膨れっ面をしつつも、トゲのない薔薇の花のステッキを振り、可愛らしく踊りながら香りをまく。
「ボクのクローリスさんも協力してね」
「クリスティーくん、このまえたーくさんあそんでくれたからぁ〜。きょうもおたすけするのりぃ〜」
 小柄な少女の姿をしたクローリスは、ポニーテールを揺らしながら踊り、花びらを舞い散らす。
「ちっちゃーい、使い魔って可愛いわね♪」
 ルカルカは召喚された小さなクローリスへ思わず目がいってしまった。
「あんた、うちのことじろじろ見ないでくれない?おにーちゃんにたのまれてやってるだけなんからね!」
「こらこら。怒っちゃいけないよ、クローリスくん」
「ふーんだ。いやなものは、いやなのっ」
「ツンツンね♪」
 それでも可愛いかも…と思ったが、口にしたら補助をやめてしまいそうだったから、言わないでおいた。
「ルカルカ・ルー。この薬を飲みなさい」
「美味しそうー」
「一応、薬だからな?」
「うん、知っている♪ダリル」
「緊張感ねぇな」
 カルキノスがぼそっとぼやく。
 彼らがまったり回復している間、ジュディたちのほうは分身退治を順調に進めている。
「カティヤが盾になってくれるから楽なのじゃ♪使うのは哀切の章だけでよいしのぅ」
「多少はミスがあるようだがな」
「それはいたしかたあるまい?」
「お待たせ♪回復してもらったから手伝うね」
「それはありがたいのじゃが。本体を祓わねば、増え続けるばかりじゃぞ」
「そっちは、結和とダリルがやってくれると思うの。だからこっちに来ちゃった♪」
 何かあれば声が聞こえる位置だし、彼らの姿もちゃんと見える。
 自分たち3人はジュディたちを手伝うことにしたのだった。
「俺とカルキで体力を減退させるか?」
「ん、分かった♪目を離した隙に、避難している人たちのところへ行っちゃうかもしれないからね」
 本体が祓われるまで分身退治を引き受けようと決めた。



 他の生徒もベールゼブフォと遭遇したが、静香を捕まえたやつはまだ見つかっていない。
 “誰も発見していないの、探してあげて”とルカルカに頼まれた歌菜たちは、アークソウルの気配探知で捜索する。
 近くにいなかったら呼んでね、と告げられている。
「静香さんー、どこですかー?」
 分身の群れに紛れた歌菜は大きな声で呼びかけた。
 傍には護衛をしてくれている綾瀬がいる。
「―…綾瀬さん。あのカエル、2つ気配があります」
「1つの存在の固体に対しての魂は1つですから、2つとなると憑依…などが考えれますが。今回、それはないでしょう」
「もしかして、捕まっているんじゃ…!?静香さん、そこにいるんですか!」
 歌菜の声に反応したのか甲高い鳴き声が聞こえた。
 よく見ると魔性のすぐ傍に、小さなピンクのカエルがいる。
 青い泡で包囲されて逃げ出せないようだ。
「おまえ、ワレの嫁を攫いに来たゲコ?」
「その人はあなたのお嫁さんじゃありません、離してください」
「イヤだゲコ。可愛いワレの嫁、ずっといるゲコ。嫁奪うおまえ、キライ。ワレらの領地から出て行くゲコォ」
 分身を出現させた赤カエルはアクアブレスを吐き歌菜たちを追い払おうとする。
「目の前に静香さんがいるっていうのにっ」
 エターナルソウルでかわすのが精一杯だった。
「ぐぬぅ、この雨…なんだゲコ!?」
 淡い霧雨に濡れたベールゼブフォが騒ぐ。
「お話と、お願いがあって来ましたっ。聞いてくださいっ」
 ダリルと歌菜に支援してもらい、結和は逃走しようとする大ガエルの逃走先に、哀切の章の力で薄い布状の光の壁を作る。
 範囲を広げてもらったその祓魔術で包み、次の詠唱を始めた。
「結和さん、水路へ逃げようとしています」
 ベールゼブフォは静香をブレスで追いやりながら逃走しようとしている。
 歌菜が示す方向を目印に、悔悟の章の灰色の重力で捕らえ、小さく縮小させた。
「ワレの嫁、ワレらの領地、渡さないゲコォ…。この音色は…?」
 リーンリリンー、リーンリーン。
 ノーンがルルディに頼んで、花の香りを吸収させたフラワーハンドベルを鳴らしたのだった。
「エコーズ、裁きの章II! エコーズ、レインオブペネトレーション!(姿くらい見せたほうがよいと思うのね)」
 ルカルカはエコーズリングでアイデア術を使い可視化させる。
「むぅー。(ロラ、仲良くしたいんだよ!)」
 触れられない赤カエルをハグしようとするが、やっぱりすり抜けてしまった。
「皆と友達になって、色んなものを共有したらどうでしょうか?それに、あの…お嫁さんが欲しいのなら、そんなやり方ではよくないです」
「なぜゲコ?分からないゲコ!」
「もっと落ち着いてお話しよう?」
 魔性の気を静めようと終夏が白い花のハンドベルを鳴らす。
 休んでいたアウレウスと人々を集めた場所で合流し、守り役を交代してこちら側の様子を見にきたのだった。
 1人では危ないからとついてきてくれたアニスたちもいる。
「お付き合いを無理に強いると、嫌われ怖がられてしまいます。一緒に暮らす相手には、笑顔でいて貰った方がいいでしょう?お友達から始めませんと…」
「う…うぅ。欲しいものは、力で奪えばいいって言われたゲコー。騙されたゲコォオッ」
「いったい…誰に?」
「あまえらと反対の力を使うやつらゲコォ」
「えっとあの…。どんな相手に?」
「ボコールという黒フードの集団からだゲコ。人であるようで、人じゃない」
 騙されたことに怒ったベールゼブフォは邪徒に教えてもらったと喋ってしまう。
「こんな可愛いカエルさんたちを惑わすなんて…っ」
「ぅうーんぅー。(怒るポイントちょっと違うね)」
「あいつら、何かを甦らせようとしているゲコォ」
「それについて、知っていることはありますか?」
「ワカランゲコ。ワレが知っているのは、これだけ」
「ありがとうございます…」
「―…おまえは、いいやつだから、コレ教えておくゲコヨ。目に見えるモノだけが、真実じゃない。見えないモノが真実でもない。だが…どちらでもあり、どちらでもないゲコ」
 それだけ告げるとベールゼブフォは水路に飛び込んでしまった。
 他のものたちも略奪を諦めて飛び込み、どこかへ去っていく。
 結和はエリザベートに報告しようと、ロラと報告しに向かった。



 静香は歌菜と羽純、陣によって人に戻ることが出来た。
「ありがとう、皆…。どこか連れていかれるんじゃないかって思って、すごく怖かったよ」
「傷とかはないようですね!」
「うん…。ラズィーヤさんが心配していると思うし、校長の仕事もあるから…戻るね」
「―…静香さん、…あの」
「クリスティーさん?来てくれていたんだね、嬉しいよ」
「無理かもしれないけど。今回のことで…キライになったりしないでほしいな」
 魔性は恐ろしいもので、関わってはいけないものだと思われたかもしれない。
 それでも協力してくれるクローリスたちのことを考えると、そうなってしまうととても寂しい。
「正直、ちょっと怖いな……って思う。でも、キライじゃないよ。キミたちが見せてくれた使い魔さん、とても可愛かったし…」
「ありがとう…。また、遊びに誘ってもいい?」
「うん、一緒に行ってみたい」
 人と魔性が共存している都に興味を持ったらしく、クリスティーたちと行きたいと言う。
「私たちが送っていくね」
 静香の元気な顔をラズィーヤに早く見せてあげようと、美羽とベアトリーチェは彼女の元へ送りに行った。