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この中に多分一人はリア充がいる!

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この中に多分一人はリア充がいる!

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「ったくどいつもこいつも――っとぉ!?」
 背後からの気配を察し、キロスが身を捩る。直後、フェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)のドロップキックが空を切った。
「――ちっ、避けやがった」
 着地したフェイが露骨に不機嫌そうに呟く。
「今度はお前か! 一体なんだってんだ!?」
「証明だ」
「証明だぁ!? 何の証明だって言うんだよ!?」
「おまえの言う事を前提にするなら『リア充=うしろからどついた奴』、つまりリア充とはお前の背後を取れてなおかつお前を倒せる実力者という事になる。という事は今の一撃を避けられた私はリア充じゃない。証明完了」
「……これで当たってたらどうなるんだよ」
「それはそれで笑えるから良しだ。そもそも龍騎士なら背後の不意打ちくらい簡単に避けられるのではないか? まぁ、龍騎士(笑)なら別だがな」
 小馬鹿にしたような笑みを浮かべるフェイに、キロスの額に青筋が走る。
「何だ? 信用できないのか? ならおまえの後頭部を蹴って証明しようか。威力が同じなら私はまた容疑者、違ったら無罪で万々歳だ。違うか? というわけで蹴らせろ今すぐ蹴らせろさあ蹴らせろ」
 そう言いながらフェイが今度は鋭いハイキックを放つ。
「っとぉッ!? 何だかんだ言ってただ蹴りたいだけだろてめぇ!」
「五月蝿い。いいからとっとと大人しく蹴られろ」
「蹴る事確定してるんじゃねーよ!」
 唸りながらお互いを睨み合う。まるで獣の喧嘩である。
「ちょ、ちょっと待った! ちょっと落ち着け!」
 その間を匿名 某(とくな・なにがし)が割って入る。すると『邪魔するならまずお前から殺す』とばかりにキロスとフェイが某を睨み付ける。
「ま、まあまあ、そんな殺る気満々の眼してないで俺の話も聞け、な? キロスが頭に来るのもわかるぞ? いきなり後ろからガツン、とやられたんじゃな。でも、それはもしかしたらキロスがリア充になる前兆かもしれないぞ?」
「はあ?」
 キロスが某を『おまえは何を言っているんだ』という目で見る。
「いやほらさ、よく一目惚れした時の描写に『心に電流が走った』みたいな表現するだろ? あれがすさまじい威力だったからなんだよ」
 自分でも『少し苦しいか?』と思いつつ某が説得に走る。個人的には『電流が走る』という表現は血液と大金を賭けた麻雀とかで見かける気がする。あくまで個人的だが。
「ほぉ、それじゃなんで後頭部にガツンと来たんだよ?」
 キロスが話に乗り、心の中でガッツポーズをとりつつ某が続ける。
「それはあれだ、運命に相手がお前の後ろにいたからだ! だからこんなところで不毛な問答してないで、早く運命の相手を探しに行く作業に戻るんだ、な? フェイはスルーしていいから」

「ほっほーう? 流石リア充様は言う事が違いますなー?」

「な――ッ!?」
 某が驚き、振り返るとそこには超イイ顔をしたルカルカ・ルー(るかるか・るー)がいた。
「あ、リア充?」
 キロスがそう言って某を見ると、ルカルカがゆっくりと頷く。
「そう、彼は病弱なパートナーとリア充としか言いようのない日々を送っているわ。病弱な彼女を慈しみ、翼が蘇るのを優しくサポート。その姿、まさに至高」
 びしっと某を指さす。
「よ、余計な事を……!」
 某はというと、ぐぬぬと悔しそうに歯を噛みしめる。
(おい、ルカ)
 隣にいたダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)がルカルカにそっと耳打ちする。
(なーに、ダリル?)
(何故わざわざ煽る様な真似をする? ここは一緒になって矛先をキロスに向けるべきでは?)
 そう言うダリルに「甘いわね」とルカルカが指を鳴らす。
(キロスがああなったら一度意識が刈られるまで止まんないもん。なら生き残るためにはどうしたらいい? もう某を生贄にするしかないじゃない!
(何故そうなる)
 本当、何故そうなる。
(細かいことはいーのいーの)
 そう言ってけらけらとルカルカが笑う。
「そ、そういうそっちこそ恋人いるだろ!? 人の事言えるかよ!」
 某がルカルカにそう言うが、
「えー、でもルカは軍務が忙しくて愛を語り合う暇すらないしー」
と白々しく口笛交じりで応える。
「ならダリルは!? 確かいたよな!?」
「いるにはいるが、俺は遠距離だ。そう簡単に会えるわけではない。よってリア充とは言い難いな」
 ダリルがそう言った直後、
「リア充は爆破だぁッ!」
コード・イレブンナイン(こーど・いれぶんないん)がダリルに向かって【機晶爆弾】を投げつけた。ダリルは軽く飛びのいて爆発の範囲外へと避ける。
「ちっ、逃げたか」
「ちょ、何やってんのよコード!?」
 慌ててルカルカがコードを止めようと羽交い絞めにする。
「何やってるって、爆破だ。今ダリルは恋人持ちを認めた、よってリア充! リア充は爆破させるもの、そうだろキロス師匠!?」
 そう言ってコードがキロスに向き直る。
「いや、師匠って弟子とった覚えねーんだけど」
 キロスがそう呟く。何処かでキロスはコードに『リア充は爆破したくなるもの』と教えたらしいのだが、記憶にございません。きっと別次元の出来事でしょう。
「とにかく! ダリルを爆破だぁッ!」
 ルカルカの拘束を振りほどき、コードがダリルへと突っ込んでいく。
「何なんだ――ッっとぉ!?」
 一瞬呆気にとられたキロスであったが、背後の殺気に身を捩る。その直後に、またもやフェイのドロップキックが空を切った。
「避けるな、証明できないだろう」
「やっぱりてめぇただ蹴りたいだけだな!?」

「ちっ、逃げたか…‥」
 コードが悔しそうに舌打ちをする。【ポイントシフト】等も利用しながらダリルに【機晶爆弾】を投げつけたが、悉く避けられてしまった上、逆に隙を突かれ反撃されてしまった。
 コードが体勢を崩している間に、ダリルは姿を消していた。どさくさに紛れて逃げおったな。
「もーなにやってんのよ! やるならこっちでしょ!?」
 そう言ってルカルカがどさくさに紛れて某を羽交い絞めにしていた。
「ってその理屈おかしいだろ!?」
「某、生き残る為には犠牲が必要なの……貴方の事は忘れない」
「忘れていいから離せぇぇぇぇぇ!」
 某が必死になってもがいていると、キロスがゆらりと姿を現した。
「ああキロス師匠、いいところに! 今からリア中を爆破するから――」
 見ていてくれ、とコードがキロスに言おうとした時であった。

「うるせぇ」

 そう言うと、キロスは爆弾をルカルカ、コード、某に向かって放り投げる。
「「「え」」」
 その爆弾が目に入った直後、
「「「何故ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」
爆風が3人を包み込んだ。
「ったく……人が取り込んでいる間ドッカンドッカンやかましいったらありゃしねぇ」
 キロスがそう呟く足元には、頭に湯気が立ち上るタンコブができたフェイが気を失っていた。