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古城変死伝説に終止符を

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古城変死伝説に終止符を

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「元に戻られて良かったです」
 陰陽の書はミシュ夫婦に話しかけた。
「みんなのおかげよ。ありがとう」
「感謝するよ。僕もミエットも元気になった。幽霊が元気というのもおかしな話だけど」
 ミシュ夫婦は晴れ晴れとした笑顔で礼を言った。
「……ところで娘が戻って来たら逝くのか?」
 聖夜が気になった事を訊ねた。残っている前住人はミシュ一家とリリトだけなのだ。
「そのつもり。ね、オランド」
「あぁ。今はそうしたくてたまらない。晴れ晴れとした気分なんだよ」
 ミシュ夫婦は互いに顔を見合わせていた。
「そうか。それならよかった」
「これでここの伝説も終わりですね」
 聖夜と陰陽の書は一安心した。これで変死伝説はようやく終わり犠牲者はもう出ない。

「……お二人はこれからどうするんですか? また旅行に戻られるんですか?」
 舞花はノーンの体の番をしながらウルバス老夫妻に訊ねた。
「そうねぇ。どうしようかしら」
 ハナエは少しだけ迷いを見せていた。知り合いに再会出来て少しばかり満足していたりするのだ。
「……もういいだろう」
 ヴァルドーは相変わらずの仏頂面で淡々と言葉を挟む。
「あら、決めるのはあなたではなくて私でしょ」
 ハナエは隣に立つ夫に少しだけ厳しい視線を送った。
「……それでどうしたいんだ」
 ヴァルドーは高低差の無い声で訊ねた。生前主に自分の都合で旅行出来なかったため主導権はハナエにあるのだ。
「……まだ行った事もない場所はまだまだあるわ。パラミタ以外にもニルヴァーナとか。それに一度、家にも戻りたいわ。きっと何も残っていないだろうけど」
 ハナエは様々な場所を思い浮かべ楽しそうにするが、最も気になる自宅を思い出すなり少しだけ寂しそうな顔になった。亡くなってから随分経つため面影は何も無いだろうと。
「……そんな事はありませんよ」
 エオリアが笑みを浮かべながらウルバス老夫妻達の会話に割り込んだ。
「あら、何かあるのかしら?」
 ハナエは少女のように期待に目を輝かせながら訊ねた。
「少しでも心を癒す事が出来ればと花を」
 エースが答えた。ウルバス老夫妻と出会った後、少しでも癒しになればとエオリアと一緒に自宅跡に花を植えたのだ。
「……そう、花を植えてくれたのね。それは楽しみだわ。ありがとう」
 ハナエは一面の花畑を想像して嬉しそうだった。
「……」
 そんなハナエの横顔を見つめるヴァルドーの目に一瞬だけ優しい光が横切った。

「……優、解決が出来て良かったね」
 零が幽霊夫婦を眺める優に声をかけた。
「そうだな。しかし、あの人達は幽霊とは思えないな」
 優はあまりにも元気過ぎる幽霊達に静かに笑みを浮かべていた。
「……そうね。明るくて賑やかで。でも幽霊になっても大切な人と一緒にいるのは素敵だと思う」
 零は幽霊となっても大切な人のそばにいるミシュ一家やウルバス老夫妻を羨望の目で見ていた。自分達夫婦も二組の夫婦のようにずっと一緒にいられたらといいなと。
「……零、ずっと一緒だ」
 優もまた零と同じ気持ちだった。大切な人と一緒にいられる事ほど素晴らしいものは無いと。
「えぇ」
 零はそっと左手で優の右手を握り、右手で自分に宿る命に触れた。いつまでもずっと一緒だと。優は力強く零の手を握り返した。

「……やっと終わったわね。これでただのゴミ屋敷に戻るのね」
 セレンフィリティは仲良く遊びに行く幽霊少女達の背中を見送りながら言葉を洩らした。仕事ももう終わったも同然である。
「セレン、まだ終わっていないけど今日はお疲れ様」
 セレアナは少しだけ早いがセレンフィリティを労った。最後までセレンフィリティが銃で語り合うような事をせずに終わった事に胸を撫で下ろしていた。