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古城変死伝説に終止符を

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古城変死伝説に終止符を

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 火事現場。

 周囲に群がる幽霊が転がる魔法薬に火を付けて火事を生み出していた。
「物を投げたりとかウザイじゃん、汚物は消毒よぉ〜☆」
 ミステルは火事だけでなく転がる本を投げてくる幽霊に向かって樹海の根で『煉獄斬』で本ごと幽霊を燃やそうとするが、幽霊は寸前で消え、火事が大火事になるだけだった。
「コラコラ、火遊びはいけないよ」
 色眼鏡によって妄想に取り憑かれている司は悪戯をした妹のために『氷術』で消火して火が広がるのを防いだ。
「火が出ていたけど大丈夫?」
「無事でありますか!」
 火事を目撃してセイレムと吹雪が到着したのは消火された後だった。
「大丈夫よぉ、火が出てもツカサの奴が消火してくれちゃってるし〜、何も問題無いよぉ」
 訊ねる吹雪達に答えたのはミステルだった。
「魔法の薬とかあるから気を付けないと危ないよ」
 基本善人のセイレムはミステルの心配をする。
「危なくないし〜、むしろここにある物全部ゴミなんだから燃やしちゃった方が早いじゃ〜ん☆」
 ミステルは軽い調子で答えた。
「そうかもしれないけど……吹雪?」
 セイレムは周囲のごみしか存在しない状況からミステルの言い分にも一理あると正直にうなずいた後、ごそごそしているシオンに接触している吹雪が気になって駆け寄った。
「今回も何か面白い物はないかなぁ……これは何か面白い予感★」
 シオンは司を眺めるのをやめて司達が暴れた後始末と掃除の手伝いの名目で周辺のゴミ漁りを始めるとすぐに青色のハンカチを発見した。
「面白い物でありますか?」
 やって来た吹雪がシオンのつぶやきに訊ねた。
「えぇ、ワタシ、イルミンスールの生徒だから魔法系統の危険物を速やかに片付けようと思って」
 注意されると思ったシオンはハンカチ片手に急いで言い訳を口にする。しかしそれは取り越し苦労だった。
「面白い物なら自分も先ほど見つけたでありますよ!」
 吹雪は先ほど見つけた紙包みを見せると共に中身の確認を始めた。
「……これは耳栓でありますな」
 吹雪は中に入っていた耳栓を手に取り、隅々まで確認する。
「魔法が込められた耳栓みたいね。面白い効果がありそう」
 『オカルト』を持つシオンは耳栓に何かしらの効果がある事を見抜いた。
「試してみるでありますよ!」
 吹雪はためらう事無く両耳に装着した。
 すると
「ふぉぉぉおお!!」
 吹雪は気持ち良さそうな声を上げた。
「ふ、吹雪!?」
 吹雪の声に驚いたセイレムは恐る恐る様子を見守る。
 しばらくして吹雪は耳栓を外して
「凄いでありますよ。高い所から気持ちよく落下している感覚がするであります!」
 爽快感に満ちた声で吹雪はセイレムに答えた。
「そうなの? 何のために作ったのかな」
 セイレムは吹雪の答えに首を傾げた。
「ワタシも試していいかしら」
 興味を持ったシオンも試したくなったようだ。
「どうぞであります」
 吹雪は耳栓をシオンに渡した。
「……!!」
 耳栓をしたシオンもまた吹雪と同じ感覚を味わった。
「確かに言った通りね。爽快感が良い感じかも」
 シオンは耳栓を外して吹雪に返しながら感想を口にした。
「ところでそれは何でありますか?」
「おそらく魔法薬を染み込ませたハンカチだと思うわ。物を拭いたら何か起きるかも」
 ハンカチに気付いた吹雪にシオンは答えつつその場に落ちているコップを拾い上げ、ハンカチで全体を包んで拭いてみる。
 途端に拭かれたコップに異変が起きた。
「コップが石化したでありますよ!」
 吹雪はシオンの手にある石化したコップを見て驚いた。
「これって人にも効果があるのかしら」
 シオンは石化したコップを捨て置きながら前住人と駆け回っている司に目を向けていた。不穏な色を浮かべながら。
「それじゃ、ワタシ、行くから……ツカサ!」
 シオンは吹雪達に適当に挨拶するなり、司達の元へと駈け出した。手に入れた石化ハンカチで司を弄りたくてたまらない様子で。
 しかし、前住人のせいで試す事は出来なかったが、騒ぎが収まる少し前に色眼鏡は壊される前に無事に回収する事は出来た。

 シオン達と別れた後、
「これの処分は保留にするでありますよ!」
 吹雪は耳栓の処分について保留にした。思いの外危険要素が無かったからだ。
「じゃ、掃除に戻ろう」
 セイレムの言葉で二人は掃除に戻った。
「今回はどんな生き物が棲んでいるか楽しみでありますよ」
「……あまり汚れていなかったらいいけど」
 吹雪とセイレムはわくわくと心配をそれぞれ抱きながらプール並みに広い浴場の清掃に挑む事にした。ちなみに前回は凶暴な魚が浴槽に棲んでいた。
 今回、浴場で吹雪き達を待っていたのはやはり普通ではない光景だった。

「……浴槽の中がゼリー状になってる。これ、何なのかな?」
 セイレムが浴槽満杯になっている薄紫のゼリー状の物体に疑問符を浮かべていた。
「これを投げてみるでありますよ!」
 この普通ではない光景に慣れている吹雪は危険を考えて近くに転がっていた石けんを投げ入れた。ゼリー状の物体は投げ入れられたせっけんにぶつかった途端、崩れて薄紫の液体に戻った。
 液体に戻ると同時に心地よい匂いが浴場内に充満する。
「……ラベンダーの匂いがするよ。入浴剤みたいだね」
 セイレムは漂う匂いに鼻をひくつかせてから浴槽の水を染める物の正体を推測した。
「おそらく失敗作でありますな!」
 吹雪は失敗作だと断言した。まさにその通りである。
「……その可能性は高いかも。もしそうだったら排水して大丈夫か確認した方がいいかもしれないよ」
 セイレムは改めて浴槽の水を染める薄紫を見た後、排水して大丈夫か不安になった。
「そうでありますな」
 吹雪は手早くオルナに連絡して手作り入浴剤に挑戦して配合ミスをした失敗作の入浴剤である事、危険物は含んでいない事を確認した。
 連絡を終えるとすぐ
「失敗作と確認したところで早速栓を抜くでありますよ!」
 吹雪は浴槽の栓を抜いた。
 どんどん水は抜かれ、無事に空っぽとなった。
「無事に排水出来たね。後は掃除だけ」
 セイレムは何事もなく排水が完了した事にほっとしていた。何せ失敗作なので不測の事態が起きてもおかしくはないから。
「始めるでありますよ!」
 吹雪の合図で浴場の清掃が始まった。広い浴槽を地道に丁寧に清掃し、何とか終える事が出来た。

 掃除完了後。
「汚れが酷いだけで危ない物が無くて良かったね」
 セイレムはすっかり綺麗になった浴場を見渡して満足げであった。
「そうでありますな。しかし、面白い物がなくて残念であります!」
 隣に立つ吹雪は面白い物に出会う事が出来ず、少し残念そうであった。
「次に行くでありますよ!」
 吹雪はすぐに気持ちを清掃に切り替えた。
「その前にごみを外に運んでからね」
 セイレムは浴場の隅にまとめている満杯になった大量のごみ袋に視線を向けた。
 それにより吹雪達は、ここに来る道々他の人が動きやすいように隅の方にまとめて置いたごみも一緒に回収し浴場のごみと一緒に外へと運び出した。
 それからまた他の部屋の清掃へ行き、根気よく掃除をした。