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リアクション
■野山の狼煙は再興の印
――ビッグトロールの討伐が終わり、契約者たちは次の段階へとステップを進める。
討伐した5匹のビッグトロールの遺体を処理し、アムギギロソルバッヂャグ山を元の姿に戻す作業である。山の再生作業はエースを中心に行われることになったのだが……。
「……いや、さすがにそれはないと思うぞ。それをするくらいなら、いっそ焼いて肥料にしたほうが」
「うーん、そうかなぁ」
ビッグトロールの遺体に関して、弥十郎と直実が何やら揉めていた。というのも――。
「あんな醜い肉塊を見て、食いたいとは誰も思わんだろ。よほどの悪食な人間以外はな」
直実の言うように、どうやら弥十郎が「ただ殺生するだけじゃ忍びないし、食材にできないかなぁ」と提案した様子であった。これには直実も思わず止める行為に走ってしまう。他の契約者たちも苦笑いを浮かべるばかりである。
結局のところ、調べるだけ調べてみたが既に肉が固くなりすぎており、食用にはできそうにないことが判明した。
「仕方ないかぁ……じゃあおっさんの言うとおり、焼却処理をしたほうが良さそうだねぇ」
当初の予定通りに進むこととなった野山の再生作業。エースの考えとしては、“草食動物の個体数が確保できるほどの状態にはしたい”と思っているようだ。
「おい、こんなくっせぇ跡地はとっとと焼き払っちまったほうがいいんじゃねぇか? それこそ焼畑みたいに豪勢によ。どうせ元に戻すには四半世紀もかかるしな、キシシッ!」
「――確かにそうしたほうがいいかもね。とはいっても、ただ焼き払うだけじゃ再生も遅くなるだけだ。やれることはきちんとやっておかないと」
ハイコドの言葉ももっともである。野山の再生、と言っても数時間で完全に戻るほど自然は強いわけではない。だが、しっかりとした下地があれば自然はじっくりと強くなっていけるのだ。
そんなわけで、まずエースたちはビッグトロールの集落へ向かい、吹雪からの提案のもと、ビッグトロールたちの遺体を土に埋め(この時の作業はリリアが連れてきた従者《施工管理技士》やエースの『グラウンドストライク』による大地慣らしも並行して行われた)、そこに散乱しているゴミや不要物、ビッグトロールたちの住まいであったのだろう藁の寝床などと一緒に、延焼しないよう『群青の覆い手』をしながら『紅蓮の守り手』で野焼き・消毒にしていく。この際、弥十郎にも『炎の聖霊』で協力してもらっていった。
「また一つの戦いが終わったであります……」
ビシリ、と敬礼を取る吹雪。その視線の先には、野焼きによって発生した煙が勝利の狼煙のように上がっていた。
ある程度野焼きを終わらせたところで、一度休憩をはさむ。エースはリリアがこれまた連れてきた《キャットシー》とたんまり戯れ、その疲れを癒していく。その際、美羽も《キャットシー》との戯れに参加していたとか。
すっかり疲れがとれたところで作業再開。瓦礫などを舞香とハイコドに壊してもらい(ハイコドは戦い以外の目的だったためか渋々ではあったが)、各種土木作業をして地面を綺麗にしてもらった後、いよいよ本格的な再生作業に移る。エースの『エバーグリーン』で植物たちの生長を促し、元あった緑へと近づけていく。
どういった植物があったのか、どういう経緯を経て生長していったのか……植物たちのあらゆる声を『人の心、草の心』で聞き取り、それに合わせた生長プランを施していく。エースの信念である自然への想いを存分に発揮し、契約者たちにできうる限りの再生作業が進んでいったのであった。
「――そうでしたか、ありがとうございます」
やれるすべてのことをやり抜いた契約者たちは村に戻り、村長へ今回のことを報告していく。村長は全てを聞き終えると、まずは感謝の念を伝えていった。
「私たちもガムギンギラソトバッチャン山との向き合い方を、改めなくてはいけないのかもしれませんね……」
窓から見えるアムギギロソルバッヂャグ山を遠目に眺めながら、村長はそう語る。
「今回の騒動も私たちがあの山を軽視していた部分があったからかも知れません。……これからは村人総出であの山をよりすばらしい野山として整えていきたいと思います。本当にありがとうございました」
契約者たちが繋いでくれた、自然を護るということのバトン。それを確かに受け取った村長は深々と頭を下げ、再び契約者たちにお礼と感謝を伝えていったのであった。
――契約者たちは村を後にし、帰還する。その道すがら……。
「……結局、あの村長さんは山の名前を一度も正しく言わなかったわね」
「そうでありますな」
……あの村の行く末が心配になる、コルセアなのだった。
担当マスターより
▼担当マスター
秋みかん
▼マスターコメント
初めまして、もしくはこんにちは。柑橘類系マスター・秋みかんです。
えー、それに加えてお久しぶりとなります。ちょっとの充電期間を経ての作品となります。
久しぶりなもので色々と不安要素はあるものの、楽しんでもらえたらなという思いが強いです。
いつも通り、こっそりと称号とか付与してます。お楽しみに。
それでは次の作品でも会えることを願いつつ――。