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【第四次架空大戦】ティル・ナ・ノーグ

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【第四次架空大戦】ティル・ナ・ノーグ

リアクション



04 襲撃1


「何か変わった風にも思えないけど?」
 美羽が開口一番そう言うが、ラブはそれに対して冷静にツッコミを入れる。
「そんな一瞬で何か変わるようなことがあるわけないじゃない。色々と手順が必要なのよ」
「なるほど〜」
 それで美羽は納得したようだった。
「ところで、あんたたちがハーティオンの知り合いだってのなら、別の試練もあるけど受けてみない?」
「それは?」
 勇平の問に、ラブは泉の奥を指した。
 そこには、一本の剣が、巨大な岩に突き刺さっていた。
「あれは、かつての勇者が使っていた伝説の武器、聖剣デュランダル。あれは、資格のあるものにしか抜くことができない。かつての、完全だったハーティオンの頃のようにね」
「ハーティオンさん……」
 その名前を聞いて未来が嬉しそうな悲しそうな複雑な表情をする。
「もちろん、やってやろうじゃないの!」
 美羽が名乗りを上げると、ラブは えい! と呪文を唱えて美羽を岩場にテレポートさせた。
「でも、これはかつてヘルガイアを退けた勇者の剣。そう簡単に抜けると思わないことね!」
「もちろんよ! えい! ……やっぱり抜けないかぁ……」
 と、その時、何やら巨大な気配がした。
 ローザは、それが自分やクロガネと同じ存在であることに気がつく。
「もしかして、アカガネ?」
『御名答――』
 帰ってきた答えは、セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)にそっくりな声。この地の守護者であると同時に、別次元の過去からきた「クロガネ」と同じ存在であるアカガネであった。

『我等は彼の世界では、他の味方の多くは敗れ、誰にも認知されなかった。故に、「守護者」でも「勇者」でもなく、ただ何かと戦い世界を守ったということすら忘れ去られた存在。それでも、我等はこの地に舞い戻る。勇者たちよ、その泉の水の力を解放するために、我と戦うのだ』


「ちょっと、アカガネ、何言ってるのよ!」
 ラブが文句を言うが、アカガネはどこ吹く風で言葉を続ける。
「さあ、勇者に乗るのだ!」
 アカガネはそう言うと女帝キシオムバーグを呼び出してその中に吸い込まれた。
「さあ、参るぞヴェルザ・リ(べるざ・り)
「……」
 ヴェルザと呼ばれたそれは女帝キシオムバーグの制御ユニットにして勇者そのものである。
「いいじゃない、やってやるわよ!」
 そう言って自らの勇者に乗り込もうとする美羽だったが――
「え? 手が離れない!?」
【その剣は、資格が完全になくなるか、剣を抜くまで、その手から離れることはないのだよ】
 と、アカガネの声が響く。
「とはいっても……バルムングは今はないしな……くそっ!」
【そうか、半身を失ったか、勇者よ―― ならば力を与えよう。尤もそれを物にできるかどうかはお前自身にかかっているがな】
 アカガネのその言葉とともに、勇平に新たな力が舞い降りる。
【さあ、受け取るがいい。その名はアルタグン!!】
 その途端、セイファーの瞳に光が戻る。
「私は貴方で貴方は私。さあ、アルタグン行きましょう。マスターを守るため、マスターの勝利のために!」
「セイファー!! 意識が戻ったのか!?」
 喜ぶ勇平に、アカガネが告げる。
【どうやら勇者とその娘は相性がいいようだ。喜べ少年】
「応よ! やってやるぜ!」
 そして、勇平とセイファーがアルタグンに吸い込まれるようにして乗り込んだ。
【そして、娘……】
 それはジヴァに向けた声。
「え、あたし?」
【そうだ。お前にも、力をやろう……来たれ、{ICN0004078#コルニクス/F}!】
(コルニクス……? ママ、じゃない! 劣等種のレポートにあった計画倒れの機体じゃない。ってことは……現実との接点が戻ってきた!? やってやろうじゃないの!!)
 そして、現れたのは漆黒の機体。鴉を連想させるその不吉な色は、だが、ジヴァにとっては何よりの力となった。
「かかってきなさいよ、アカガネとやら!」
 その勇ましい姿を見て、アカガネは微笑んだ。
【元気の良い娘だ……】
 そして、フレイも、おのれの勇者に乗り込んだ。

「よし、いくぞ!!」
 フレイがおのれの勇者の持つ炎の槍を構える。
 そしてそのまま槍から炎を打ち出すが、女帝キシオムバーグはその炎を剣を振るって難なく打ち消す。
「炎のなら打ち消せても、この大出力ビームならどうだ!」
 そして勇平が艦載用大型荷電粒子砲を発射する。
 女帝はそのビームを柳のようにゆらりと揺れながら回避すると、そのままの勢いでアルタグンに回し蹴りを加える。
 吹き飛ばされて地面に激突するアルタグンの中で、勇平はその強さに感心する。
「さすがはクロガネのご同類……ってところか! へっ……ぞくぞくするねえ!」

「さあ、行きなさいコルニクス!!」
 ジヴァはコルニクスの『偏向式ツインレーザーライフル』を発射する。
 これは超能力で操る、わかりやすく言えばホーミングするレーザービームで、そこはかとないチート臭さが漂う武器でもあった。
 だが、アカガネはそれをすらもまるで舞うような動きで回避する。
「ちょっ! こっちだってチート級なのに、そっちはそれ以上ってどういうことなのよ!」
【お前たちが覚めない悪夢を覚まそうとするならば、これくらいのことはできなくては困るな……】
(そういうことね……)
 アカガネの言葉に納得したジヴァは、その後わざと女帝キシオムバーグの大技を受けて、派手に吹き飛んでみせる。
「いやだ! 死にたくない! ママッ! ママッ!」
 そして、わざとらしく悲鳴を上げて、悲壮なアピールをする。

「ああ、こんな時に機体がないなんて……やめて、やめてアカガネ! 勇者たちを殺す気なの!?」
【ここで果てるようならばヘルガイアと戦っても同じ事……】
 ローザの言葉に、アカガネは非情な言葉を返す。
【香と合一せし者よ、まだおのれの力を呼び出せぬのか?】
「おのれの、力?」
【娘よ、お前をよぶ声に耳を澄ませ】
「ローザ様……」
 シェラが心配そうにローザを見つめる。
 と、突如現れる勇者機。その、正体は――
「えっ? まさか貴方は、失ったはずの私の勇者……あぁ、そうだったのですね……私の力とは、本来の元の鞘に戻る事……やはり貴方だったのですね……我が勇者 ロード・アナイアレイター!!」
 其れは、大空を舞う真紅の翼。猛き翼ロード・アナイアレイター。
「シェラ、参りましょう!」
 そして、ローザはシェラの手を取る。
「はい、ローザ様」
 二人は、真紅の機体の中に吸い込まれるようにして乗り込んだ。

 その一方で美羽もジヴァの悲鳴を聞いて焦っていた。
(ああ、このままじゃ先生みたいにジヴァちゃんまで――。いやだ! もう誰も死なせたくない!!)
 そう、強く思った時だった。まばゆい光が湖面に広がる。そして、光が収まると、美羽の手の中には聖剣デュランダルが収まっていた。
「行ける! 行けるよベアトリーチェ!」
「はい!」
 そして、金色の勇者に、吸い込まれるように乗り込んだ。

「「「「「うわああああああああああああああ」」」」」
 勇者たちの一撃が、女帝キシオムバーグの幾重もの防御をすり抜けて、その鉄壁の守りを打ち崩す。
【よくやった、勇者たち……とはいえ、邪魔が入ったか――】