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蠱毒計画~プロジェクト・アローン~

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蠱毒計画~プロジェクト・アローン~

リアクション

  EJ社・内部


 鳴り響く警報ブザーの中。
 フェリークス・モルスが、隠し扉のピッキングを続けていた。
「このブザーは俺たちを警戒している。ってことは……よほどのことらしいな」
 そう呟いて、周囲を警戒するイーオン・アルカヌム。
 金鴻烈。
 扉の向こうに、CEOのいる可能性がますます高い。
 ブザーが鳴っても、人がくる気配はなかった。イコンでの陽動が功を奏しているようだ。
「開いたわ」
 フェリークスが立ち上がる。解錠は成功だ。
 だがその時。遅れてきたEJ社の警備隊が到着した。 

「俺が奴らを止めるよ」
 踏み出したのは、十文字宵一だった。彼はパートナーのコアトーを刀に変え、迎撃の構えをとる。
「ちょうどいい。私は暴れ足りなかったんだよ」
 宵一の背後から、冷ややかな女性の声が聞こえた。
 リデル・リング・アートマンである。
「こんな施設は根こそぎ破壊してやる」
 彼女の隣では、帝釈天インドラが【雷術】を放つ。
 それは怒りの証明だった。文字通り、インドラの雷が、警備隊たちに落ちる。
 ひるんだところに、『ロケットシューズ』で加速したリデルが敵陣に突っ込む。相手の視界内に【ミラージュ】を張りながら、近接戦で殴り倒していく。
「回復が必要なら、俺に任せてくれ!」
 リデルたちに話しかけたのは、囮として施設内を走り回っていた、千返かつみだ。
 彼もまた、この戦いに加勢する。
 歴戦の果てで学び得た回復術。彼は、傷ついた契約者を癒していった。
 かつみが、CEOを探す契約者に向けて言う。
「ここは俺たちでなんとかする。おまえたちは、その扉の向こうが知りたいんだろう」
「しかし……」
「大丈夫! 早く行くんだ!」
「……頼んだぞ」
 イーオンが、重々しく応えた。
 隠し扉の向こうへ、彼らは踏み込んでいく。
 


「金鴻烈への扉が、破られたようだな」
 コンピュータ制御室で監視していた、佐野和輝が言う。
 イーオンたちが侵入したのは、彼らの狙い通り、CEOのいる部屋だった。
 最高責任者の居場所がバレた以上、もはや長居は無用である。
「撤退だ。アニス、予定通りに動くぞ」
「任せておくのだ〜♪」
 アニスはすぐに、逃げ出す準備をする。
「防衛支援はサービスだから、最後まで付き合う気はないもん」
 箒にリモンを乗せると、彼女は廊下に向け飛び立った。
「残念だけど。君たちを逃がすわけにはいかないねぇ」
 そこへ駆けつけたのは、月谷 要(つきたに・かなめ)と、月谷 八斗(つきたに・やと)だ。

 襲撃を受け、アニスはすかさず方向転換する。【ホワイトアウト】で雪の壁をつくりながら、廊下とは反対の窓から脱出した。
 残された和輝が、月谷たちと向き合う。
「大丈夫よ。私がいるかぎり、貴方に傷ひとつ付かないわ」
 魔鎧として身を守るスノー・クライムが囁く。和輝の身体を包みながら、彼女は微笑んだ。
――わかってる。だから君にこの身体を預けたんだ。
 彼もまた、スノーだけに聞こえるよう囁くと、状況を確認する。
 和輝は、外で見守るアニスと【精神感応】していた。自分が動けば、彼女が【雪使い】で壁を作るはずだ。
 大丈夫。抜け出せる。
 彼らはそう確信すると、出口の向こうに向けて【ポイントシフト】。
 そこから先の戦いは、瞬間だ。

 月谷要が『スプレッドカーネイジ』を発射。
 アニスは雪で壁を作る。
 スノーを弾丸がかすめる。
 和輝の放った【放電実験】がコンピュータを焼く。

 その間。0,1秒。


「……すばしっこい鼠だったねぇ」
 獲物を取り逃がした要が、悔しさを押し殺す。

 一方。
 廊下を走り抜けた和輝は、追手がないことを確認してから、素性を隠すための『獅子の面』を外した。
 自分たちがいた証拠は、何も残していない。
 EJ社を後にして。彼はそっと呟いた。
「俺たちは、誰にも捕まえられないさ」