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リアクション
ニルミナス防衛団
「こんにちは。また来たわよ。あれからどうよ?」
元野盗たちの多くで構成されるニルミナス防衛団。村の未開発地域で訓練する彼らにヘリワード・ザ・ウェイク(へりわーど・ざうぇいく)は声をかける。
「ヘリワードさん。お疲れ様です。あれから……ですか? 特になにもないですけど……」
防衛団の男は少しだけ考えて続ける。
「村長に防衛団の名前のことを相談したら『ニルミナス防衛軍団なんてのはどうでしょうか』と言われました」
「………………防衛団でいいわね」
「とりあえずはですね」
無難な名前最高という境地に達している男だった。
「ヘイリーから話聞いてきたけど、頑張ってるみたいね」
訓練風景を見ながら言うのはヘリワードのパートナーであるリネン・エルフト(りねん・えるふと)だ。
「こちらのかたは?」
「リネンよ。うちの副団長」
簡潔にリネンを紹介するヘリワード。
「ああ、あの有名な。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。……ところで祭には防衛団で何か出し物とかしないの?」
ふと気になったことをリネンは聞く。
「……考えていません。というより、今年は流石にそういったものは遠慮しようと思っています。
「どうして?」
男の言葉にリネンは首を傾げる。
「一年前の祭……それを邪魔したのは俺たちですから。罪滅ぼし……なんてのは都合のいい話かもしれませんが、今度の祭はその分俺たちが守りたいんです」
男の言葉にほかの防衛団のメンツも頷く。
「……そういうことなら、そろそろ団長を決めたいわね」
「……団長、ですか?」
「ええ。基礎はある程度できているみたいだし、指揮系統がしっかりするだけで防衛力は大きく変わるわよ」
そう言って団長を作ることのメリットを説くヘリワード。
「あんまりボス以外の人が俺らを指揮するのは想像できないんですが……」
「気持ちはわかるけど、いない人は指揮とっちゃくれないのよ。団が潰れたら、あんたらのボスだって辛いでしょ?」
「それはそうですけど……」
渋る様子の防衛団。
「じゃあ、誰かボス以外で指揮されてもいいって人は?」
「うーん……契約者の方なら基本的に指揮されても文句ありません。それ以外だと……」
そう言ってニルミナス防衛団のメンツは頷き合う。
『コボルトロードさん』
「「……はい?」」
声を合わせて言うニルミナス防衛団の答えに訳のわからない表情をするリネンとヘリワード。
話を聞くと以前にコボルトロードにボコボコにされて以来憧れているとのこと。
「……それはまた指揮系統が面倒そうなトップね」
どうしようかとヘリワード。
「……とりあえず今日は訓練しましょ」
リーダー問題はとりあえず保留にしたリネンとヘリワードだった。
「あんたら、ちゃんと訓練してる?」
リネンとヘリワードとの訓練を終え、二人を見送った後。一休憩していたニルミナス防衛団のもとにセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)がやってくる。
「ひぃっ……!」
ヘリワードたちが来た時と違い悲鳴を上げるニルミナス防衛団。セレンとの思い出はいろいろトラウマになっているらしい。
「失礼な態度ね。……もしかしてあんたらまた悪いことしてたりすんの?」
「してないですしてないです! 俺たち心入れ替えて清廉潔白に生きてます!」
「ふーん……ほんとかしら」
防衛団の言葉を疑わしそうに受け取るセレン。その様子に防衛団のメンツは小さく悲鳴を上げる。
(……素直じゃないわね。セレンは)
セレアナはそう思う。適当そうに見えてこのパートナーは見るべき所は見ているのだ。だから防衛団のメンツがまじめにやっていることくらいはちゃんと理解している。
(……というより、さっきまで訓練風景見てたものね)
その訓練風景も、その前の『祭の罪滅ぼし』の件も。セレンとセレアナはしっかり見て聞いていたのだ。
「……ま、悪いことしててもあたしがぶん殴って矯正するだけだけどね」
(……本当に素直じゃないんだから)
この元野盗たちの更生をきっと一番に願っていたのはセレンだとセレアナは断言できる。だからこそその行き先を心配している。
「この調子で頑張れば村にちゃんと受け入れられてもらえる日も遠くないんじゃない? 悩みあったら聞くから」
「あ、ありがとうございます姐サン」
軽い感じで悩みを聞くというセレン。
(……本当は今日の一番の目的はそれなのに)
素直じゃないパートナーを優しい目で見守る恋人だった。
「しっかしまぁ……こんな村にまた来るとか……物好きだな」
ニルミナス内にあるどこかの部屋。かつて野盗たちのボスをしていた男、ユーグは部屋にあるベッドに座る女にそう言う。
「んー……住んでる所から離れて男に会いに行くっていうのも中々面白くて」
女―ミネッティ・パーウェイス(みねってぃ・ぱーうぇいす)―はなんか燃えるじゃんと軽く言う。
「変な女だ。……前あった時に俺が野盗をやってたってことは聞いてるだろうに」
「んー……別にお金にもならなそうだしめんどくさそうだもん」
特に気にすることでもないとミネッティは軽く言う。
「……なんでこう、最近俺に近づく女は変な奴ばっかかね」
この間観光案内をさせられた女のことを思い出しユーグは息をつく。あれも普通そうに見えて普通『で』変な女だった。
(……というより、俺みたいなのに好き好んで関わろうとする奴が普通なわけ無いか)
「む……ユーグ、浮気?」
「欠片もホンキで思ってない嫉妬ありがとよ。……プレイの一環か?」
「流石ユーグ。嫉妬に燃える女演じて体で繋ぎ止めようとするシチュってよくない?」
ため息混じりのユーグの言葉にそう返すミネッティ。
「というわけで早速……まだ日は高いけど……」
そう言いながら適当に服を脱ぎ始めるミネッティ。
「……はぁ、ま、楽しんだもん勝ちか」
「さっすがユーグ」
軽く言ってミネッティはユーグにキスをする。
――――――――
「ところでユーグってこの村で何してんの?」
「なんでそんなこと教えないといけないんだよ」
「えー……一夜を共にした仲じゃん」
「真昼間だ」
「それで? 何してるの?」
「……人の話を聞けよ。……何してるって言われてもな。性格悪い爺さんに部下を人質に取られて命令聞かされてる」
※訳※ 前村長にニルミナス防衛団の面倒を見ることを頼む代わりに前村長の手足として動いている
「ふーん……ユーグもいろいろ大変なんだね」
「全くだ」
前村長の命令を聞くのも、不出来な元部下たちを心配するのも、そして変な女に絡まれるのも。大変で、それでいてどこか楽しんでいる自分に気づいてしまいそうなのが一番大変だった。
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