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温泉と鍋と妖怪でほっこりしよう

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温泉と鍋と妖怪でほっこりしよう

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 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は少尉任官後の多忙さで発狂しそうだったが、一区切りがつき休みを貰うなり偶然入手した温泉宿のチラシを見て恋人のセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)と一緒に来ていた。
 そして、到着して荷物を宿の人に任せるなり
「セレアナ、行くわよ」
 セレンフィリティは山の方に向かって歩き出した。
「温泉に入りに来たんじゃないの」
 宿で休むとばかり思っていたセレアナは思わず訊ねた。
「温泉は、適度に体を動かしてからよ。その方が癒しや美肌効果が高まる気がするから」
 セレンフィリティは立ち止まってそう答えるなりまた山に向かった。セレアナはいつものように付いて行った。
 結局、温泉は山で紅葉狩りやら茸狩りをしてからとなった。

 まったりな女湯。

「やっぱり、疲れを癒すのは温泉よねぇ。しかも美肌効果があるって言うし最高よね。肌を維持をするのが大変だから丁度いいわ」
 適度な運動をしたセレンフィリティはのんびりと湯に浸かっていた。
「あんな格好をしているんだから仕方無いわね」
 温泉を楽しみながらもツッコミを忘れないセレアナ。何せセレンフィリティのいつもの格好は自分よりも露出が多いビキニだから。
「セレアナ、一言多い」
 セレンフィリティは文句を垂れながら背後からセレアナに抱き付き、いちゃいちゃしようとする。
 しかし、
「セレン、ボディケアに励むんじゃなかったの。さっさとしないとのぼせるわよ」
 というセレアナのやんわりとしたお断りの言葉でセレンフィリティは離れるも
「……それもそうね。今日はまだ終わっていないし」
 諦めてはいない。せっかくの休み、せっかくの秋の行楽なのだから。
「……はぁ」
 セレアナは溜息をつき、今夜は眠らせてくれないと悟り体力温存を考えた。

 たっぷりと温泉を楽しんだ後、
「妖力の温泉はすごいわね。肌が生き返ったわ。温泉の次は鍋ね」
「そうね。鍋も妖力があるというからどんな効果か楽しみね」
 美肌効果に満足しながらセレンフィリティとセレアナは部屋に戻る道を急いでた。
 そこに
「セレンお姉ちゃん達も来てたんだね」
 嬉しそうな知った声がかけられた。
「絵音じゃない。どうしたの? あの三人と一緒? それとも」
 セレンフィリティは振り向くなり訊ねた。宿は山奥で子供が一人で来られる場所ではないから。
「うん、お父さんとお母さんと来たんだよ。お仕事がお休みだから。一緒にお鍋も食べるんだよ」
 絵音は嬉しそうに答えた。あの三人と一緒の時よりも嬉しさの度合いが心無しか違っていた。
「それは良かったわね」
 セレアナは素直に絵音が家族と一緒である事に喜んでいた。
「せっかくだから鍋を食べ終わったらあたし達の部屋でトランプとかしない?」
 セレンフィリティはせっかく会ったからと遊びに誘った。
「うん、やる! それじゃ、すぐに食べてお部屋に行くからね」
 遊びに誘われて大喜びの絵音は廊下をバタバタと駆けて行った。
「転ばないように気を付けるのよ」
 セレアナは絵音の急ぎぶりに思わず注意をした。
 この後、セレンフィリティ達は部屋に戻った。

 部屋。

「ん〜、温泉も満喫できたし、名物の鍋もおいしいし……もう言うことないわねー」
「名物というだけはあるはね」
 セレンフィリティとセレアナは存分に鍋を楽しみ、鍋の効果も実感していた。
 これで食事終了と思いきや胃袋無限大のセレンフィリティは鍋のおかわりを頼んだ。まさかの事に女将は驚きつつも注文を受け、すぐに用意をした。

「ふぅ、もう満足よ」
 お代わりの鍋を平らげ大満足のセレンフィリティ。
 タイミング良く、ノック音が室内に響いた。小さなお客の到着だ。
「今、開けるわ」
 満腹状態のに代わってセレアナが動いた。
 開けると
「遊びに来たよ!」
 予想通りの人物がいた。
「絵音、その人は妖怪よね?」
 とセレアナは絵音の隣にいる見知らぬ少女に視線を向けた。
「うん。一人で寂しそうにしてたから一緒に遊ぼうと思って」
 絵音は部屋に向かう途中、廊下の長椅子にいたのを発見し遊びの仲間に入れて貰おうと連れて来たのだ。
「……あの、山姫の静奈です。お邪魔でしたら失礼します」
 人見知りの静奈はおどおど。丁度、参加していた宴会が終わったところなのだ。
「せっかく来たんだから入りなさいよ」
 畳に座ったままのセレンフィリティが声高に言った。
「あ、はい。お邪魔します」
 静奈は丁寧に頭を下げてから絵音と一緒に室内に入った。
 メンバー四人での賑やかなトランプが始まった。最初はババ抜きから始まり、神経衰弱、七並べと様々なゲームを続けた。
 しかし、どんなゲームをしても
「……あの、すみません。あがりです」
 静奈は申し訳なさそうに上がりを宣言した。
 最後に残るのは
「……次のゲームをするわよ」
 セレンフィリティだった。ここまでのゲーム負け続けなのだ。
「セレンお姉ちゃん、トランプ苦手なの?」
 絵音は恐る恐る子供なりに気を遣いながら言葉をかけた。
「たまたま、負けが続いているだけよ。次こそは勝つわ」
 セレンフィリティは何度目かの勝利予定宣言をしながらトランプを切る。
「セレン、子供の前なんだからあんまりムキにならないのよ」
 セレアナは、子供相手にも負けず嫌いを発揮する恋人に呆れていた。
「ムキになんかなっていないわよ。次は……」
 これまた何度目かの発言をするなり切ったカードを配った。
 そして、ゲームを開始したが、遊び始めてから結構時間が経ったためか
「……次はあたしの番だね……」
 絵音はウトウトし始めていた。
「絵音、眠いんでしょ。もう部屋に戻った方がいいわ。部屋まで一緒に行ってあげるから」
 セレンフィリティは手持ちのカードを畳に置きながら隣の絵音に声をかけた。
「んー、まだ遊……ぶ……」
 訴える声は眠気には勝てず消えてしまい、絵音の体はばったり畳に倒れた。同時に小さな寝息が聞こえてくる。
「完全に寝ちゃったわね。ゲームは一時休止よ。絵音を連れて行って来るからセレアナはカードを配り直してて」
 セレンフィリティは眠った絵音を抱き上げ、後の事をセレアナに任せて両親が待つ部屋へ届けに行った。
「分かったわ」
 セレアナはセレンフィリティを見送った後、カードの配り直しを始めた。
 セレンフィリティが戻って来るなりゲームは再開された。
 結局、セレンフィリティとセレアナは別の意味での秋の夜長を楽しむ事となった。