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流せ! そうめんとか!

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流せ! そうめんとか!

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「カオスだなあ……」
「流しそうめんと罪流し……関連性、あるのでしょうか」
「あっ、ほら次、ミリさんですわ」
 黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)黒崎 ユリナ(くろさき・ゆりな)、そして椿 ハルカ(つばき・はるか)は、滝壺近くで罪流しを見学していた。
 ミリーネ・セレスティア(みりーね・せれすてぃあ)が流されるそうなので、彼女の告白を待っているのだ。
 滝の上に立ったミリーネは、やや緊張の面持ちで滝への一歩を踏み出す。
「ミリーネさんに、懺悔したいことなんてあるんでしょうか?」
「ああ、あの真面目なミリーネが謝るような事ってなんだろうな」
 ユリナと竜斗はそう首を傾げる。
 普段が普段だけに、パートナーの信頼は厚いようだ。
 3人が見守る中、ミリーネは滝へと飛び込んだ!
 ざざざざざ……
「ユリナ殿!」
「は、はい!」
 流されるミリーネに呼び掛けられ、思わず返事をするユリナ。
「ユリナ殿が気に入っていた皿を割ってしまったのは私なのだ! 本当にすまなかった!」
「どうりで最近見つからなかったんですね……ふふっ」
 真面目な告白に、ついユリナの頬が緩む。
「お皿はまた買えばいいわけですし、許すもなにも怒ってないですから気にしなくてもいいのに」
 ざざざざざ……
「ハルカ殿!」
「あら」
 ミリーネの告白は、まだ続いていた。
「いつも私の料理の味見役を引き受けてもらって本当に申し訳ない!」
「まあ、そんな事でしたの」
 名指しされたハルカも、口元を抑える。
「そんなの、懺悔されるようなことではないですわぁ」
(むしろミリーネさんと一緒にいられるだけで嬉しいのに、手料理を御馳走してもらえるなんて役得ですもの♪)
 当時の事を思い出し、含み笑う。
 最も、食べるまでのことは覚えているが、食べた後の記憶が全然ないのだが……
 それが、ミリーネの生物兵器料理の力だということに、彼女はまだ気づいていない。
 ざざざざざ……
「そして主殿!」
「おお?」
「最近なんだか主殿に仕えている気がしなくて申しわ」
 ざっぱーん!
「な、何だ?」
 ミリーネの懺悔は、幸か不幸か竜斗には届かなかったらしい。
(ああ……これで、全ての罪を流し終えた……んん?)
 滝壺で水流に揉まれながらも爽快感を感じていたミリーネだが、ふと混じる違和感に目を開けた。
 見ると、彼女の体にはたくさんの白いものが絡みついていた!
(う、動けん……!)
「……ナイスタイミングですわ!」
 ミリーネの体が拘束されたことを知ったハルカは、コンマ一秒で動き出していた。
 滝の中で身動きが取れないミリーネを……襲いに!
「うわぁ、ハルカ殿、何を!」
「せっかくですし、この場で償ってもらいますわ!」
「ちょ、あンっ、やぁ……っ!」

「ひゃっ!?」
 不意に、竜斗から目隠しをされたユリナは、驚きとも抗議ともとれる小さな悲鳴を上げた。
「な、何ですか!?」
「いや、教育的観点から、な」
「?」
 眼前で繰り広げられる痴態をユリナに見せないようにという竜斗の気遣いだった。

   ◇◇◇

「い……いい? ちゃんと聞いててね」
「うふふ……摩耶がどんな告白をするか、楽しみだわ♪」
 神月 摩耶とクリームヒルト・オッフェンバッハ(くりーむひると・おっふぇんばっは)は、手を繋いで滝の上に立つ。
 極薄素材の白いスクール水着を見に纏った摩耶を、クリームヒルトは赤い舌で唇を湿しながら眺める。
「穎殿ぉ。聞いて欲しいことがあるんだよぉ」
「ええ、ええ。いくらでも」
 董卓 仲穎(とうたく・ちゅうえい)翔月・オッフェンバッハ(かづき・おっふぇんばっは)もまた、二人に倣って手を繋ぐ。
 仲穎の、黒いスクール水着は他の者たちの水着と比べ、異彩を放っている。
「それじゃあ、行くよ! ボクについてきてね!」
「ええ」
「はっ!」
「はい」
 摩耶はクリームヒルトと、仲穎は翔月と共に、滝へと飛び降りた!
 ざざざざざ……
「えと、えと、ボクね……」
 流されながら、摩耶はクリームヒルトに懺悔する。
「クリムちゃんが留守の時、お部屋に忍び込んで、ベッドの上で……」
「あらあら……うふふ」
 摩耶の声は、滝に流され周囲には聞こえない。
 ただ、クリームヒルトにだけは届いた。
 彼女は摩耶の告白に驚き目を輝かせながら、含み笑う。
「あたしも実は、先日摩耶の下着を拝借しましたの」
「ええっ」
「うふふ……良いお楽しみ時間でしたわ」

 ざざざざざ……
 仲穎と翔月もまた、互いに罪を告白しあう。
「穎殿ぉ! 実は拙者、穎殿が大切にしているお皿を割ってしまったのだ!」
「ええと、実は先日……翔月様が楽しみに取っておいておられたお菓子を食べてしまいまして」
「……えっ」
「あら……」
 翔月の口から、驚きの声が漏れた。
 それは、仲穎の告白内容にというよりも、二人の温度差に対して。
(そ、そんなので良かったのか……)

 ざざざざざ……だっぼーん!
 4つの水柱が上がった。
 しかし、当然まだ終わりではない。
 むしろ彼女たちはこれからだ。

「うふふふふ、いけない子ねぇ」
「ああっ、思い出しただけで、なんか、気持よくなってきちゃって……ぇ」
「は、あっ……あたしもぉ……」
 それもその筈、摩耶とクリームヒルトの体にはパラミタソーメンヘビが余すところなく巻き付いていた。
 その全てが、摩耶を拘束しようと全身全霊でその身をうねらせる。
「ぁ、ああんっ!」
「ぁうぅぅ……」
「あ、はぁっ、摩耶ぁっ!」
 仲穎たちの身にも、当然異常は起こっていた。
「あ……あぁっ」
「あらあら、どうしました?」
「あぁんっ! ヘビが、拙者の水着の中にぃいっ!」
「ふふふ……いい恰好ですわね」
 仲穎の言葉に、翔月は顔を赤らめ、力を抜いた。

 そして、やっとのことで滝壺から4人は上がったのだが――
「はぁ……摩耶。さっきの告白の事、ベッドの上でゆっくり聞かせてもらうわよ」
「クリムちゃんもぉ、ボクの下着をどうしたのぉ? 二人っきりで、お話したいなぁ」
 手を繋いだまま、早々に消えていく摩耶とクリームヒルト。
「私達も。お皿の事、しっかり詰問させていただきますわ」
「あ……あ。穎殿、堪忍して……」
「その体、このままじゃいけませんわよね。鎮めて、あげますわ……」
「あっ……」
 そして4人は、一路ベッドへと急ぐのだった。

   ◇◇◇

「あー」
 ざざざざざー(きゃー)。
「いやされるー」
 ざざざざざー(あぁんっ)。
 滝から、罪と共に人がざんざと流れてくる中。
 その脇の支流、おだやかな流れの片隅で、ハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)は暫しの休息を味わっていた。
 温かい滝の水とマイナスイオンに身を委ね。
 子供たちを親に預けて……というかある意味奪われ、今は一人身、いやソラン・ジーバルス(そらん・じーばるす)と恋人気分。
「きゃー」
 そんなソランは、罪流しに参加し、楽しそうに滝から流れてくるところだった。
「はー。ソランもよくやるのう。わらわは、こうして水浴びしているだけで十分じゃ……べ、別に流れるのが怖いというわけではないのじゃぞ?」
 誰に聞かれるともなく、独り言を言うエクリィール・スフリント(えくりぃーる・すふりんと)の横を、ソランが流れてくる。
 ざざざざざー。
「実は……ハコの義手をメンテする工具。あれを駄目にしてしまったのは私です! ごめんなさいっ!」
「ん?」
 聞き捨てならない台詞が聞こえたような気がして、ハイコドは顔を上げる。
 ざぶーん!
 水しぶきをあげ落ちたソランは、なかなか浮かび上がって来ない。
「んむ?」
 異変に気付いたのは、エクリィールだった。
「な、なんじゃこの白い紐は!」
 パラミタソーメンコウソクヘビは、エクリィールの周囲に忍び寄っていた。
「ちょ……止めるのじゃ!」
 エクリィールの言葉を聞く耳は、ヘビにはない。
 一斉にエクリィールに襲い掛かる。
「うわー、こういうのはソランにやれー!」
 抗議むなしく、エクリィールは大量のヘビによって縛り上げられる。
 ヘビはそれだけでは飽き足らないのか、その隙間へ隙間へとどんどん集まってくる。
「だ……誰か―!」

「あ……あぁあんっ!」
 滝つぼに落ちたソランもまた、ヘビの餌食となっていた。
 更に、それだけではなかった。
(……きもちいい、うれしい?)
「は、あ……ラフィルド、ね。ええ……」
(もっと、きもちよく、なる?)
 ヘビに絡まれたソランの楽しそうな様子を見たラフィルドが、やって来たのだ。
「ええ……ええ。来て!」
(ん……)
 ソランの、白いヘビに拘束された体にラフィルドの赤い体が溶ける様に重なる。
「あぁん……」

「おーい、大丈夫かー」
「ハイコドー! へるぷみー!」
「もう助かってるって」
 ハイコドに救出されたエクリィールは、泣きながら彼の足元に縋る。
「さて、それよりも……ソランだ」
 ハイコドがそちらを見ると、ソランは未だヘビとラフィルドと共に戯れていた。
「おい」
「はぁん」
「どうした?」
「はぁ……んっ、きもち、よくて……」
「そりゃ良かった。でもまあ、そろそろ……」
「きゃっ!?」
 ハイコドが、ソランを水中から抱え上げる。
 そしてにやりと笑った。
「お仕置きの時間だな!」