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学生たちの休日12

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葦原明倫館の年越し



「よく来てくれたました」
「よくきたのー。まあ、ゆるりとしていきや」
「みんないらっしゃいー」
「皆さんこんばんわー」
 葦原島にある紫月 唯斗(しづき・ゆいと)の屋敷で、主である紫月唯斗とエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)リーズ・クオルヴェル(りーず・くおるう゛ぇる)紫月 睡蓮(しづき・すいれん)らが、到着したお客様を出迎えていました。
「お邪魔します」
 ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)が、ぺこりと紫月唯斗たちにお辞儀をしました。
「こ、ここが、名高い重婚忍者さんのお屋敷……」
 その後ろで、何やらノルン・タカマガハラ(のるん・たかまがはら)が危ないことをつぶやいてちょっと腰を引いています。
「ふむふむ、ここが名高い忍者屋敷って言うわけね」
「わーい、にんじゃやしきー」
 興味深げに紫月唯斗邸を見渡すユーフェミア・クリスタリア(ゆーふぇみあ・くりすたりあ)の後ろから、及川 翠(おいかわ・みどり)が飛び出していきました。
「ああ、翠さん、ちょっと待って……」
 あわてて、ユーフェミア・クリスタリアが及川翠の後を追いかけていきます。
「ここが忍者屋敷なのかあ」
 川村 詩亜(かわむら・しあ)が、ちょっと感心します。ずいぶんと大きい葦原式のお屋敷ですし、何やらいろいろ仕掛けがありそうです。
「待ってよー、翠ちゃん! 詩亜ちゃん、私たちも探検に行こっ!」
 そう言うと、川村 玲亜(かわむら・れあ)が、川村詩亜の手をとって駆け出していきました。
「おいおい、うちは宴会場だが、アトラクションじゃないんだが……。うむ、聞いちゃいねえ……」
 フリーダムな及川翠たちに、早くも紫月唯斗が頭をかかえました。
「小さい子たちはフリーダムねえ。まあ、後で回収すればいいじゃない」
 リーズ・クオルヴェルが、そう言って紫月唯斗をなだめました。
「とりあえず、私が案内しますので、どうかついてきてください」
 残ったミリア・アンドレッティとノルン・タカマガハラを、紫月睡蓮が宴会場へと案内していきました。
「それでは、わらわは厨房で料理の支度をしてくるぞ」
「ああ、頼む」
 紫月唯斗に断ってから、エクス・シュペルティアが厨房へとむかいました。

    ★    ★    ★

「いいな、この先は忍者屋敷だ。貴様には、先行威力偵察を命じる」
「御意、博士」
 紫月唯斗邸の手前で、マネキ・ング(まねき・んぐ)が、密かにマスク・ザ・ニンジャ(ますくざ・にんじゃ)に指令を与えていました。
「ここに秘策がある。この絵姿を持っていけ」
「承知。では、また後刻」
 マネキ・ングから何かの紙切れを数枚もらうと、マスク・ザ・ニンジャがスッと姿を消しました。
「これで、後は先行して潜入している冷 蔵子(ひやの・くらこ)と連携がとれるかどうかだな」
「おい、また何を企んでいる」
 何やら不穏な動きをしているマネキ・ングに、セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)が問い質しました。
「何も企んではおらんが。さあ、急ごうではないか」
 そう言ってごまかすと、マネキ・ングがセリス・ファーランドをうながしました。

    ★    ★    ★

「いらっしゃい。さあ、どうぞ中へ」
「御案内します」
 セリス・ファーランドがやってきたことに気づいた紫月唯斗が、紫月睡蓮に案内をさせました。
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)! だが、年末年始くらいは悪を休業してもよかろう。おーい、唯斗ー。例年通り、遊びに来たぞー」
 続いてやってきたのは、ドクター・ハデスです。何やら、酒やらつまみなどをたくさん持って来ています。意外とマメです。
「いつもすまないな、さあ、こっちだ。案内しよう」
 荷物を持ってやりながら、紫月唯斗がドクター・ハデスを案内していきました。
「唯斗兄さんっ! 今日こそ、邪悪な嫁たちから逃げだし、私と平和な愛の巣を築きましょうっ!」
「唯斗ししょー、遊びに来たよー。あれっ? ししょー、どこー」
 タッチの差で、紫月 結花(しづき・ゆいか)デメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)がやってきました。紫月唯斗、運のいい男です。
「唯斗ならもう中よ、案内してあげるね」
 そう言うと、リーズ・クオルヴェルが、紫月結花とデメテール・テスモポリスを案内していきました。さりげに、表門に戻ってくる紫月唯斗と出くわさないように庭から案内していきます。こういうとき、大きい屋敷は便利です。
「さて、次はと……。おお、刹那たちか、待ってた……うぼあっ!!」
 出会い頭に、突然飛び出してきたアルミナ・シンフォーニル(あるみな・しんふぉーにる)が紫月唯斗にDDTをしかけました。
「ご、ごめんなさい……」
「いったい、何が……」
 ふらふらと立ちあがる紫月唯斗にむかって、今度は辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)がバク転しながら一気に近づいてきました。そのまま紫月唯斗にフランケンシュタイナーを見舞いました。
「な、なんで……」
 わけの分からないまま、紫月唯斗が地面にばったりと倒れ伏しました。
「だって、招待状の下に書かれていたのじゃがな」
 そう言って辿楼院刹那が招待状を見せましたが、気絶している紫月唯斗には当然見えません。どうやら、その文字は招待状に後から書かれた物のようで、「忍者たる者、いついかなる攻撃でも受けて見せるのだよ。よろしく稽古をつけてほしいのだ」と書かれていました。どうやら、誰かが書き加えたようです。まあ、なんとなく犯人は分かりますが。
「いらっしゃいませー。あれ? 唯斗兄さんはどこへ行ったのでしょう。まあいいです。会場はこちらです、案内します」
 ちょうど戻ってきた紫月睡蓮が、倒れている紫月唯斗には気づかず、辿楼院刹那たちを案内しようとしました。
「あ、厨房はどこですか。おせちを持ってきましたので」
 それまで大人しくしていたイブ・シンフォニール(いぶ・しんふぉにーる)が、紫月睡蓮に訊ねました。
「一緒に案内しますね、ついてきてください」
 そう言うと、紫月睡蓮が歩き出しました。
「おや、アルミナはどこへ行ったのじゃ? 仕方ない、くいーんよ、探してくるのじゃ」
「分かりました、主」
 辿楼院刹那に言われて、女王・蜂(くいーん・びー)が、姿の見えなくなったアルミナ・シンフォーニルを探しに行きました。
「よう唯斗、遊びに来てやったぜ。なんだ、なんで地面で寝てるんだ、こいつ」
 最後にやってきた朝霧 垂(あさぎり・しづり)が、まだ地面に倒れていた紫月唯斗を軽く蹴っ飛ばしました。その衝撃で、紫月唯斗が意識を取り戻します。
「いたたたた、酷い目に遭った」
「何やってんだ、早く案内しろよ」
「ああ」
 朝霧垂に急かされて、紫月唯斗は痛む頭を押さえつつ宴会場へと案内していきました。