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水上公園祭典 華やかファッションショー

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水上公園祭典 華やかファッションショー

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 第 6 章 -子供は目を瞑りましょう-

 アクシデントで場内が沸きたってしまったが、何とか収まるとショーの続きと言わんばかりにリョージュはビデオを懐に仕舞うと司会を続けた。
「さあて、ショーも終盤だ! おっと、これも夫婦で登場だな。可愛くカッコよく! リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)!」

 ステージの照明が落とされ、1つのスポットライトが照らした中心には【超感覚】で白い犬耳と1M程の白い尻尾を生やし、ライムグリーンとブルーを基調としたラテンドレスを纏ったリアトリスと執事風の燕尾服でスマートさを見せたレティシアが並び、一礼すると流れるような仕草でエスコートしたレティシアがリアトリスの手を取って片方の手を腰へ添える。
「うーん、あちきと旦那様じゃ身長差が苦しかったですかねぇ」
「そうかも……レティと踊れるのは嬉しいけれど、僕も君をリードさせてほしいな」
 聞こえないようにコソコソと囁き合うものの、ダンスを始める。

 モダンダンスでワルツからタンゴ、【アルティマ・トューレ】で足元から雪を発生させると2人の周りを舞っていき華やかさに彩りを添える。
「レティ、スローに入るから動き早くしていくね。ついでに……【光術】で月を描いて頭上で輝かせるのってどう?」
「いいですねぇ、旦那様に任せるですぅ」
 踊りながら演出を決めていくと、レティシアのリードにタイミングを合わせてリアトリスが頭上に描いた月からの輝きを発生させ、それと同時にスポットライトも消えると淡い月明かりの中、フィニッシュへ向かおうとステージ中央へジャンプを多めに入れた踊りを披露する。月明かりが弱くなる頃を見計らったように【爆炎波】で花畑を描くように踊り、レティシアがリアトリスを支えるように抱き上げてフィニッシュを決めた。その瞬間、炎の花が舞い上がる中での決めポーズはベーゼでとばかりに口付けるのでした。
「れ、レティ!? 僕聞いてないよ……っ」
「あれ、そうでしたかねぇ? まあ、あちき達は夫婦なんだしベーゼはいつもの事なんだしですよぅ」
「お熱いなぁ……」
「お熱いですね……」
 司会のリョージュと実況の色花は同じ感想を同時に呟いてしまう。漸くレティシアの抱っこから下ろされたリアトリスは恥ずかしさが頂点だったのか、レティシアの手を引いてステージ奥へと引っ込んでしまうのだった。
「あ! いけね……またインタビューし損ねたぜ。それにしても女同士でキスってのも結構迫力があるな」

 リョージュはこの後、このセリフの威力をとことん思い知る事になる――。


「んじゃ、気を取り直して最後……になるのか? ペア2組同時に登場だ! 可愛くお姫様風で神月 摩耶(こうづき・まや)、純白のロングコートの軍人クリームヒルト・オッフェンバッハ(くりーむひると・おっふぇんばっは)! もう一組はおっと、こっちも軍人で対照的な黒のロングコート董卓 仲穎(とうたく・ちゅうえい)、獣耳着ぐるみで犬娘翔月・オッフェンバッハ(かづき・おっふぇんばっは)!」
 摩耶をエスコートして一緒にステージの右側から現れたクリームヒルトは姫君を守護する騎士然とした雰囲気を醸し出し、腕を組んで歩く摩耶も腰回りをコルセットで引締め、大きく膨らんだロングスカートが更に腰の細さを際立たせる。リボンやフリルをふんだんにあしらったデザインは遠目から見ても可愛らしいドレスに仕立てられていた。
「ねえ、摩耶。観客席に向かって手を振ってみたりしたらいいんじゃない? お姫様っぽくなるわよ」
「あ、そうだね。こんな感じ? 優雅に、お姫様っぽく……」
 見様見真似の仕草で観客へ向かって手を振る摩耶と彼女をエスコートするクリームヒルトと、ステージの左側から現れた仲穎と翔月が中央で擦れ違い様に対照的な白と黒の軍服に身を包んだ2人は軽くパン、と手を合わせた。
「仲穎、躾けのなっていない家のワン子を宜しくお願いするわ♪」
「ええ、任せて下さい……翔月様は、私の『愛犬』ですもの」
 黒い軍服がそう見せるのか、妖しく微笑む仲穎は鞭を片手に翔月の首輪に付けられた鎖を引いて摩耶、クリームヒルトと交差してステージの反対側へと立つ。

「……あーっと、インタビューしていいのか? んじゃあ……」
 リョージュがマイクを向けようとしたが、一礼を済ませた摩耶の腰を抱き寄せたクリームヒルトが突然唇を奪った。向けたマイクの行き場がなくなり、あんぐりと口を開けるしかないリョージュは思わず「羨ましい!」と叫んでしまうのだった。
「クリムちゃん、嬉しいけど…びっくりしちゃう……」
「ん、ごめんね♪……摩耶が可愛くて。取り敢えず目閉じてね?」

 未だ続く濃厚な口付けにリョージュは2人へのインタビューは後にしようと仲穎、翔月へと向くが―――。

「ああ、そういえばまだ皆様にご挨拶していないわね……ご褒美あげますから、ご挨拶なさい……♪」
 仲穎は手に持った鞭で軽く翔月を引っぱたきながら促すと仲穎の足に縋り付いたまま犬の鳴き真似をしてみる。
「わ、わお〜〜ん♪」
 獣耳着ぐるみといっても、肌の露出が限界ギリギリまで多い衣装となっており、着ぐるみじゃないだろとリョージュはツッコミたくなってくるが敢えてそれは言わずにいる。
「ふふ……良く出来ました、ではご褒美を上げなくてはね」
 仲穎は翔月の身体を撫で回しながら彼女の目線に合わせて屈むと濃厚なディープキスをかます。
「こっちもかよ!!」
 リョージュの向けたマイクは再び行き場をなくし、観客席では見ている方が照れてしまうキスシーンにつられて顔を赤らめる人があちこちで見受けられた。実況席の色花も頬を赤くしながら目を離せず、お菓子を摘みながらステージに魅入る。2組のペアの間を行ったり来たりとしてしまうリョージュだったが互いの世界を作りつつ、クリームヒルトは摩耶をお姫様抱っこで退場し翔月は仲穎の足に纏わりつきながらステージ奥へと退場するのだった。


「女同士のキスか……こりゃすげぇ迫力だな、忍も目覚めねえかな」
 思わず呟いたリョージュの一言に、どこからともなく小道具が飛んできて彼の後頭部を直撃するのだった。

「……以上で、ファッションショー全てのプログラムが終了しました。この後は―――」
 色花が言い掛けたところで会場の外では花火が上がり、すり鉢状の会場席を照らした。北側に上がったと思えば南側から上がったりとどの席からも花火を見渡せる演出でフィナーレを飾ろうとしていた。