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「面白い事やってるね」
「あぁ、賑やかだな」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は校長達とダリル作のクッキーでお茶会をした後、手紙書きの事を聞きつけ参加。
「……未来体験薬と言えばあの時は幸せな未来を体験したなぁ」
 ルカルカは以前未来体験薬の被験者として家族を築く幸せな未来を体験した事を思い出していた。
「……あの二人はロズを振り回して、相変わらずだな」
 ダリルはあちこち歩き回る双子とロズを目で追っていた。
 その隣で
「まずはまた未来体験薬を楽しんでから手紙を書こうかな」
 ルカルカは未来を想像してさっさと便箋に染み込んだ匂いを嗅いだ。

 ルカルカが未来を想像している間。
「手紙か。紙でなくても良いな。データをここからパソコンに転送しタイマーで表示させたらいいか」
 ダリルは未来体験薬不使用の上、紙に綴る事もせずシャンバラ電機のノートパソコンを使って未来への手紙を綴るのだった。
 その時
「何、つまんない事してんだよ」
「紙に書けよ」
 双子が味も素っ気もないダリルの未来の手紙にツッコミを入れに来た。
「お前達の未来なら俺には見えてるぞ」
 茶化す双子に怯えさせる時の鋭い眼光で言い放つ。
「な、何だよ!!」
「見えるって」
 双子は少しダリルの眼光に怯えつつ問いただす。
「学校やら工房やらで今と同じように悪戯をしているのだろう。それで迷惑を掛けている。違うか?」
 双子を知るダリルはあっさりと双子が見た未来を予測する。
 当然
「……」
 ダリルの予想が的中し双子を沈黙させた。
「しかし、悪戯は探究心と好奇心の表れだから分別さえ覚えればお前達は優秀な魔法薬の研究者になると俺は思っている」
 ダリルは珍しく双子を褒めた。
「おいおい、どうした」
「具合でも悪いのか?」
 快くダリルの褒め言葉を受け取ると思いきやこれまで説教を受けた経験から不安になる。
「たまに褒めると失礼な事を言うのだな」
 ダリルは二人の様子に苦笑を浮かべた。
「はいはい」
「もう、行こうぜ」
 双子はいつもと少し違うダリルに警戒し、からかう相手を捜す散歩に戻ってしまった。

 双子達が行った後。
「これが書き終わったらロズの様子でも見に行くか(話の内容によっては図書館で見つけた文献に意見が聞きたいとでも言って連れ出した方がいいかもしれないな)」
 ダリルは手紙が途中のためロズがどこか沈んでいると察していたが、声を掛けなかった。
 この後、ダリルはルカルカよりも早く手紙を書き上げ次第、ロズの所へ行くとすっかり話の場が出来上がっていた上に自分と同じく彼を気遣う者達がいた。

■■■

 近未来、午前のシャンバラ教導団、執務室。

「……これだけか」
 鋭峰は最後の書類処理を終えてルカルカに渡していた。
「はい、午前の書類確認は以上です。お疲れ様です」
 ルカルカは受け取った書類の束を処理済の決済箱に片付けてから労いの笑みを浮かべた。
「あぁ、君もな」
 鋭峰もいつもの調子でルカルカを労った。
 何とか仕事が一段落した所で
「少し時間がありますから、休憩入れますか。丁度、お茶請けに良いお菓子も用意しましたので」
 ルカルカが時間を確認し休憩をするように鋭峰を促した。
「……そうだな。貰おうか」
 鋭峰は机上のペーパーウェイトクロックで時間を確認した後、答えた。
「はい。すぐに用意しますね」
 鋭峰の返答を聞くなりルカルカは素速くお茶とお菓子の準備を調え
「金茶とダリルが作った薄焼煎餅です」
 金茶を淹れ、薄焼煎餅を鋭峰の手元にそっと置いた。どれもこれも鋭峰の疲れを少しでも癒す事が出来ればと気遣い用意された物だ。
「……」
 鋭峰は静かに茶を飲み、お菓子を食べる。
「どうですか?」
「……なかなか、良い味だ。特に二人の気配りが」
 頃合いを見て味を訊ねるルカルカに鋭峰は口元を少しだけゆるめた。確かにお茶やお菓子は美味しいがそれよりも鋭峰がありがたく感じたのはルカルカ達の自分に対する気遣い。それがあるからこそ用意された物が余計に美味しく感じる。
「ありがとうございます(少しでも息抜きが出来たみたいで。それにルカがあげたプレゼントも使ってくれてるし)」
 ルカルカは深々と頭を下げた。胸中ではプレゼントしたペーパーウェイトクロックを利用してくれている事にも密かに喜んでいた。
 ひとしきり休憩を楽しんだ後
「午後からの予定を確認したいのだが」
 鋭峰は午後からの予定を訊ねた。
「午後からの予定は……」
 ルカルカは事細かに鋭峰はスケジュールを伝えた。書類処理の手伝いに休憩の準備にスケジュール管理とまるで秘書の如くだ。
「そうか。ところで教育関連の方はどうだ? 色々やってくれていてこちらは助かっているが、問題は無いか?」
 鋭峰はシャンバラ教導団教官として教育機関でも働くルカルカに案配を訊ねた。
「上手くやってますよ。それより、団長もう少し部下に仕事ふって下さいよ。昨日今日も明日も予定ぎっちりじゃないですか。ちゃんとベッドで寝ていますか?」
 ルカルカはきゃらきゃらと笑いながら自分の事はさっさと終わらせ、鋭峰の事に話題を変えた。
「睡眠は十分だ。さて……」
 そう一言言うなり鋭峰は立ち上がり、午後の予定をこなすために動いた。お茶とお菓子はしっかりと平らげられていた。
「団長!」
 ルカルカは急いで団長の後に続いた。

■■■

 想像から帰還後。
「ルカばりばり頑張ってたなぁ。まるで秘書みたい」
 ルカルカは想像した未来に満足そうに嬉しそうに笑みを洩らした。
 そして
「そうだ。手紙も書かなきゃ……って、あれ? ダリルがいない。いないとなると……あの双子関連のはずだけど」
 手紙をまだ書いていない事、何よりいたはずのダリルがいなくなっている事に気付いた。しかも理由まで検討ついてるという。
 少し周囲を見回した後
「いたいた……ロズと一緒だ。何か深刻そうな話してる感じだなぁ」
 仕置き人達に囲まれている双子と別テーブルで数人と深刻そうな話をしているのが見えた。ダリルはロズの方にいた。
「ルカは手紙を書いて待っていようかな」
 ルカルカは入れる雰囲気ではないと判断し、手紙書きの方に集中する事に。
「……手紙は一年後でいいかな。未来のルカ、手紙を受け取ったらどんな事を思うかな」
 ルカルカは手紙を受け取る事になる未来の事を考えながら文字を綴った。もちろん、のんびりとお菓子やお茶を楽しみながら。
 しばらくして、ダリルが戻って来て、ロズと交わした内容をルカルカにも伝えた。
「……ヒスミもキスミもロズもいいようになったらいいね」
 ルカルカは双子とロズが良いようになればと思った。

 ルカルカの手紙の内容は
『結婚生活はどう?
倦怠防止に真一郎さんを旅行に誘ってね
毎年の記念日に結婚記念旅行……どう? 素敵でしょ

金団長はお元気かしら
国の情勢はどうかしら
パラミタ大陸は無事かしら

一年後の貴方が笑っていられるように、私は今を頑張ります』
という大切な人を思う素敵な物であった。