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森の聖霊と姉弟の絆【前編】

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森の聖霊と姉弟の絆【前編】

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 入口に危険が無くなったと知るや、「わーい」と言わんばかりに廃屋内へ駆けていく少女たちの姿があった。
 その先頭を行くのは及川 翠(おいかわ・みどり)。その後ろにサリア・アンドレッティ(さりあ・あんどれってぃ)徳永 瑠璃(とくなが・るり)が続き、彼女らの内唯一の良心ともいえるミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)が慌てて翠の暴走を止めようと後を追う。
 これはマズいと他の契約者たちも廃屋内へ入ったが、とりあえず敵や危険物の姿が無いことに安堵した。
「さあ、悪者さんの居た廃屋さんを探検するの! 探検して、何か見つけるの!」
「探検するの? わ〜い、楽しみっ!」
 翠とサリアが大いに盛り上がっている傍ら、ミリアは「違う」と首を横に振っている。瑠璃はといえば、そこそこ今回の目的を理解しているはずなのに、翠たちに混ざって目を輝かせていた。
「ふむふむ、つまり廃屋さんを家捜しすれば良いんですね!  探検、楽しみです!……えっ、ミリアさん違うんですか?」
「違うわよ。あのね、翠、目的理解してる? お薬無いかとか書類とか残って無いかとか、情報や物資を鹵獲するのが目的よ……?」
「分ってるの! 探検して何か見つければ良いの!」
 ミリアの問いに、翠は胸を張ってそう答える。彼女の発する「探検」という言葉に、ミリアはやれやれと溜め息を吐いた。
「うん、やっぱり分ってないわね……」
 しかしそうしてミリアが翠たちの「探検」に手を焼いたのも、さほど長い時間というわけでもなかった。
 何故なら廃屋内部はそう広くなく、すぐに見て回れる程度の部屋数しかなかったからだ。その部屋というのも入院病棟を彷彿とさせる居住スペースの他は調理場やユニットバスなど至って普通な印象の所ばかりで、先程通って来た入口の他には罠が仕掛けられている様子もなかった。当然、敵の気配もない。逆にこれだけ何も無いと、翠でなくとも「これだけなの?」と問いたくなる。
 そんな空気を破ったのは、貴仁の「ちょっと待ってください」という一言だった。【ディメンションサイト】で空間の広さを探っていた彼は、入口から真っ直ぐに進んだ突き当りの壁奥に、隠された空間があることを感じ取った。
「確かに、僅かだけど熱源反応もあるわね。奥に何かあるのは間違いなさそう」
 セレンと互いの死角をカバーするような形で熱源探知を行っていたセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)も、貴仁の言葉に同意する。
 それを聞くと、ほぼ同時に翠とランディが口を開いた。
「隠し部屋なのっ? すごく面白そうなの!」
「よし、いっちょ行ってみるか」
 理沙とミリアが止める間もなく、二人は壁に向かって走り出す。
 少年少女の体当たりを受けて、その壁は思いがけずもあっさりと二人を中へ通した。唐突に壁が左右に割れて観音扉状に奥へ開いたので、勢い余った翠とランディは思わず転びそうになってしまう。
 二人が顔を上げるた瞬間、鉄格子の奥にいた人物と目が会った。