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森の聖霊と姉弟の絆【前編】

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森の聖霊と姉弟の絆【前編】

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「何か金目の物は無いでありますかね」
 ようやく段ボール箱から這い出てきた葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は、こっそり廃屋内を探索しているところだった。
「こ、これは……!」
 ゴミ箱の中に無造作に突っ込まれているのは、恐らく誘拐された時に被害者が身に着けていた品々なのだろう。メイド用のヘッドドレスなんかもあったが、吹雪の目を引いたのは金の指輪と腕時計だった。恐らくは灰色の島で村長をしていたという富豪の持ち物のようだ。
 寄りによって被害者の物品に手を付けるということに良心がちくりと痛みはしたものの、吹雪の中では野望の方がずっと強かったらしい。
「資金さえあれば村にもっと凄い物が出来るはずであります!」
 そう言って戦利品を段ボール箱に詰めると、そそくさと外に出る。
「わー、コレ何だろう?」
 本当はすぐにその場を後にしてしまおうかとも思ったのだが、廃屋の裏手から無邪気な声が聞こえてきて吹雪の足を止めた。
 声のする方へ向かうと、翠たち少女4人衆がまじまじと何かを観察している。
「何か見つけたのでありますか?」
「柱の一部みたいなものと……よく分らない金属片です」
 ミリアの指し示したものを見て、吹雪はエースたちが遺跡に関係する物品を求めていたことを思い出した。確か、情報では廃屋の傍に存在する可能性があるということだった。
「なるほど。じゃあこれは調査のために私から渡しておくであります」
 後でエースたちに引き渡すことに決めて、吹雪はそれらも段ボール箱に詰める。
 気づけばもう陽も落ちる頃。曇天の空に北国の風が相まって、肌寒くさえ感じるような夏の一日だった。

担当マスターより

▼担当マスター

黒留 翔

▼マスターコメント

黒留 翔です。
『森の聖霊と姉弟の絆・前編』に参加して頂いた皆様、お疲れさまでした。いつも素敵なアクションのご投稿、ありがとうございます。

現在の国際情勢を鑑みると、このタイミングで疫病の話を書くのは如何なものなのだろうかと内心ヒヤヒヤしながら執筆作業を進めました。
後編のシナリオガイドは可能な限り早く公開させて頂くつもりですので、ぜひ続けてご参加頂ければ幸いです。シリーズ完結まであと少しとなりましたが、今後ともよろしくお願いいたします。