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ニルミナス

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ペンダント探し

「――というわけで、穂波のペンダント探しを手伝って欲しいの」
 ニルミナスの広場。穂波からペンダントを探していると聞いたルカルカ・ルー(るかるか・るー)は、自分のパートナーたちにそう頼む。
「穂波も村のやつだからな。もちろんいいぜ」
 そう答えるのはニルミナスに住み、村を守る龍カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)
「俺が人助けを拒むと思うたか」
 情に厚い夏侯 淵(かこう・えん)も二つ返事でペンダント集めを手伝うと決める。
「ダリルは?」
 少し考えこんでいる様子のダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)にルカルカは答えを促す。
「医者としての仕事があるから。……本腰いれては探せないが、診察の合間くらいなら手伝おう」
 それだけ言ってダリルは言葉通り医者としての仕事に戻る。
「さてと、俺も探してくるぜ」
 カルキノスもそう言ってルカルカたちから別れてペンダント探しに入る。
「それじゃ、ルカたちも探そっか。淵、森で木の間とか根の下とか《超視覚》で視てくれる?」
「うむ、問題なしだ」
 そうして二人は村を出て森へと向かう。
「あれ? アーデ?」
 その途中でアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)の姿を見つけたルカルカは夏侯淵から少し離れて話しかけに行く。
「アーデ、どうしたの? 村の入り口で」
「ふむ、ルカルカか。なに、イルミンスールに戻る途中で少し寄っただけじゃ。村には儀式を終わらせる時に来る予定じゃからな」
「そっか。じゃあ、儀式が終わったら一緒に温泉入ろうね」
「温泉じゃな。分かった」
 そうしてルカルカはアーデルハイトと温泉に入る約束をしてペンダント探しに戻った。


「そうか、ペンダントのことについては知らないか」
 《万象読解》でユニコーンであるラセンの診察をしながらペンダントのことを聞いたダリルはそう返す。
「……よし、異常はないようだ」
 診察を終えてダリルはラセンの住処を発つ。
「……で、あなたは何をしているんだ? ミナ」
 ラセンの住処の影に隠れているミナを見つけてダリルは聞く。
「ミナホから隠れてるのよ。あの子私に仕事させようと探してるみたいだから」
「……いい大人なんだから仕事くらいするべきだろう」
 はぁとため息をつきながらダリルはミナに聞こうと思っていたことがあるのを思い出す。
「穂波にペンダントを渡したそうだが、何か意味があるのか?」
「んー……別に意味は無いわよ? あの子がミナホの記憶に関してどうにかしたいと思ってたみたいだから渡してただけ」
「? それはどういう……」
「ま、見つかったら分かるはずよ」
 そう言ってミナはいたずらな笑みを浮かべるのだった。


「うーん……前村長の遺品の中にペンダントはないわね」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は前村長である藤崎 将の遺品を探しながらそう言う。穂波のペンダント探しを手伝っているセレンは将のペンダントに絞って探していた。
「結構遺品が整理されてるわね。記憶を失った村長が整理したはずはないし……誰がしたのかしら」
 セレンが探したところをもう一度確認しながら遺品を元あった場所に戻していっているセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)はそう疑問を持つ。
「さあ、前村長も本当謎な人だったし、どんな付き合いがあるかいまいち分からないのよね」
「……それもそうね」
 セレンの感想にセレアナも頷く。
「うーん……さっさと見つけてセレアナと一緒に温泉入りたいのに」
 見つからないとぼやくセレン。
「……まあ、一緒に入るのは構わないけど、変なことはダメよ?」
「えー、イチャラブしようよ。恋人なんだし」
「温泉は一応他の人も使う公共施設なんだからダメ」
 そう言いながらもセレアナは思う。
(……とは、言ってもセレンに求められたら断れないわよね)
 自分もセレンのことが好きなのだから。きっと流されてしまうと。
「よーし……セレアナもノリ気みたいだしさっさとペンダント見つけようっと」
「…………そうね」
 ごきげんになったセレンに付き合いながらセレアナは思う。こうして自分たちはずっと過ごしていくんだろうと。



「…………翠、行っちゃったわね」
 ペンダント探しを手伝うことになった及川 翠(おいかわ・みどり)ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)スノゥ・ホワイトノート(すのぅ・ほわいとのーと)徳永 瑠璃(とくなが・るり)の4人。翠が穂波から聞いてきたから手伝うことになったわけだが、その翠と言ったらペンダントの形とかも聞かずに走りだしていってしまった。どこに向かって走っていったのかミリアにも分からない。
「……翠ちゃん、行っちゃいましたねぇ〜」
 のんきにスノゥは言う。
「ふむふむ、3つのペンダントさんを揃えるのが目的なんですね? 揃えたら何か起こるんでしょうか? 楽しみです!」
 瑠璃は翠がいなくなったのも気づかずにペンダントがどんなものかと興味津々だ。
「……瑠璃を見習って、翠を気にせず探しましょうか。穂波さんには鍵の件でお世話になったし少しでも力になりたいわ」
「ですねぇ〜。気にせずさがしましょうかぁ〜」
「……って、あれ? 翠さんはどこ行ったんですか?」
「……ワンテンポ遅いわよ瑠璃」
 はあとため息をつくミリア。翠の無限倍くらいましでも手のかかるのは翠以外にもいてその面倒を見るのはやっぱりミリアだった。
「……とりあえず、穂波さんを探してペンダントの形を聞きましょう。そしたら村の中で聞き込みをしましょ」
「分かりましたぁ〜」
「どんな材質で出来てるペンダントなんでしょうね。すごく気になります」
 翠のことはすっかり忘れた(忘れたい)様子でペンダント探しの指針を決めるミリアとそれに頷く二人。
(……うん。やっぱり翠と比べたら楽だわ)
 自分の普段負ってる苦労を誰かが負って翠が問題起こさないことを願うミリアだった。

「おかしいの! この家の壁壊れないの!」
 ハンマーで廃屋の壁を壊そうとした翠はそう言う。
「ペンダントを見つけないといけないのに困ったの」
(……何をどうしたら壁を壊すことがペンダント探しにつながるのかしら?)
 その様子を面白がりながら見ているのは最後の魔女。『理の魔女』と呼ばれる存在だった。
「こうなったら最終必殺技なの!」
 おおきく振りかぶってハンマーを壁に叩きつける翠。
(……『物が壊れない』って法則にしてるのに壁壊しそうな勢い。いつの時代も理を超えるのが契約者なのかしらね)
 面白いと魔女は思う。
(と言っても本当に超えられる契約者なんて稀だけど……あの子はどうかしらね)
 面白い観察対象を見つけたと魔女は思う。
「あ、ひびが入ったの! これならいけそうなの」
 喜んではしゃぐ翠。
「……理を超えるかどうかは別にしても飽きそうにない子」
 声を上げて笑うのをこらえる魔女だった。



「ねえクレア。……あれはミナホちゃんが村のために死を求めてた時だったかな? あたしはミナホちゃんの決断に反対して『罪はあたしが背負うし、皆に何べんでも謝る』って感じのことを言ったよね?」
 レオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす)はニルミナスの上に浮かぶ空を見上げながらクレア・ラントレット(くれあ・らんとれっと)にそう聞く。
「……はい。あの時のレオーナ様は確かにそうおっしゃいましたよ」
 しんみりとしたレオーナに少し戸惑いながらもクレアはそう返す。
「今でもミナホちゃんへの友情や愛情や百合……もとい真剣に不純な思いは変わらないんだ」
「いえ、レオーナ様。言い直せてませんからね」
 結局いつものレオーナったとクレアはため息をつく。
「というわけでミナホちゃんのため、穂波ちゃんのためペンダントを見つけたいんだけどクレア、どうしたらいいかな?」
「……全部わたくしに丸投げですか」
「えへへ……頼りにしてるよクレア!」
「もう……レオーナ様は本当に変わらないんですね」
 そう言いながらクレアは思う。レオーナはきっとこれから大なり小なり変わっていくだろうと。それでも、この芯の部分は変わってほしくないと。
(……いえ、迷惑をかける部分は是非とも変わって欲しいですけど)
 無理だろうな思いながらレオーナはまたため息をつく。
「村の人や他の探している契約者の方に話を聞きましたけど、森のゴブリン様の中に特別なペンダントをしているゴブリン様がいるという情報がありました」
「流石クレア。早速穂波ちゃんに伝えてこないとね」
「そうですね」
 二人はそうして穂波を探して歩き出す。
「ねえ、クレア。人生、本当に色んなことあるんだけどさ、生きてる以上進むしか無いよね。同じ進むなら俯いて進むより笑って進む方が良い。ミナホちゃんや穂波ちゃんやミナお姉様に…………もちろんクレアも。可愛い女の子たち皆のため、あたしは最後まで笑って突き進むよ」
「……はい。レオーナ様。あなたはそうして進んでください」
 その背中はわたくしが支えますからと、クレアは心の中で思うのだった。