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「ただいまー! セイ兄、買い出し行ってきたぜ」
 森崎 駿真(もりさき・しゅんま)キィル・ヴォルテール(きぃる・う゛ぉるてーる)が、年の瀬の買い出しから戻ってきました。
「おかえり、駿真、キィル。頼んでいた物はたりたかな? 寒かっただろう、すぐお茶を用意するね」
「あ、セイ兄のお菓子あるんだ、楽しみ♪」
 出迎えてくれたセイニー・フォーガレット(せいにー・ふぉーがれっと)の言葉に、森崎駿真が喜びます。
「はー、もう外は寒ぃな。早く淹れてくれよ。さっさと暖まらないとだぜ」
 ストーブに直行して暖まりながら、キィル・ヴォルテールもお茶を急かします。
「こっちの下拵えもちょうど区切りがつくから、お菓子も用意してゆっくりしようか」
 そう言うと、セイニー・フォーガレットが、温かいお茶と一緒に、切り分けたリンゴパイを持ってきました。
 三人で炬燵に入り、お茶を飲んでまったりとします。
「今年ももうすぐ終わりだからかな。なんか、こうしてゆっくりしてるといろんなことを思い出すな」
 ずずずずっとお茶を啜ってから、森崎駿真が言いだしました。
「思い出深いこと? オレなら、やっぱ駿真たちと会ったことだろ」
 きっぱりと、キィル・ヴォルテールが言いました。
「オレは、聖少女たちと旅に出たこととかも思い出すな」
 森崎駿真が切り出しました。以前、ネラヴィオラたちと共に、聖少女たちを捜す旅に出たことがあります。
 もともと大陸各地への興味はあったのですが、あんなふうにそれらを巡る旅に出ることになったのは、ネラやヴィオラたちと出会ったことが一番大きかったのかもしれません。まして、名前をつけたからといって、この歳でお父ちゃんって呼ばれるなど、思ってもいませんでした。
「ホント、冒険の幕開けだ! ってくらいにしか思ってなかったのにな。想像してたのよりも、もっとわくわくした。もちろん、大変なことも多かったけどさ。でも、いろんな人と会って、知って、やっっぱりわくわくしたな」
「駿真がそうであったように、あの旅は自分にとっても未知との遭遇だったな」
 セイニー・フォーガレットが、森崎駿真に同意しました。
「それ以前に、兄と呼ばれるなんて、思ってもいなかったけれどもね。駿真に、セイ兄と呼ばれて、兄のように慕われるのは、とてもくずぐったい感覚だったけど」
「オレが会うよりも前から知ってるってズルいよな〜。ズルじゃないけど、やっぱズルい」
 ニコニコと笑いながら、キィル・ヴォルテールがセイニー・フォーガレットをつつきました。
「でも、今ではそれがあたりまえで、キィルも共にいる今の関係がとても自然なもので。本当に縁というのは不思議なものだね」
「ああ、そうだな。これからも、よろしくな、二人共」
 セイニー・フォーガレットの言葉に、森崎駿真があらためて頼みました。
「おう、こっちこそこれからもよろしく頼むぜ」
 キィル・ヴォルテールが、ドンと胸を叩いた拍子に、炬燵の上の湯飲みが倒れそうになり、三人は揃って、慌てて湯飲みを両手で押さえました。その仕種が、まったく同時でしたので、誰からともなく笑いがもれ、三人は仲良く大声で笑いだしました。