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リアクション
第13章 AfteWorld_新たな一歩
イルミンスール魔法学校の特別訓練教室。
ここは、祓魔師育成するための特別講義の部屋。
命を尊び、悩み苦しむ人々のために尽くす心。
まずそれを分からないものは、この扉を通ることはできない。
今日、新任の講師がやってくると聞き、生徒たちは“一体、誰がくるのだろう?”と予想しあっていた。
ガヤガヤと騒がしい扉が開かれ、シン…と静まりかえった。
静かな教室に靴音が響き、その講師は生徒たちの顔を順番に見る。
その威圧的にも見える顔つきに、彼らは思わず息を呑んだ。
「これから出席を取る。カードにそれぞれ、受けた日付等を書くように」
新任の講師はそう言うと、前の列にカードを配り歩く。
「先生ー、担当講師の名前を書く欄がありますが、お2人の名前は…?」
「シィシャ・グリムへイルです。どうぞよろしくお願いします」
「―…グラルダ・アマティー。2度と言わないから、覚えておきなさい」
バンッと名簿を机に置き、今年受け持つ生徒たちの顔をもう1度見る。
表情はないものの、まだシィシャ先生のほうが優しそうだと生徒一同そう感じたのだった。
「祓魔師の仕事は甘くない、遊び半分で学ぶなら今すぐ出て行け」
その言葉にまた静まり返ってしまう。
「せ、先生〜。ちょっと厳しくありませんか?」
「そうね。生ぬるい考えの者には、難易度の高い任務は与えられないとでもいっておこうかしら」
「え〜」
「アンタ…授業だからってなめきっているわね?」
軽口を叩く生徒に苛立ち、キッと睨みつけた。
「当然、死ぬかもしれない任務もある。足を引っ張れたら全滅に繋がるのよ」
「グラルダ。あの生徒は必要ないかと」
「えぇ、アンタが言うならそうね。出て行きなさい」
扉の向こうを指差し、この教室に相応しくないと烙印を押す。
「いや、あのっ」
「2度言わせるな。行け!」
ダンッと足を踏み鳴らすと、1人の女子生徒は泣きながら出て行ってしまった。
入門の心だけでなく彼女の教室で教えを受けるには、仲間の足を引っ張るような性格もふるい落とされるのだ。
この件で、優しいと思ったシィシャ先生も実は鬼怖い、と噂が広まることとなる。
「アンタたち。アタシたちのこと、怖いと思っている?」
威圧的な眼差しにびびりきった生徒たちは頷くでもなく、口を閉ざしたままだった。
要するに“怖い”ということなのだ。
だが、彼女にとっては好都合であり、女だからってなめてかかってくるやつには、もとより容赦しない。
「では、授業を始める。分からないことがあれば、聞くように」
一見親切に教えてくれる態度なのかと思えるが…。
裏を返せば“授業中に説明したことは聞くな、しっかり聞いていればものだ”ということ。
手習いで扱う魔道具について、グラルダが黒板に書いていく。
「祓魔を行うためには、必ずスペルブックを用いること。ただし、これだけでは祓えない」
「はーい先生。じゃあどうやってやるんですか?」
「スペルブックに記された章を使うことで、祓うことができるわ。最も祓う力が高い章は、哀切の章よ。ただ、これだけでは対象の守りが高く、効力が通りにくいことがあるわね」
「なるほど。ふむふむ、ではどうすれば?」
「その時は裁きの章を使う。魔力の抵抗力を下げられるから、その後で哀切の章を使うのよ」
プロジェクターに手習い用の章を映してみせて教える。
「けど、不可視の相手もいるから…。その時は、仲間のサポートが必要になるわ」
教えてやれとシィシャへ視線をやり、それに気づいた彼女は静かに頷き、教材用のペンダントを手元から取り出した。
「こちらが、エレメンタルケイジというものです」
後ろの生徒にも見えるように、スペルブックを退かしてプロジェクターに映す。
「この中に、地球人以外の相手を探知するアークソウル…、不可視の者を目視するエアロソウル、邪気に侵食された精神を浄化するホーリーソウルがあります。これらを祈りを込めて使うことで、それぞれの宝石の力を引き出すことができます…」
「あのー、複数同時に使えますか?」
「はい。ですが、鍛錬を積まないと出来ません」
「えぇっと。例えば、どんなふうに…?」
手探り状態で何も分からず、聞きたいことがいっぱいあるらしく、質問が止まらない。
「そうですね。ある人は探知しつつ、呪いを解除することも行っていました」
「すごいですねー!オレでもできそうですか?」
「それは、努力次第だと思います」
「君ができなら、私もできなくはなさそうですね」
次々と質問している男子生徒の隣にいる、少年のような風体の生徒がくすくすっと笑う。
「な、なんだよ。男同士仲良く学ぼうっていう気ないのかよっ」
「は〜。私が男?面白いこと言ってくれますね。一度、解体されてみますか?」
メガネをきらつかせ、手元でメスを弄びながら睨みつける。
少年だと思った相手は、どうやら少女らしい…。
なんだか受け持った生徒たちは、一癖も二癖もありそうだ。
まるで自分たちが学び始めた頃のように思え、少しだけ嬉しげに口元を笑わせた。
質問攻めの初回授業が終わり、生徒たちが教室を出て行く。
「グラルダ、この初日…どう思いましたか?」
黒板を消しながら今日1日目の感想を聞く。
「まぁまぁかしらね」
「なるほど。まぁまぁ、ですか」
何やら途中で楽しそうな顔をしていたが彼女のことだ、否定的になるだろう。
そう思い口に出さないでおいた。
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