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リアクション
痛みを受け入れてこそ強くなれる
百合園女学院の中では、あまり人を責めるってことが無く、やんわりと横からサポートするという感覚を抱いていたミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)。
教導団で受けられる扱きが嬉しくもあり、どんなカリキュラムが行われるのだろうと楽しみにしていた。
「(他の人に後れを取りたくないけど、トレーニングも限界を感じてた所にこのカリキュラムが来たんだ。これも専門的なところで教わった方がいいという導きだよね。頑張らないと!)」
気合を入れてもう一人の自分が現れるのを待つ。
『ねぇ、あなたは流れに任せて、本当の意味では自分で選んでないよね?』
「え?」
自分とよく似た声が聴こえてくるも、姿は見えない。
『臆病なあたし。自分のわかってる範囲であれば何でもOKって感じなんだけど、自分の知らない所からは逃げたくなる……っていうか実際に逃げてるよね?』
身に覚えがあり過ぎることに言葉が出てこないミルディア。
それでももう一人のミルディアからの言及は続く。
『周りに溶け込めるように、周りと衝突しないようにしていて、本当の自分はどこにあるの?』
『そうやって逃げて、逃げて、逃げて、一体何から逃げてるか分かってる?』
『耳を塞いでこれで解決? 自分で見なければないのと同じ?』
『傷つきたくない? 自分が可愛い?』
『ちゃんと答えなさいよ。逃げずにはっきりと。さぁ!』
突き付けられる言葉の刃。
ミルディアはそれが辛く、痛く、耐える事が出来なかった……。
「ふぇぇぇ〜もぉやだぁぁぁ!」
泣きだし、カリキュラムを止めようと出口を探しだす。
走っても、走っても、走っても、ドアらしいものは見つからない。
「やだよぉぉぉぉ! ここから出してぇぇぇぇ!!」
前を見ずに走るミルディア。
どんっとなにかにぶつかり尻もちをつく。
「痛たた……え?」
自分以外声しかいない空間だと思っていたのに、誰かと衝突したことに驚き、恐怖を抱くミルディア。
視線を上げる事が出来ない。
見えるのは自分の穿いている靴と同じ靴を穿いている脚だけ。
『なにやってるの。逃げる時ですらちゃんと前を見る事が出来ないの?』
「あ、あたし?」
『他に誰がいるの? ほら、立ちなさいって』
手を引かれて立ち上がるミルディア。
『いい? あたしはあなたなの。分かる?』
「う、うん」
『あたしが言いたい事が全然わからない?』
「そんなことない。でも……」
『日和見主義と臆病なのは分かってる?』
「それは、まぁ……」
『流れに逆らえって言ってるんじゃないの。あたしが言いたいのは』
「うん、分かるよ。言われるまで覚悟も出来なかったけどね」
もう一人のミルディアによって受け入れざる得ない状況にされたが、ミルディアは自分が逃げる理由と自分の癖・弱さを自覚と共に受け入れることができた。
「さすが、あたしね。伝えたい事はどんなことをしてでも、伝える所とかさ」
『それがあたし、でしょ?』
「そうだね。ありがと」
どうにか一皮むける事が出来たミルディアが元の部屋に戻って来る。
これからどう強くなっていくかはミルディア自身にかかっている。
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