リアクション
◇ ◇ ◇ 装置が起動され、なにもない空間に鏡が現れる。 鏡に写るルカルカは着ている軍服を徐に脱ぎ出す。 そして、軍服を全て脱ぐと中から白いワンピースが現れる。 「ああ……やはり貴女が来たのね。貴女の存在は自覚していたから……」 ぬるりと鏡から出てくるもう一人のルカルカ。 『国防の為攻撃を命じる、自分も剣を振るう。不本意な命令に従って友人を失った事も有ったよね。金鋭峰と共に歩くという志に邁進する陰で『普通の女の子』は辛い思いもしてる。……それが私よ』 「貴女の言う事も正しいのは良く分ってる。けど、金団長はもっと孤高の道を生きてるわ。人は彼を讃え『成都の英雄』と言うけれど、英雄も人、人は孤独では生きていけない」 まっすぐワンピースのルカルカを見つめると、彼女は鏡を見るように言ってきた。 出てきた鏡には金鋭峰が写り、その隣には軍服姿のルカルカが歩いている情景が写る。 続いて金鋭峰とルカルカが軍服を脱ぎ捨て白い服装の二人が写る。 『本当は誰も殺めたくない。なのに血に染まるばかりの道を選んで、後悔してないの? 一瞬でも普通の女の子を羨ましいと思った事は無いの?』 自分の身体を守るように抱きしめるワンピースのルカルカ。 悲しげにルカルカを見る彼女の服は、いつの間にかまばらに血が点々としている。 「私は彼に普通の青年になろうとは言わないわ。表には出せない部分も共感して、彼と共に生きる。それが彼の負担を減らすすべだと思うから。……参謀長がいつも一緒に居る訳じゃない。彼の眼の届かない時もある。だから私が居る」 『誰かを守るために誰かを不幸にするのは独善だよ。普通の女の子になっても良いのよ?』 「貴女が普通の心が分かる私なら、彼にとっての私たちのように一緒に生きよう」 そっと優しく、それでいてきつくワンピースのルカルカを抱きしめるルカルカ。 「貴女を大切にして一緒に生きていくわ」 『ありがとう』 抱きしめていたワンピースのルカルカはすぅっと消えていった。 気が付くと、抱きしめていた姿勢のまま元の無機質な部屋に戻っている。 立ち上がり、部屋を後にするルカルカの後ろ姿は、どこか以前にも増して凛とした姿であった。 |
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