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【特別シナリオ】あの人と過ごす日

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【特別シナリオ】あの人と過ごす日
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幸せへの誓い

 暖かな春の陽射しが気持ちよく降り注ぐ日。
 百合園女学院を卒業し、社会人となった桐生 円(きりゅう・まどか)は、婚約者のパッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)と共に、空京に訪れていた。
「ボクも、三か月分! 持っていたよ!」
 円が自らの鞄をポンと叩いた。
「……円……」
 パッフェルの目がきらりと光った。
「といっても学生時代に稼いだお金だけど!」
「……それは、円のために……とって、おいて」
 財布を出そうとする円の手をパッフェルが押しとどめる。
「ううん、これはパッフェルのために溜めたお金だから!」
「でも……給料、3か月分の、指輪は……日本の、女の子が受け取るもの……」
「パッフェルだって女の子だしね! ボクもパッフェルに贈りたいんだ」
 しばらく見つめ合ってから、パッフェルはこくりと頷いた。ゆっくりと柔らかに。
「それじゃ、お店に入ろー。どんなのがいいかなー?」
 2人は今日、指輪を選びにやってきたのだ。
 ひとつのお店だけではなく、色々な店に入って、2人で一緒に指輪を見ていく。
「ペアな奴がいいかな?
 ストレートにダイヤがついてる奴もいいよね」
 円の言葉に、パッフェルはうんうんと頷いている。指輪には特にこだわりはないようだった。
「プラチナのペアリングとかいいんじゃない? 二つあわせると意味が有るって感じの」
「意味が、ある……?」
「うん、指輪を合わせると、石がくっつくみたいな」
「それ、いい……円のと、私の、くっついて、ひとつ」
「でしょ。それに、エメラルドとダイヤを合せる感じはどう?
 4月と5月の誕生日石」
「円と、私の……誕生月」
「そう、ボクが5月のエメラルドをつけて、パッフェルが4月のダイヤをつけたら、お仕事で離れてても、近くに感じられるかもって思ってさ。どうかな?」
「それが、いい」
 パッフェルはゆっくり頷いて、円の意見に賛成した。
「じゃ、決定だね」
 2人はオーダーメイドで世界にそれぞれ1つだけの、2つで1つになる、2人のための指輪を作った。

 自室に戻ってからも大忙しだった。
 近いうちに結婚式を行いたいと思っているけれど、まだ招待客も決まっていなかった。
「ボクは友達と、家族呼べればいいかなー。何人ぐらいの会場押さえるべきかな……」
「私は、式は……ティセラとセイニィ、だけ」
 パッフェルは親友と思っているティサラとセイニィだけ呼びたいようだった。
「そっか、それじゃ、式にはボクの家族と、ボクの友人の中で、パッフェルのことも友人と思ってくれてる人を呼ぼうかな。会場はそんなに広くなくて良さそうだね。
 披露宴は会費制にして、パッフェルの仕事仲間の皆も招待できるといいかな?」
 うーんうーんと、円は考えていく。
「あ、そうだ。司会。司会も決めなきゃ……」
「ティセラに頼んでみる? ……2次会は、私側はセイニィに、お願い、する」
「うん、そうだね。パラミタでやるのなら、ティセラに頼めれば……二次会のこっちの幹事は誰だろ。酒乱気味な……とか、ピーマンルーレットとかやりそうな……とかには頼めないな!」
 家族と友人のリストにペン先を置きながら、円は考えていく。
「ん……」
 考えながら両親の名前のところで、円のペンが止まった。
「おとーさまと、おかーさま。パラミタで式挙げても来てくれるかなぁ?」
 円はパッフェルに目を向けた。
「二人で挨拶に行ってたし、大丈夫だよね」
 円がちょっと不安げにそう言うと、パッフェルは「大丈夫」と安心させるように答えた。
「うん。要交渉っと、もう一度地球に挨拶に行かなきゃね。
 二人でさ、その時はボクも頑張っておとーさまに一緒になりますっていうんだ。いままでは、実家に帰た時は情けない感じだったけど、これだけは堂々と言いたいかなーって。
 おかーさまはパッフェル気に入ってたし、絶対味方になるよね!」
「うん。……私も、挨拶する」
 よしっと、円は両親の名前ところに『おかーさまに先に連絡』とメモしておいた。

 次の休みの日には、衣装選びの為に、2人はまた空京に訪れていた。
「パッフェル疲れてない? ロイヤルガードの仕事、大変でしょ? 無理しないでね」
「……大丈夫、円の方が、心配……準備、沢山やってくれてる、から」
「ボクは大丈夫! 忙しいけど楽しいんだ。パッフェルとのビッグイベントだからね!」
 円が笑顔を見せると、パッフェは柔和な表情でこくりと頷く。
「さて衣装衣装?。どんなのがいい? ボクは2人ともドレスがいいかなって!
 髪の色で、パッフェルは紫、ボクは緑とか。髪に合わせて、ボクのスカート短めでも面白いかも」
 セルドレス専門店に入って、2人でドレスを見ていく。
「パッフェルはどんなのがいいかな?」
「私は……これ」
 パッフェルが選んだのは、マーメイドラインのドレスだった。
「パッフェルこういうの着たいんだ……下半身にぴったりフィットするようなのだね」
「……を、円に着てほしい。この、緑の」
「え? ボク? ボクが着るのか……似合うかな?」
「円、足、綺麗だから……似合う」
「そうかな? スタイルは上半身が主に自身無いんだけど」
 ナイのは詰めればなんとかなる。でもあるものは絞っても限界がある。
 ドレスを選びながら、改めてそれに気づかされる。
「ちょっと、高めの、ヒール履いたらいい、かも……歩き難かったら、姫だっこ、する」
「それは照れるな。でも嬉しい……うん、お色直しもあるし、色々選ぶのもいいかも!」
「私は……これ、着る」
 パッフェルが自分が着る為に選んだのは、ロリータ系のふりふりなドレスだった。
「パッフェルらしいなぁ。よし、ボクも同じようなの着よう、色違いで!」
 互いに候補を5着くらい選んで、3着ずつ着ることにした。

 そんなふうに、慌ただしく毎日が過ぎていき――。
 2人の大切な一日が訪れた。

* ? * ? * ? * ? * ? * ? * ? * ? *


「パッフェル、とっても綺麗だよ」
「円も……」
 ドレス姿で、2人は微笑み合っていた。

「必ず、ボクは、円・シャウラはパッフェル・シャウラを今まで以上に幸せにします」

 円の誓いの言葉が、会場に響いた。
 そして。

「わたし、パッフェル・シャウラは……円・シャウラを、この世の誰……よりも、愛し……幸せにする、と誓い……ます」

 パッフェルの誓いの言葉が、会場に響いた。
 互いの声は、互いの心にも響き渡っていた。

 円はパッフェルの手をとって、左手の薬指に指輪をはめた。
 同じように、パッフェルも円の手をとって、左手の薬指に、指輪をはめる。
「これからもよろしくね」
 円の言葉に、パッフェルは強く頷いた。

 その次の動作は、パッフェルからだった。
 円のベールを上げて、彼女の両肩を優しく掴んだ。
 円もパッフェルのベールを上げて、微笑む。

(パッフェル、大好きだよ、絶対幸せにする)
 二人の顔が近づいて……。
(円、愛してる……幸せに、するわ)
 熱く強い心の籠った、優しい誓いのキスを交わした。