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女王危篤──シャンバラの決断

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女王危篤──シャンバラの決断
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蒼空学園生徒

 校内放送を聞き、校庭に大勢の生徒たちが集まってくる。皆「何事だろう?」と不思議そうだ。
 生徒を集まりを確かめ、演壇に涼司が上がった。
「今日は、生徒の皆に頼みたい事がある!
 詳しい話は、彼から聞いてくれ」
 校長に代わって演壇に上ったのはウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)だ。すれ違う瞬間、涼司がウィングに「頼むぞ」とささやく。ウィングは落ち着いた調子でうなずいた。
 段上に立ったウィングは蒼空生たちを見回すと、雄弁に話はじめる。
「急な集会でありながら、集まってくれてとてもうれしく思う。
 私が誰か知らない者も多いと思うので、まず自己紹介させてもらう。
 私は蒼空学園OBのウィング・ヴォルフリートだ。
 今日は皆にお願いがあって、山葉校長に無理を言って集めさせてもらった。
 今、新たな女王が誕生しようとしていることは皆の知っての通りだと思う。
 だがその裏で、今の女王アムリアナ・シュヴァーラの命が尽きかけている。
 彼女はその命を賭して、闇龍の脅威から我らを救ってくれた。
 彼女を救ってこそ、この恩に報いることができるのではないだろうか。
 そして何より、アムリアナ・シュヴァーラ、いや、ジークリンデ・ウェルザング(じーくりんで・うぇるざんぐ)は蒼空学園の生徒であるということを忘れてはならない。
 私は卒業しても、心は蒼空学園の生徒のままいるつもりだ。
 故に問う、仲間を見捨てることが許されるのか?
 否!
 蒼空学園の生徒なら知っているはずだ。
 我々が困難に陥った時に救ってくれたのはいつも仲間だということを。
 仲間こそが我らの一番の宝ではないのだろうか!
 我らはその宝を失ってはならないはずだ!
 ジークリンデを救うためには、彼女を助けたいという熱い思いがたくさん必要だ!
 ゆえに、蒼空学園の全生徒から彼女を救うためのメッセージを集めたい!!
 皆の力で、彼女を助けるんだ!
 だからみんな、協力してくれ!!」

 ウィングの熱弁に、集まった生徒達から歓声や賛同の声があがる。歓声はなかなか消える事がなかった。
 その後、生徒達は色紙や模造紙、千羽鶴など思い思いの方法でジークリンデへのメッセージを記していく。ウィングの心を打つ演説により、蒼空学園からのメッセージは大量になりそうだ。

 加夜もみずからの想いを、デジタルビデオカメラに吹き込む。
「誰もが貴女の事を心から心配し、意識が戻るのを待っています。暗闇の中に居る貴女に皆の想いが光となり届きますように……。私は貴女に生きていて欲しいんです。どうかどうか死なないで下さい。貴女の笑顔が見れる日が来ることを信じています。でももし貴女が違う道を望むのなら、その中に救いがあるのなら、私は……。この先幸せな日が訪れることを願います」
 加夜はメッセージを吹き込んだ、カメラのメディアにそっと手をあて、祈った。
(どうか女王の心を救えますように。その心までもが暗闇に覆われませんように)