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【選択の絆】常世の果てで咆哮せしもの

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【選択の絆】常世の果てで咆哮せしもの

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【11】


 大きく陥没した地面の上に、探索隊の飛空艇がやってきた。
 メルヴィアの指揮の下、氷の下に埋まってしまった隊員たちの救助が行われている。
「うおおおおおおおおおおおおっ!!」
 テノーリオは氷の塊を持ち上げ、下に挟まれていたフランツを助け出した。
「無事か?」
「お気に入りのティーセット以外はね」
 氷の下で粉々になったポットやカップを見つめ、彼は肩をすくめる。
「そんな減らず口が叩ける内は大丈夫そうだな」
 こちらでは青白磁花音がヨルディア花音を抱え、地面から、ぬおおおおっ! と出てきた。
「まったく山葉の奴、とんでもないことをしよる。怪我はしとらんか、ヨルディア?」
「え、ええ。わたくしは大丈夫ですけど、青白磁様の変装が……」
「ぬぅ? うおおおおっ、中途半端に顔面だけ変装が解けとる!?」
「青白磁さん……」
「……とっとと着替えてこいよ」
 詩穂と垂は冷ややかな視線を送った。
「……私たちの声は彼には届かなかったんでしょうか?」
「そんなことはないさ」
 暗い顔をするレイチェルに、氷の塊の上に座ったトマスは言った。
「ミカエラに攻撃せずに立ち去ったのを見ただろう。後ろの光にあれだけ敵だと言われたのにね」
……彼も本当は気付いているんじゃないでしょうか?
 身体に付いた雪を払いながら、魯粛は言った。
 泰輔も同じ気持ちだ。
「立ち去る時、山はんがポツリと言っとったのが聞こえたよ。すまん……って」
「じゃあなんで……」
「それでもすがりたいんだ。わずかな可能性に、ね」
 そうトマスは言った。
「あとはあの光が花音ではないと証明出来れば、あいつの目も覚めるか……」
 垂は遠くの空を見つめた。
「ライゼ……頼んだぞ」

「メルヴィア少佐!」
「……どうした?」
「裏椿少尉が山葉涼司の件で新たな発見があったと。飛空艇でお待ちです」
 伝令の報告を受けて、メルヴィアは飛空艇に戻った。
 ところ狭しと電子機器の並んだ電算室には、理王と屍鬼乃、それから凶司が待っていた。
 理王はメルヴィアに敬礼……ではなく両手を広げて迎えたので、メルヴィアはぴしゃんと鞭で打った。
「ぎゃあああっ!!」
「……何の真似だ? 鞭が欲しかったのか?」
「ち、違う」
 ――しまった。無意識に腕を広げてしまった。
 女性をお姫様抱っこすることに執着する彼は自然とメルヴィアにもそれをしてしまったようだ。
 難儀な性癖である。
「湯上がさっきの戦闘で得たデータなんだが、これを見てくれ」
 画面に映し出されたのは涼司。先ほど説得が行われた時に記録した映像だった。
「ここです。あの光が声を発した瞬間……裏椿少尉、涼司さんの背中を拡大してください」
「……なんだこれは?」
 光の中に影が見えた。はっきりと。人影だ。
「どうやらこれがあの光の正体のようだ。ただ、驚くのはまだ早い。ここからが見せたいものだ」
 解析エンジンで光量を落とし、より鮮明にその姿を映し出す。
「!?」
 そこに映っていたのは“小柄な男性”だった。
 所謂おっさんに属するはげ頭の人物が、ぴったりと涼司の背中に貼り付いていたのだ。
 しかも、何故か全裸で。
「な、なんでしょうね、これ……」
 凶司はポリポリと頬を掻いた。
 過去のデータから類似する事例を調べたが、該当するものはなかった。まったく謎の生命体である。
「おまけにあれだけの戦闘の渦中にいて無傷であることから推測すると、この……おっさんには一切のダメージが通らないようです。正直、対策がまったくわからないのですが、どうしましょう、少佐……?」
 記録した凶司にもわけがわからないのだから、メルヴィアにわかるはずがない。
「こ、光条世界め、どこまで私を翻弄する気だ……!?」