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地球に帰らせていただきますっ! ~2~

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地球に帰らせていただきますっ! ~2~
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リアクション

 
 
 
 言わなければならないこと
 
 
 
 アメリカの富裕街、アサートン。
 セシル・レオ・ソルシオン(せしるれお・そるしおん)が足を止めたのは、広大な庭園に囲まれた赤レンガの大豪邸の前だった。
「ついに帰ってきちまったな」
「わぁ、ここがセシルの実家? すごい大豪邸……」
 その規模に水晶 六花(みあき・りっか)は驚いた。セシルが財閥の御曹司だと聞いてはいたけれど、いざその育った屋敷を目の前にすると、ちょっと気後れしてしまう。けれど、ここに六花が会わなくてはならない人がいる……。
「まぁ、いい加減顔見せねぇと、セレンとセリスには心配かけてるしなぁ……うし、行くぞ六花」
 気乗りしない様子ではあったけれど、セシルは六花を伴って屋敷に入っていった。

 執事を捕まえてセレンとセリスの居場所を聞いてみると、案の定、2人とも年末年始も関係なく忙しいらしい。呼んでくれと頼んでしばらく待っていると、もの凄い勢いでセリス・レイ・ソルシオンが駆け込んできた。
「セシル! この馬鹿、パラミタへ行くって連絡したきり顔も見せずに何をしていた! セレンと私がどれだけ心配してたと思ってる!」
 入ってくるなりの三つ子の姉の怒鳴り声に、セシルはうわ、と声をあげる。
「全くこの馬鹿弟は。こっちの身にもなってほしいね」
 セリスからやや遅れて部屋に入ってきたセレン・レサ・ソルシオンも、微苦笑含みでそう言う。
「悪かった、長い家出にして悪かったって!」
 親の七光りで生きるのはいやだと家出して、セシルは自活の道を選んだ。そのままパラミタに渡ってしまったから、家族には随分と心配をかけてしまったことだろう。
 慌てて謝ると、怒鳴って気が済んだらしいセリスは、まあいいとすぐに目を細めた。
「元気そうだな。父上母上は今、日本へ出張中だ、明日には帰るから待ってやれ。お前を心配してたからな」
「ああ。……かれこれ1年か? パラミタでも元気に楽しくやってる。大事な人も出来たしさ。今度連れて来られるようにする」
 そう言うと、セシルは今日帰宅した目的のうちのひとつ……セレンに聞かせなければいけない話に取りかかった。
「……六花」
 名を呼んで促すと、六花はセレンの前に出た。色彩がないだけで、六花は数年前のセレンと瓜二つだ。
「こんにちは。水晶六花と言います。……カイ。カイザードに、この名をつけてもらいました」
 カイザードは六花の前契約者かつ婚約者……そして、行方不明になっていたセレンの恋人、だった。
 記憶喪失の状態でパラミタに行ったカイザードは六花と契約。カイザードがおぼろげにセレンを覚えていた為か、六花はセレンから色彩をなくした姿となった。その後、六花とカイザードは将来を誓い合うも、カイザードが戦死。六花はパートナーロストの影響もあって眠りについたが、その後、セシルと出会ったことによってその姿のままで目覚め、契約。何もかも受け止めて生きていく決意をしたのだった……。
 パラミタでのカイザードのことを、その戦死を含めてセレンに告げると、六花は涙をこぼした。
「ごめんなさい……彼を守りきれなかった。きっと貴方の代わりに、僕がカイを守らなくちゃならなかったのに……」
「……泣かないで」
 セレンは切なくも優しい微笑みで六花の手を取った。
「君は僕の代わりなんかじゃない。カイだって、僕の幻影としてじゃなく、君自身を愛していたはずだよ」
「セレンさん……」
「ありがとう六花。君がいてくれたおかげで、きっとカイは幸せだたと思う。カイのこと聞かせてくれてありがとう。これで僕も前に進めそうだ。……六花、君は今、幸せかい?」
 セレンに問いかけられて、六花は頷いた。
「……はい。カイと同じように……それ以上に、僕を愛してくれる人が今はいます。だから……」
「そう、それは良かった。今度うちにも連れておいで」
 セレンの言葉に、はい、と六花はやっと笑顔を浮かべた。
「よし、めでたしだな」
 2人のやりとりを、口を挟まずに見届けたセリスが大きく頷く。
「長旅で疲れただろうから、今日はゆっくり休んでくれ。セシル。今度はこっそり家出するんじゃなく、堂々と出て行くんだぞ。いきなり部屋から姿を消してる、なんてのはもうごめんだからな」
「うん。俺、正式に独立する。そのために帰ってきたんだ。父さんも母さんも、今なら納得して出してくれるって信じてる。パラミタでやりたいこと、やるべきことがあるんだ。だから、さ」
 まっすぐに顔を上げて決意を口にするセシルを、セレンもセリスも温かく受け止めるのだった。