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地球に帰らせていただきますっ! ~2~

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地球に帰らせていただきますっ! ~2~
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リアクション

 
 
 
 目指せサッカーチーム?
 
 
 
 クリスマスイヴを家族で空京で過ごした後、セージ・アーダベルトたちは一足先にロンドンの実家に帰っていった。
 その後、数日遅れてヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)カシス・リリット(かしす・りりっと)『カシスの日記』 カーシェ(かしすのにっき・かーしぇ)ウィリアム・セシル(うぃりあむ・せしる)が地球へ帰省し、先に帰っていたセージたちに出迎えられた。
 セージの後ろからはオレガノ・リリットがおっとりと顔を覗かせる。
「お帰り。オレガノもカシスに会いたがっていたから呼んでおいたぞ」
「カシス君が帰ってくるとセージさんに聞いて、お邪魔させていただきました」
「オレガノと会うのは久しぶりだね。パラミタに行って以来だったっけ」
「ええ。ずっと顔が見られなかったので心配していたんですよ。元気でしたか?」
「ああ勿論だよ」
 そう答えた後、カシスはさっきからオレガノの視線がカーシェの方に行っているのに気づいた。
「オレガノはカーシェに興味津々みたいだな」
「はい。カーシェ君って本当にカシス君の小さい頃そっくりなんですね、かわいいなあ。懐かしいです」
 オレガノはカシスの従姉だが、幼い頃からカシスと一緒に育った為、姉のような存在だ。なので子供の頃のカシスのことは良く知っている。
「似てるっていっても外見だけだぞ」
 外見はカシスを幼くした姿なのだけれど、カーシェは明るく馬鹿正直な性格をしている。聞かれると良いことも悪いことも全て口にしてしまうだけでなく、自分の本体に書かれたカシスの日記の内容を悪気なく暴露してしまったりもする。その辺り、素直になれないカシスとは正反対だ。
 皆の視線が自然と自分に向いたのを感じると、カーシェはにこっと笑い。
「こんにちは!」
 カーシェはオレガノともセージとも初対面だ。顔には隠しきれないわくわくが表れていたけれど、良い子はきちんと挨拶するものだからと、はっきりとした言葉で言う。
 そんなカーシェの頭を、オレガノは可愛くてならないように撫でながら尋ねた。
「この子はカシス君とどういう関係なんですか?」
「あー……魔道書と持ち主……じゃなく、親子、だよ。当事者的にはね」
「うん! カーシェの親はカシスとヴィナだよ」
 答えるカーシェをオレガノは微笑ましく眺めた。
「そうなんですか」
 そのまま玄関で話し込んでしまいそうな皆を、セージが促す。
「こんなところで立ち話もなんだから、まずは中に入れ。リアも待ちかねているからな」
「そうだな。ゆっくり中で話そう」
 話したいことは山ほどあるからと、ヴィナもそれに同意した。
 
 
 暖かな居間に入って行くと、遊んでいたエーギル・アーダベルト(えーぎる・あーだべると)ヴィリーア・アーダベルトが入ってきた皆に気づいて、嬉しそうに手を振った。
「おかえりー。まってたんだよ」
「パパ、ママ、おかえりなさい。カーシェははじめまして! クリスマスイヴにパパとあったら、わたしにもおとうとができたってきいて、カーシェにあうの、たのしみにしてたんだ」
「ありがとう。カーシェもおねえさんなリーアに会えて、とっても嬉しいだよ!」
 皆でまた挨拶をかわし合うと、ソファに落ちつく。
「やはりイギリスはいいものですね」
 ウィリアムはくつろいだ様子で、しばらくぶりのイギリスの空気を楽しんだ。
「わたしはカシスママのおひざでおはなしするから、カーシェはセージママのおひざでおはなしをするといいとおもうの」
 ヴィリーアがそう言ってカシスの膝に乗ると、セージはカーシェを呼んで自分の膝に座らせた。
「そう言えば、ハロウィンパティシエコンテストで8位を取ったんだったな。おめでとう」
 セージはそうねぎらうと、話をオレガノに振った。
「オレガノからヴィナに伝えるべき言葉があるそうだ」
「オレガノさんから俺に? カシスにじゃなくて?」
 意外そうなヴィナにオレガノは、はい、と答えると、カシスがヴィリーアたちと話していてこちらに意識を向けていないことを確かめてから話し出した。
「初めは心配だったけど……カシス君はあなたと一緒にいられるようになってから、とても幸せそう。だから改めてですけど、カシス君のこと、これからもよろしくお願いします」
「ええ、勿論です。カシスのこと、任せて下さいね」
 真面目な顔で頼むオレガノに、ヴィナも口調を改めてしっかりと受けた。
「よし、そっちの話はきちんと出来たな。では僕からも報告だ。――今、4ヶ月なんだ」
「4ヶ月?」
 あまりに普通に告げられたので、ヴィナはその意味を捉えかねて首を傾げる。先に理解したのはウィリアムの方だった。
「ご懐妊ですか。めでたいことですね」
「懐妊って……4ヶ月……ええっ?」
 驚いたヴィナの声にカシスも気づく。
「セージ、その重大発表は俺もびっくりだ」
「ああ、この前うっかり教えるのを忘れてたんだ。悪いな、ヴィナ、カシス」
「ちょっと待って、何で電話で教えないの?」
「こういうのは、会ったときに直接伝えたいじゃないか。それに、子供なんて来る時が来れば産まれるしな」
 けろっとして答えるセージに、そういうところも可愛いんだけど……とヴィナは苦笑する。
「よかったねカーシェ。ママがおとうとかいもうとをプレゼントしてくれるんだって」
 ヴィリーアに言われたカーシェのテンションは一層跳ね上がった。
「ビッグニュースなの! ふふ、リーアとカーシェ、おねーさんとおにーさんだね!」
「えへへ、うれしいな。カーシェ、これからもなかよくしようね」
 カーシェとヴィリーアが手を取り合って喜んでいる様は可愛らしい。そんなことを思いながらウィリアムは2人を眺めていたのだが。
「おにーさんはやっぱりでっかく構えるべきだよね」
 と、セージの膝からすべり下りたカーシェがやってきて、ウィリアムににこにこと頼む。
「ということで、ウィリアムに肩車してもらってでっかくなろうと思うだよ」
「私が、ですか?」
 子守の経験のないウィリアムは戸惑った。けれど、ヴィリーアもやってきて、
「わたしもいっしょにあそびたいの」
 とウィリアムの手を引く。
「どうしたら良いのか解りませんが……私でよければお相手しましょう」
「だいじょうぶ。わたしがあそびかたをおしえてあげるから」
「じゃあまず肩車からだよ」
 勝手が分からないことなので少し困惑してしまうけれど、この無邪気で愛らしい2人となら大丈夫だろうと、ヴィリーアとカーシェに連れられて、ウィリアムは居間から退室して行った。
 
 ウィリアムとカーシェ、ヴィリーアが居間を出て行くと、ヴィナは改まってセージに言った。
「びっくりし過ぎて礼を言うのが遅れてごめん。セージ、ありがとう。カーシェに弟妹を早速プレゼントすることになったね」
「まあとにかく、おめでとう。いや……俺もありがとう、か。カーシェのことも認めてくれてありがとう」
 魔道書であるカーシェを子供として自然に受け入れてくれたことに対しても、カシスは礼を言う。
「あたり前だろう」
 セージからの返事は予想通りのものだったけれど、
「まあ、俺が言いたかっただけだ、気にすんな」
 とカシスはすっきりした顔で言った。
「来年で3人の父親か。悪くないね」
 しみじみと言うヴィナに、で、とセージは身を乗り出す。
「3人目の母親はどうした?」
「い、今頑張ってます」
 ヴィナは心の中でルドルフに、くしゃみをしないでくれと祈った。
「まだ? お前、手が遅いんじゃないのか?」
「ぐふっ……」
 痛いところを突かれたけれど、それでも心配してくれていることは伝わってくる。
 セージとカシスじゃなかったら、もう1人妻を迎えたいなんて言ったら自分は死んでいるかも知れない。いや、本妻がセージでなかったら、カシスを2人目の妻にした時点で殺されてるに違いない。
 実際は逆に、カシスを諦めようとしたら半殺しの目に遭わされたのだけれど。
「心配してくれてありがとう。俺って凄く恵まれてるよな。だから頑張って2人だけでなく子供たちも幸せにしないとね」
 仲睦まじい妻たちと子供たちに感謝をこめて、とヴィナが言えば、セージはまた押してくる。
「子供も3人になるんだ。妻も早く3人になるようにしろ」
「セージ、そこから少し離れようよ! まだ俺の片思いなんだから!」
 思わずヴィナが叫ぶと、カシスが口添えする。
「そう急かしてやるなセージ。こいつなりに頑張ってるからさ。もうちょっと待ってやろうじゃないか」
「カシスが言うならそうするか」
 そんな風に話し合ってくれているカシスとセージを眺め、ヴィナは広がり続けている家族の輪をつくづく幸せに思うのだった。