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こどもたちのおしょうがつ

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こどもたちのおしょうがつ
こどもたちのおしょうがつ こどもたちのおしょうがつ

リアクション


○     ○     ○


「うんしょ、うんしょ」
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)のパートナーの、外見6歳のセシリアちゃん(セシリア・ライト(せしりあ・らいと))が、大きな雪の玉を転がしている。
「んー、んーっ」
 大きく大きくなった玉は、セシリアちゃんの力では動かなくなる。
 手袋をしているけれど、手もとっても冷たくて、セシリアちゃんはいったん雪の玉から手を離して、手にはあ〜と息を吹きかけて温める。
「まっしろ。いきもまっしろ。おもしろい〜」
 はあ〜と吐き出した息が白いことも、セシリアちゃんには楽しくて仕方がなかった。
「これもらってもいい? もうちょっとでできるから!」
 雪をたくさん集めていた外見6歳のえりすちゃん(茅野瀬 衿栖(ちのせ・えりす))が、セシリアちゃんにお願いをする。
「うん、ひとりじゃうごかなくなっちゃって。てつだってくれる?」
「もちろん、いっしょに作ろっ」
 セシリアちゃんとえりすちゃんは一緒に大きな雪の玉を押して、えりすちゃんが集めていた雪の小山に運んだ。
「まん中をほって、カマクラにするんだよっ。カマクラ中であったかいのを食べるとすごいおいしいんだよっ」
 えりすちゃんは、大きなスコップでまん中を掘っていく。
「ボクもてつだうから、できたらすこしあたたまってもいい?」
「もちろん! こっちもいっしょに作ろ〜」
「うん!」
 セシリアちゃんは、両手でまん中を掘って、バケツの中に雪を入れては、別の場所に集めていく。
「このどかしたゆきでも、ゆきだるまつくれそう。あとでつくるんだ!」
 セシリアちゃんは既に沢山の雪だるまを作り上げている。ちっちゃいものや、おおきなもの、うさぎさんの姿をしたものなど、このあたりにいろいろと並んでいる。
「こっちのゆきもつかってね」
 外見4歳のミナちゃん(ミナ・インバース(みな・いんばーす))が、雪をどさっと置いていく。
 すぐ傍で、穴を掘っているようだ。
「ありがとうっ。大きな雪だるま作るからね!」
 セシリアちゃんがお礼を言う。
「ううっ、さむいよー」
 ミナちゃんは厚着をしているけれど、がくがく震えていた。
「もうすぐカマクラできるから、そしたら中あたためるから、入りにきてね」
 えりすちゃんがそう誘うと、がくんと首を縦に振って、ミナちゃんは自分のお仕事に戻ることにする。
「さむいけど、がんばってつくるんだもん。ほってほってほりまくるんだもん!」
 ミナちゃんはいくつも穴を掘っていた。
 ここには、パートナーのイナ・インバース(いな・いんばーす)と一緒に来たのだけれど、イナは用事が出来てしまい、学校に帰ってしまった。
 だから、一人でこつこと頑張っている。
「ええっと、ほったあと、どうするんだっけ? まあいいや、とにかくほるんだもん! ……っとあっ!」
 つるんと滑ったミナちゃんは、自分で掘った穴の中におっこってしまう。
「いったーい!」
「大丈夫か?」
 見回りに出ていた、青年の姿のままのイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)が気づいて駆け付ける。
「ほら、気をつけなきゃダメだぞ」
 ミナちゃんの小さな体を、イーオンは持ち上げて、雪の大地の上に下す。
「ううっ、だいじょうぶだもん!」
「それにしても……こんなに穴ばかりにして、なにをするつもりだ?」
「ないしょだもん!」
 ミナちゃんは大人のイーオンには説明をせずに、作業を続けていく。
「しかしな……」
 イーオンは眉をひそめる。
 彼女が落とし穴を掘っているのだということくらいは、イーオンに分かった。
(ちょっと深すぎるな。分からないよう、少し埋めておくか)
 イーオンは他の子供が怪我をしないよう、落とし穴を少しだけ埋めておくことにする。
「雪遊び、楽しいとは思うが、他人に怪我をさせてはダメだぞ」
「わかってるもん」
 ミナちゃんは返事をしながらも、落とし穴をほってほって掘りまくっていく。
「うあっ!」
 そしてまた、自分ではまってしまう。
「1人で悪戯役、ひっかかり役の2役だな」
 イーオンは苦笑しながら、また助けてあげるのだった。
「はぎゃわぐ……」
「あ、ひっかかった、ひっかかった〜!」
 助けられたミナちゃんが、穴に引っかかった外見7歳の男の子クドくん(クド・ストレイフ(くど・すとれいふ))を指差して、笑みを浮かべる。
「こら、やっぱり悪戯目的だったか。ダメだぞ!」
 イーオンはミナちゃんを叱った後、クドくんに手を差し出す。
 クドくんはそんなに小さくはないので、穴から這い出すのは難しくないはずだけれど……なんだか反応がない。
「どうした?」
「ぐぅ……」
 雪に突っ伏した状態で、クドくんはなんと眠っていた。
「こんなところで眠ったら危険だぞ」
 イーオンはすぐに、クドくんの体をつかんで、穴の外に引っ張り上げた。
「あ……うん、ありがとぉ」
 ふわあっと笑みを浮かべて、クドくんは歩き出した。
「ゆきだるま、カマクラづくり……おまえさんたちなんか楽しそうなことやってんじゃないですかー。おれもまぜ……」
 てくてくあるくクドくんだが。
「おい、そこ……」
 ズボッ。
 また穴に嵌ってしまう。掘っただけで、まだ蓋もしていない落とし穴なのに。
「ぐぅ……すぴぃ……」
 そしてまた、雪に顔を埋めて、眠ってしまう。
 寝かしておくわけにもいかないので、イーオンはまた引っ張り出す。
「あ……うん、ありがとぉ」
 ふわりと笑顔を浮かべて、クドくんは歩き出す。
「カマクラ……楽しそうなことやってんじゃないですかー。おれもまぜ……」
 ぱたり。
 今度は何もない場所で倒れて、またクドくんは眠ってしまった。
「おとしあな、ねむってるこ……」
 通りかかった、外見6歳のあずさくん(佐伯 梓(さえき・あずさ))が、紙にペンを走らせる。
「足下に気を付けてな。何してるんだ?」
 クドくんを案じながら、イーオンはあずさくんに優しく問いかける。
「うん。たからさがししてるんだよ」
 にこっと笑って、あずさくんは何かを書き上げると紙を2つに折りたたんだ。
「皆楽しそうですね」
 パシャッと音が響く。
 青年の姿のザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)が、新しい紙を取り出すあずさくんや、落とし穴の中で、ぐーぐー眠っているクドくんの姿をカメラで写していく。
「こおってる、いけ、いこー」
 あずさくんは、ザカコに笑みを見せた後、落とし穴に落ちないよう注意しながら、池の方に向かっていった。
「……っと、あ、こら。君より小さな子が落ちたら危険だから、これいじょう掘ったらだめですよ」
 あずさくんを見送った後、ザカコはこっそりまた穴を掘りだしたミナちゃんを注意。そして、カメラを構える。
「掘ってる姿撮って、学校の先生に渡しちゃいますよー」
「それはやだもん……。わかったうめる」
 ミナはしぶしぶ雪を穴に入れていく。クドくんが眠っている穴から。
「こらこらこら」
 笑いながら、ザカコがミナちゃんを止める。
「そだ、ゆきのたまころがしたら、うまるもん! ゆきだるまつくろ〜」
「いっしょにつくろ!」
 ミナちゃんはスコップを放り出すと、セシリアちゃんと一緒に、雪だるまを作ることにした。
「ここはお任せいたしますね」
「ああ」
 ザカコは、イーオンにこの場を任せると、クドくんを持ち上げてテントの方に向かうことにする。
「ゆきあそび、楽しい、じゃないです、かぁ……むにゃむにゃ……」
 クドくんは夢の中で遊んでいるようだった。 
「んしょ……あ、でもこんなにおおきいともちあがらないかも」
 ミナちゃんと一緒に雪を転がして、大きな大きな雪の玉を作ったセシリアちゃんは、ちょっと困ってしまう。
 固めた雪の土台の上に置きたいのだけれど、2人で持ち上げるのは無理そうだ。
 だけど、せっかく大きくしたのだから、崩したくはない。
「あの上でいいんだな」
 大きな腕が伸びてきて、その大きな雪の玉がふわっと浮いた。
 イーオンが持ち上げてくれたのだ。
「ありがと」
 セシリアちゃんは目を輝かせて、お礼を言い、ミナちゃんと微笑みあう。
「これでよし」
 イーオンが土台の上に大きな雪の玉を乗せると、セシリアちゃんはとてとて近づいて頭となった大きな雪が落ちたりしないよう、周りを固めていく。
 そして、目や口を書いて一番てっぺんにバケツをかぶせる。
「かんせー!」
「かんせいだもん!」
 セシリアちゃんとミナちゃんは手を叩いて喜び合う。
「いつまでものこってほしいな」
 セシリアちゃんはそう言った直後に。
「くしゅん」
 大きなくしゃみをした。
「たくさんあせかいちゃった。てもつめたい」
 お家にもどらなきゃダメかなと思ったその時。
「みんな〜。おもちもらってきたよっ。おしるこもあるよー」
 カマクラを作っていたえりすちゃんが、焼きたてのお餅や、お汁粉が入った鍋や、使い捨ての食器を持って戻って来た。
 テントで分けてもらったのだ。
「おとながいたら、かまくらでやいてもいいっていわれたんだけど……」
 えりすちゃんは、焼いていないお餅も持っている。
 じーっとイーオンの方を見ると、イーオンは軽く笑みを浮かべた。
「俺が見ていよう。好きにやるといい」
 イーオンの言葉に、えりすちゃんは「ありがとー」と、ぱっと顔を輝かせる。
「カマクラの中であったかいのを食べるとすごくおいしいんだよっ。はいってはいって〜」
 えりすちゃんは、セシリアちゃんやミナちゃんをカマクラの中に招いた。
 それから借りてきたコンロや網を使って、お餅を焼いたり、お汁粉を温めたりしてお友達に配っていく。
「ありがと。あったかい。カマクラの、ぽかぽかだね」
 セシリアちゃんがお椀で手を温めて、ふわりと微笑む。
「ぐ〜。のびる〜」
 ミナちゃんが口に入れたお餅は長〜く伸びた。
「のどにつまらせないように、ゆっくりべてね。たくさんあるからね〜」
 えりすちゃんはそう声をかけながら、お餅やお汁粉を器に乗せていき。
「どうぞ〜」
 イーオンにも差し出したのだ。
「ありがとう」
 ほほえましげに、子供達を見守りながらイーオンは器を受け取った。
 とてもとっても、暖かかった。