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バレンタイン…雪が解け美しき花びら開く…

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第9章 バレンタインバクハツしろー!?監獄の地獄

 アキラ 二号(あきら・にごう)は男4人組というどっからどう見ても、盛り上がりそうにないメンツで遊園地へやってきた。
「なんていうか侘しいのぅ・・・」
「バレンタイン?フンッ、リア充なカップルを爆破してやるじゃんっ」
 彼の傍にいる血濡れの サイ(ちぬれの・さい)は、恋人クラッシュでもしようかと企んでいる。
「はぁ・・・なんていうか。くだらないイベントの日に来なくたっていいだろ」
 今日は部屋にひきこもっている予定だったブラッキュ・百十一世(ぶらっきゅ・ひゃくじゅういっせい)が不機嫌そうに顰め面をする。
「ふむ、これが遊園地というものか?」
 初めて遊園地にやってきたダークネスト 闇夜(だーくねすと・やみよ)は珍しそうに辺りを見回す。
「二号もブラッキュもつれない顔をするな。せっかく来たんだ、楽しまなきゃな」
 つまらなそうな顔をする2人にへらっと笑いかけるが、ため息ばかりついている彼らはベンチに腰をかけて項垂れてしまった。
「では行くとしようか。むっ?行かないのか?―・・・おーい。あっとゆう間に日が落ちて終了時間になってしまうぞ!?」
 興味がなさそうな2人からブラッキュの方へ視線を移し、このままではどこも行かないままなのかと焦る。
「おぉっ、こんなところにマップが!さて、どんなアトラクションがあるか見てみるか」
 出入り口付近のカゴの中にあるのを見つけてパッと手に取る。
 それなら自分が行く場所を決めてやろうと、園内のマップを開き面白そうなところがあるか探す。
「―・・・監獄ミキサーというものがあるな?」
「監獄ミキサー!?名前が俺を誘惑しやがる!乗ろうじゃん!なぁ!?」
 そのネーミングを聞いたサイが反応し、目の前のいちゃつく者たちを放って彼の方にかっとんでいく。
「入りたいなら入ればいいだろ」
 ブラッキュはそんな場所に行きたがるなんて趣味が悪いやつだと言いだけにサイを軽く睨んだ。
「ん、そこに決めたんだな」
 やっと行くところが決まったのかと二号がベンチから立ち上がる。
「―・・・な、何?みんなで入るのか?」
「じゃあそこで待っているか?」
「うっ・・・。ここにいても寒いからな・・・」
 1人で出入り口前にいるのかというふうに言うサイの言葉に、ブラッキュは寒空の下でぽつんと取り残されてしまうかと思い、仕方なしについていくことにした。
 海外の刑務所のような雰囲気の建物に入ると4人は全員、足枷をはめられてしまいサイ以外、カシャンッと手錠を従業員たちによってかけられた。
「な・・・手錠まで!?」
 入るなりいきなり手錠をかけられたことに、闇夜はぎょっとした顔をして焦る。
 まだ重さを操作していない軽い足枷までは通常モードだ。
「これじゃあ自由に動けないじゃないか・・・っ」
 しかし両手まで拘束するとは知らされてはいないと騒ぎ立てる。
「隠れステージにはサプライズがあるみたいだから、その1つなんじゃ?」
「何だそれは・・・」
「面白そうだから俺が決めたんだッ」
「(あなたの仕業かーーーーーっ!!?)」
 ブラッキュは顔に青筋をビキッと立てて、心の中で叫びサイに怒りをぶつける。
「しかも何で牢屋に入れられるんだ・・・っ」
 早く出せといわんばかりに鉄格子を掴みガッタンガッタン揺らす。
「中は少し広いみたいじゃん?」
 そんな彼を他所にサイはウキウキとした表情で周囲を見回している。
「壁にボタンがあるけど、これを押すのか?」
「待て、明らかに怪しいだろ、それっ」
 サイが赤いボタンを押さないようにブラッキュが止めようとする。
「シャイベ?押せってことか」
 しかしサイは彼の言葉を聞かず、その下にあるプレートに書かれている和訳を読む。
「隣にもう1つボタンがあるな」
「シャイベン ズィー エス ニヒト ビッテ?こっちはその逆みたいじゃん」
 闇夜に言われて見てみると、青いボタンの下にもプレートがあり、そこには和訳で押すなと書かれている。
「どっちを押してみようか!?」
「ふむっ、迷うな・・・」
「ちょっと二号、止めないのか?というか、どっちもやばいんじゃないか?」
「俺はどっちでもいい」
「なっ、そんな・・・」
 ブラッキュが助けを求めるように言っても、どうでもいいという感じで二号に軽くあしらわれる。
「やっぱり興味をそそられるのは押せって書いてある方じゃんっ」
「押すな、絶対にどっちも押すな。両方トラップというオチしか見えない・・・っ」
「でも押してみないと分からないじゃん?」
「や・・・やめろっ」
「押させて、押したいんだ!」
 ボタンを押そうとしたその時、ブラッキュに腕を掴まれてしまう。
「闇夜は青い方を押してみるとしよう」
「あなたも何をやっているんだ」
 背筋が凍るような身の危険を察知したブラッキュが闇夜を止めようとする。
「ブラッキュ、何をするかっ!と・・・言いつつ、ポチッっと」
「ぁああっ」
「床から鍵が出てきたな?」
 それを拾った瞬間、ブラッキュが闇夜に気を取られている隙にサイが赤いボタンを押してしまう。
 ボタンに反応して後ろの壁がズズッと床へ吸い込まれるように消え、牢獄内に地鳴りのような音が響き始めた。
 ゴゴゴォオオッ。
「なんだ、地震でも起こるのか・・・?」
 ブラッキュは顔から冷や汗を流して辺りを警戒する。
「おっ、床が動いたじゃん?」
 地震ではなくそれはサイが押したボタンによって、床が動き始めた音だった。
「ど・・・どこへ連れて行かれるんだっ」
 ベルトコンベアよりも数倍速く進み、ブラッキュは危うく尻餅をつきそうになる。
 ガッタンッと床が止まると、今度は20cmの四角い床が並ぶ部屋にたどりき、床と床の間は50cmから数mの幅がある。
 その下にはバチバチと電光が走っている。
「これは何の鉄人レースだ・・・」
「ブラッキュ、それを言うならお笑い番組の間違えではないか?」
「お笑い芸人でもここまでヤバそうなのはチャレンジしないと思うのだが」
「いや、彼らならやる。絶対に!」
「何だその力説は。というかどこからそんな確証がっ」
 キラリと目を輝かせる闇夜の姿にブラッキュは思わず声を上げる。
「床はホワイトとブラックのカラーの2種類か。ブラックを踏まなければいいみたいだな。よし、闇夜は行くぞ」
 壁に書かれたブラッドカラーの恐怖書体の文字を見て確認し、シュタッとジャンプする。
「ブラックを踏んでしまったようだ。―・・・ぎゃぁああ、イッったぁああ!!」
 トラップの床がいっきに電流ゾーンへ下がっていく。
 身体に害がない程度だが、静電気で痺れたような痛みが闇夜の全身を駆け巡る。
 悲鳴と共にそのゾーンに飲まれてしまい、どこへ消えてしまったのか姿が見えなくなってしまった。
「1人消えた!?」
「じゃあ次は俺だ。飛び移りやすいやつばかり選ぶと、行き止まりの如く飛び移りづらい床のところに行ってしまうみたいだな」
 驚くブラッキュを他所に二号は何事もなかったかのように床を飛び移る。
「おっとこっちはブラックか、ホワイトは隣だな。ふう、なんとか渡りきれたか。ん、またボタンがあるな?」
「押しちゃったらいいじゃんっ」
「よせ、これ以上何か起こったら・・・」
「もう遅いな」
 サイの言葉に思わず二号が壁のボタンを押してしまう。
「くっ、間に合わなかったか」
「そんなのがあったら押したくなるものじゃん?」
「だからって・・・」
「それは何故か。そこにボタンがあるからだッ!!」
 抗議しようとするブラッキュの言葉を遮り、サイはキランッと目を輝かせて名言を吐いた。
「まぁ押したのは俺じゃないしぃ」
 悪びれる様子もなく床を飛び移りながら向こう岸につく。
「あ、これを押すと5分以内後、床が動くらしいじゃん?しかも後、10秒後みたいだ」
「は・・・酷い、サイ・・・っ」
 涙目になりながらブラッキュは必死に床へ飛び移る。
「うわ、床が!不味い、ブラックを踏んでしまった。―・・・くうっ」
 うっかりトラップの床を踏んでしまい、それを踏み台にホワイトの床にガシイィイッと手をかける。
「もう1っこボタンがあるみたいじゃん?」
「よせ、もう押すなっ」
「えへ・・・押しちゃった♪」
「あなたという人は・・・」
 そのトラップでホワイトの床が全てブラックに変わり、ブラッキュは渦潮のように荒れ狂う電流ゾーンへ飲まれてしまった。
「ここは・・・檻の中のようだな。―・・・あ、二号と・・・サイが来たようだ」
 トラップばかり発動させるサイを恨めしそうな目で睨みつける。
 ブラッキュと闇夜は落ちてしまった罰ゲームで、防弾ガラスのケースの中に閉じ込められている。
 彼らが部屋に入ってきたとたん、“囚われた2人を助けるためには、問題に答えてカギをゲットしてください。さもないと彼らは罰ゲームをくらうことになります”と、アナウンスが流れた。
「箱の中に紙が入っているみたいじゃん。これに書かれていることを答えればいいのか?―・・・答えは、向日葵ッ!」
「いや、それは夏の花だろ。まぁ、向日葵でいいか」
 二号がぽつりというと、不正解の音が響いた。
「問題はなんだったんだ?」
 謎めいた回答を聞いた闇夜は首を傾げて彼らを見る。
「ん・・・。ハムスターが好きな食べものが取れる花は何?っという問題ではなく春の花といえば、という問題だったな」
 闇夜の視線に気づいた二号が教える。
「ふむ、引っ掛け問題か」
「どうしてそんな単純な問題に引っかかるんだ・・・」
「間違ったらどうなるかと思ってさッ」
 顔を顰めるブラッキュにサイが爽やかな笑みを向ける。
「そ、そんな・・・そんなことでっ」
「ブラッキュ、上から溶岩が!」
「―・・・!?」
 大声を上げる闇夜の声に反応して見上げると、ギュイーンと天井が開き熱気を放ちながら、2人がいるケースの中に溶岩が流れ込んできた。
「ふぐぁあぁ、熱い、熱い・・・っ」
「身体が燃えてしまうのではないか!!?」
 それはソリットビジョンのため身体に外傷はないが、だがしかし・・・熱湯並の温度を体感する激熱の溶岩だ。
 数秒で消え去ったがブラッキュは恐怖と苦しみで気絶してしまった。
「どこにいったんだ?」
 二号がケースを覗き込むと、いつの間に闇夜だけそこからいなくなっている。
 “闇夜様以外、チャレンジ失敗です。罰ゲームを発動させていただきます”。とアナウンスが流れる。
「1人で逃げたようじゃん。やるな、闇夜」
 最初の部屋で青いボタンを押して脱出用の鍵をゲットした闇夜は、先に脱出してしまった。
 しかもそれは1人分なため、4人で争わないように彼なりに気づかってのことだ。
 サイはその状況を冷静に分析しニヤリと笑う。
 罰ゲームが発動したことで200kg以上あるんじゃないかと思えるほど足枷と手錠が突然重くなる。
「ケースの下に脱出口があるじゃん。闇夜は鍵を使ってそこから出たのか」
 床に残された足枷と手錠を見て言う。
「よし、ケースを退かすぞサイ」
「おっけー。って、無理すぎるじゃん!」
 ブラッキュごとそこから退かそうとするが、ケースが重すぎてまったく動かない。
「なんか床が下に下がってきたような・・・。そのまま落ちるのかぁああ!?失敗したけど、それも面白ーーーっ」
 ぐるぐると回転しながら床が急降下していく。
「―・・・ひきこもっていればよかった」
 はっと目を覚ましたブラッキュはその光景に諦めたように涙を流した。
「む・・・やっと出てきたか。まぁ、それなりにスリルはあったな♪」
 気を失ったブラッキュを抱えた二号と、トラップで遊びまくってもっと元気になったサイを見た闇夜がフッと微笑んだ。