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第13章 友情

「よぉ、理子」
 宮殿に戻った理子に声をかけたのは、ロイヤルガードの葛葉 翔(くずのは・しょう)だった。
「あ、翔か、良かった」
 理子はほっと息をついて、微笑みを浮かべる。
「良かった? 何が」
「うん、ちょっとお忍びで出かけてたからさ、叱られるんじゃないかって思って」
「まあ、お前も息抜きは必要だしなー……」
 言って、翔は庭園へと理子を誘い出した。
 理子は大きな袋を抱えたまま、喜んで翔についていく。
「面白いもの買ってきたんだ、一緒に食べようぜ」
 翔は花壇近くの長椅子に理子を連れて歩いて、並んで腰かける。
「なんか、久しぶりね? そういえば、翔とも出かけたことあったわよね」
「そうだな。一緒に映画とか行ったっけな」
 当時とは違い、理子はいまや女王のパートナーだ。
 一人で外を出歩くことなど、出来ないだろう。
「理子、俺はお前の事を友達だと思っている」
 翔の言葉に、理子はちょっと不思議そうな顔をして「うん」と答えた。
「だからこれからも俺はお前の事は『理子』と呼び捨てにする」
「何を今更……。呼び捨てにしてって、前にも言ったわ」
「まあ、改まって言うことじゃないけどさ、一応、今も変わらないってこと言っておこうと思ってな」
「確かに私は、女王のパートナーだけれど。翔も今は、女王の騎士だしね。却って近くなったのかもしれないわ、私達」
 そんな理子の言葉に、翔は軽く笑みを浮かべた。
「とはいえ、公の場では一応、様付けをしないといけないけどな」
 翔が砕けた表情で言うと、理子も笑みを浮かべる。
「あぁそうだ」
 そして翔は、袋の中から箱を1つ取り出した。
「このチョコ、疲れを取るらしいんだ。理子も色々疲れてるだろ、沢山買ったから1個やるよ」
 それは、材料にミカンが使われたチョコレート、みかんチョコだった。
「ありがとー。美味しそう!」
 笑顔で、みかんチョコを受け取った後、理子も持っていた袋の中から、小さな袋と、小さな箱を取り出した。
「私からも、翔にプレゼント!」
「……2つ?」
「うん、こっちは、仲間のロイヤルガードへのプレゼント用。こっちのは、友達への友チョコ。だから、翔には2つね!」
「そっか。じゃ、両方頂いておく」
 翔は2つ共受け取って、笑みを浮かべた。
「みかんチョコ食べて、お互い元気いっぱい頑張りましょう」
 立ち上がり、理子が翔に手を差し出した。
「ああ、頑張ろうな」
 手を掴んで立ち上がり、翔は理子の頭をぽんと叩いた。
 くすりと笑い合い、雑談をしながら歩いて、一緒に仕事に戻ることにした。