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マレーナさんと僕(3回目/全3回)

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マレーナさんと僕(3回目/全3回)

リアクション

7.ドラゴン襲来!〜キヨシを守ろう?〜
 
 ――受験票は、どうやら管理人さんが見つけたようだ。
 
 そんな下宿生達の情報から、キヨシはマレーナに会う為、下宿中を探しまわっていた。
「マレーナさん……諦めてたまるか!!」
 だが、増改築が繰り返された夜露死苦荘の中は、果てしなく広い。
 
 ■
 
 刹姫・ナイトリバー(さき・ないとりばー)と、マザー・グース(まざー・ぐーす)はドラゴンの迎撃に向かう予定であった。
 その途中で、キヨシと出くわした。
「げ! お前らは!!」
 過去の出来事がよみがえる。
 
 酒乱にさせられた、出会い。
 首狩り族の中に放り込まれた、2回目。
 
「美人でも、命あってのものだよ、なぁ」
 キヨシは涙目で深い溜息を吐く。
 ここはそうっと、退散した方がよいのではかろうか?
 だが、実のところ、刹姫達はキヨシの事はどうでもよいのであった。
「あなたは行くべき場所に行きなさい。
 さすれば、貴方の『闇』に対する答えは出るわ。さあ!」
 かくして、キヨシは心置きなくマレーナ探しに精を出すのであった。
 
「さて、気高き者(ドラゴン)が何の用なのかしら?
 ここを壊そうというのなら、あえて立ち塞がらせてもらうわ」
 キヨシと別れた刹姫達は、レッサードラゴンと対峙する。
 
 せいっ。
 
 奈落の鉄鎖でドラゴンをひっぱる。
 小型とはいえ、ドラゴンの力は絶大だ!
 だが不意打ちに、一時地に落ちる。
「サキちゃん、援護するわ!」
 マザーがペットの狼達を放った。
 野生の蹂躙でけしかける。
 こうして、一匹のドラゴンが、彼女達の前に倒された。
「今まで黙っていたのに、急にどうしたのでしょうか。
 ここを壊されるわけにはいきませんし……」
 すると、ドラゴンはイライラした調子で語り始める。
『異端ノ臭イ……スル!
 パラミタヤ契約者デナイ者……我々ノ敵……ッ!』
「異端の臭い?」
 マザーはハッとして、振り向いた。
「ま、まさかっ!!」
「彼の『闇』。こんなことになるなんて!!」
 刹姫達は下宿に目を向ける。
「後田キヨシ……」

 ■
 
「うん、散々な目にあってきた奴から、何もされないと。
 返って調子が狂うぜ!」
 キヨシはやでやでと思いつつ、その実内心はひやひやしながらマレーナと受験票を探す。
「受験票を探したら、そのついでに管理人さんも退避させなくっちゃだよな! やっぱ」
 歩さんとの約束だしね?
 頬を赤らめる。
 
 だが、本当の「散々な目」はまだこれから出くわすこととなる。
 
「お、お前は!!
 湯島茜!!!」
 
 今までの惨憺たる過去が、走馬灯のように……(以下省略)。
 とにかく、キヨシにとって、よい人物でないことだけは確かだ。
「そんなこと言っちゃって、いいの?」
 キヨシの部屋で。
 彼を待ち構えていた湯島 茜(ゆしま・あかね)は、ふふんと鼻先で笑った。
「その、手に持っている物は、何なのかなぁ〜?」
「う! このプレゼント箱は! いつの間に!!!」
 キヨシは小脇にプレゼント箱を抱えていた。
 携帯電話で、自分のプロフィール欄を確かめた。
『湯島 茜様からのプレゼントです』と、確かに記載がある。
「『龍使いの鞭』?」
 きいたことのない名だ。
 でも女の子からプレゼントを贈られて、喜ばぬキヨシではない。
 しかも相手は(色々難有りなのかもしれないが)、美少女に違いはない。
「ありがとう!
 お前って、本当はいい奴だったんだな!
 わーい、あけていいっすか?」
「うん、いいよ!」
 キヨシは開けた。
 中には立派な鞭が入っていた。
「でも、何で今回なんだ?」
 ふと嫌な予感がして、茜を見る。
 パートナーのエミリー・グラフトン(えみりー・ぐらふとん)がいない点も、何やら気になる。
「うん、だから、受験の為だって!」
 茜はいやな笑いを浮かべた。
「これって、ドラゴンライダーへのクラスチェンジに必要なものなの」
「で? 僕にどうしろと?」
「ドラゴン従えれば、一芸入試で入れるんじゃないかな?
 空大に!」
「僕が行きたいのは、『工学部』ですから!
 関係ないっす!」
 キヨシは涙目で、後ずさる。
「つまり、これで奴らと戦えってことだろう?」
「隠しても無駄だよ、キヨシ」
 茜の目がスウッと細まる。
「真の能力を見極める、絶好のチャンスだからね!」
「だから、僕は!
 単なる『一般人』だって! 何度も言っているだろう!!!」
 
 なにやら、外が騒がしい。
「はて、ドラゴンとは違うような……」
 キヨシは鞭を……それでもしっかと抱き締めて廊下に出た。
 窓から見下ろす。
 そこには、エミリー・グラフトンの姿がある。
 周囲に、早受験用から戻ってきたらしい、首狩族の姿がある。
 彼らに。
「キヨシ君がドラゴンライダーになって、
 ドラゴンの首を干すらしいであります」
 吹聴し回っているではないか
「じょ、冗談じゃない!」
 キヨシは一目散に廊下を駆けて行くのであった。
 
 首狩り族の中で、キヨシの株が一時的に上がったことは、言うまでもない……。
 
 ■
 
「はぁはぁはぁ……やっぱり戻ってくるんじゃなかったなあ」
 廊下の端で、呼吸を整えつつ、キヨシは心底後悔していた。
「そ、そうだ!
 空京大学で受験票を再発行してもらおう」
 素直に事情を話せば、大丈夫そうな気がする。
「ていうか、どうして今まで思いつかなかったんだろう?」
 それは、彼が「人並みの頭」ですらないからなのだが。
「うん、方針は決まったし。
 まだ、『遅刻』だけど、間に合うかな?」
 淡い希望を抱きつつ、キヨシは空大に行くため、玄関を目指す。
 
 だが、下宿を狙うドラゴン達に、未だ衰える兆候はない。