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マレーナさんと僕(3回目/全3回)

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マレーナさんと僕(3回目/全3回)

リアクション

8.ドラゴン襲来〜【防衛】で頑張ろう!〜

 下宿に残った契約者達の活躍により、老朽化激しい「夜露死苦荘」の建物は、何とか持ちこたえている。
 だが、いかんせん、相手の数が多すぎる。
 単身でバラバラに戦っていた下宿生達は、グループを組んで効率よくことに当たり始めた。
 
 ■
 
 【防衛】の結成である。
 
 ■
 
 その内訳は以下のようなものである。
 
 ・迎撃役(後衛)
 志方 綾乃(しかた・あやの)

 夢野 久(ゆめの・ひさし)
 ルルール・ルルルルル(るるーる・るるるるる)
 佐野 豊実(さの・とよみ)
  
 ・駐車場の防衛役
 神楽月 九十九(かぐらづき・つくも)
 装着型機晶姫 キングドリル(そうちゃくがたきしょうき・きんぐどりる)
  
 ・主に支援役
 東園寺 雄軒(とうえんじ・ゆうけん)
 バルト・ロドリクス(ばると・ろどりくす)
 ミスティーア・シャルレント(みすてぃーあ・しゃるれんと)

「行ってらっしゃいませ!」
 六韜が、空飛ぶ魔法↑↑をかけて、全員を宙に浮かせた。
 戦闘開始! である。
 
 ■
 
 先陣を切ったのは、久ら3名だった。
 
「私、夜露死苦荘に住んでないんだけどさ。
 関係ないんだけどなぁ……」
 
 ルルール・ルルルルルはぼやきつつ、光る箒に跨る。
 実際彼女は、出掛けの受験生達を見送り位しよーかなーくらいのものだったのだ。
「巡り会わせが悪いわ……何でこんな運が無いのかしら?」
「日頃の行いだろ」
 久の突っ込みは、軽く流される。
「ま! 巻き込まれたもんはしょうがないわよね!」
 サッと、戦場の空へと消えてゆく。
「君は、やはりマレーナ君の為なんだね?」
 ふふっと佐野豊実は久に目を向ける。
 久は仏頂面のまま答えた。
「それもある」
「それも?」
「夜露死苦荘も、マレーナも……全部順調だ。
 多分、上手くいってるんだ。
 ナラカからドージェが見てたら、まあ嫌な顔はしねえだろう程度にゃな」 ふっと息をつく。
「……それを、こんな所で台無しにされて堪るかよ!」
「なるほどね、君らしいよ、久」
「そういう豊実は、どういう風の吹きまわしだ?」
「私かい?」
 海神の刀を抜き去った。
「久と同じだよ。
 それに、迫り来る龍の群なんて、是非間近で見たいからねえ。
 絵の肥やしだ」
 ヒロイックアサルト『感性特化職の直感とセンス』を使う。
 その隣で久は、スッと息を吸った。
「俺等の家だ!
 ドラゴンなんぞに傷一つ入れられて堪るか!
 ブチのめして追い返すぞ!!」
 夢野久は、荒ぶる力で全員を鼓舞する。
「行くぜ!」
 牧神の猟犬達とドンネルケーファーを荒野に放つ。
 自分はヒポグリフにのって、風に乗った。
 
 獣達は野性の蹂躙で、ドラゴン達を追いたてる。
 追い詰められたところで、
「うおおおおおおおおおおっ!」
 ヒロイックアサルトで、気合い一発!
 両手でショットランサーを振り回し、レッサードラゴンを一体ずつ蹴散らす。
 久が斬りそこねた敵は、豊実の刀の錆となった。
 抜刀術出来り込み、受太刀で攻撃を防ぐ。
 空中戦とはいえ、見事な太刀筋だ。
「もうひと頑張りよ! 久、豊実」
 気まぐれにやってきたルルールが、リカバリで時折傷を癒していくのだった。
 
「さ、後ろも見てこようかな?」
 光の刃が、ドラゴン達に振りそそいだ。
 我は射す光の閃刃。
「そろそろお疲れさんだよね?」
 彼女は、玄関前の少女に向かう。
 
 ■
 
 その少女――志方綾乃は後方に位置し、主に魔法でドラゴン達を撃退していた。
「ドージェさんは、五万の龍騎士にたった一人で対峙したんですよね?」
 優しそうな目が、ふと悲しげに細まる。
「今までずっと私は、
 誰かに守られて、
 誰かを見殺しにして……
 ……でもそんな私をマレーナさんは、許してくれる、と言って下さった」 だから、とティアマトの鱗を構える。
「……今度こそ! 私がマレーナさんを守る番です。
 この生命に代えてでも!」
 
 だが、その心の中に、キヨシの姿はなかった。
 えー、ペンは剣よりも強いから、ドラゴンなんて目じゃないでしょう?
 つまりはそういうことらしい……。
 
「マレーナさんの為に、行きます!」
 天のいかずち。
 一匹のち、ドラゴン軍団に空飛ぶ魔法↑↑で急接近。
「久さん達は、少し休んでいてください!」
「わりぃ、志方」
 そうしてルルールからヒールを施される間、綾乃はティアマトの鱗でドラゴン達を浅く斬りつける。致命傷となるような傷ではない。
(私だって、訳も分からずに戦いたくは有りませんから……)
 その為に、下宿に被害が出てしまう、ギリギリのラインまで参戦を控えていた彼女である。
 だが不思議な事には。
 綾乃達の手を逃れたドラゴン達は、綾乃に向かうことなく下宿をひたすら目指すことだった。
(どうして? 今攻撃しているのは、私達のはずなのに……)
 だが、ドラゴン達は綾乃に目もくれない。
「志方ないですねぇ」
 綾乃は天のいかずちで行く手を阻むと、大急ぎで戻って、下宿の防衛に努めるのであった。
 
「綾乃、お疲れ様!」
 ルルールが綾乃の傷ついた体を、ヒールで癒して行く。
「お次は、前線の支援部隊ね!」
 
 ■
 
 【防衛】の前線部隊は、夜露死苦荘の先にある荒野にいた。
 ドラゴン達は未曾有にいる。下宿の前ばかりだけではないのだ!
 
「まったく、どうしてこうなったのですか?」
 ブツブツとぼやくパートナー達の脇で、精悍な男――東園寺雄軒はぼさぼさ髪をかく。
「うーん、『正義の味方』ですか。
 いやはや、柄でもないですがねぇ……」
 今回は「特別に」ということらしい。
「では、頑張っていきましょう」
 雄健はミラージュを展開し、ドラゴン達の目をごまかす。
 そのままガーゴイルに乗って、空を駆けた。
 ヒプノシスとその身を蝕む妄執で、徐々に弱らせていく。
「援護しよう」
 バルト・ロドリクスが六蓮ミサイルポッドを、三連発で撃ちこんでいった。
(撃ち切ってしまったか……斬り込むしかないな)
 龍鱗化で装甲を硬くしてから、海神の刀を構えた。
 スウェーで回避しつつ、雄健の下へ駆け込む。
「囲まれたな……」
「計算づくですよ?」
 フォースフィールドで力場を展開し、防御に備える。
 直接攻撃用に粘体のフラワシを用意した。
 バルトは金剛力を使った後、疾風突きでカウンターを決める。
「危ない!」
 雄健はヒプノシスを使う。
 眠りに落ちていくドラゴンに、バルトはやはり疾風突きでトドメを指すのであった。
「だが、小さくともドラゴン。
 3体くらいが限度のようですね?」
 光術の目くらまし。
 ドラゴンが迫っていたらしい。
 一体のドラゴンはあまりの眩しさに両目を閉じる
 雄健はヒプノシスを食らわすと、光術の主に礼を述べた。
「ありがとうございます、ミスティーア」
 巨大ハリセンを携えた、ミスティーア・シャルレントは、えっへんとふんぞり返る。
 本来は、ナーシングやヒールなどの回復担当役だ。
「よいのですか? こんなに前線に出てきても?」
「ええ」
 ミスティーアは毅然として。
「雄軒様とバルトがいるなら大丈夫っ、怖くないわ!
 何も怖く……」
 そこで周囲を眺めて、あわわと口をふさいだ。
「うんっと、とにかく! 本気出すわよー!」
 そして後方へと下がるのだった。
 
 まもなく、ドラゴン軍団がふたたび3名に襲い掛かる。
 
 ■

「そういえば、イコンの駐車場はどうなったのかしら?」
 ルルールは方向転換して、イコンの駐車場目掛けて移動する。
 
 ■
 
 新設されたばかりのイコンの駐車場。
 そこには、建設者の神楽月 九十九(かぐらづき・つくも)装着型機晶姫 キングドリル(そうちゃくがたきしょうき・きんぐどりる)が、ドラゴン軍団達を待ち構えていた。
 
「生き物は駄目だって、あれほど言いましたのに……」
 ドラゴン達を見据えて、九十九が叫ぶ。
 ……何か、盛大な勘違いをしているようだ。
「良いですよ、そちらがその気なら……こちらも『実力行使』をさせて頂きます!」
 栄光の刀を構える。
 本来護衛の体術は、ドラゴン達を退かせるための攻撃をなりうる。
 ドラゴンは、あくまで下宿を目指す。
 ここは通過点ゆえ、数は少ない。
 だが、九十九1人で手に負える数でもない。
「……こんな時の為にも、『用意は整っています(おります)』からね!!
 一匹たりとも駐車場へは入れませんよ!!!」
 九十九はすばやく準備をはじめた。
 ガードラインを発動する。
 キングドリルの防御力があがる。
「全門開放一斉射撃、目標ドラゴンの集団!!」
「了解だ! 九十九」
 キングドリルが六連ミサイルポットを向けた。
 その数、8つ!
 九十九の手際のよさもより、次々と発射されていく。
「フハハハハ……スプレーショットのミサイルアメアラレ。
 避けられるモノならば避けてみるが良いわっ!」
 
 ぶるぅあぁぁぁぁぁぁ!!!
 
 ドラゴンの集団へと一斉掃射を開始された。
 2頭ほどが犠牲になる。
 あとのドラゴンは、コースを変えて駐車場から遠ざかった。
 
「ふぅ……これで一安心ですね」
 九十九は額の汗を武具って笑った。
「『親しき仲にも礼儀あり』禁止事項はちゃんと守りましょうね☆」
 そうして、1人意気揚々と引き上げていくのであった。
 抜け殻のようになって転がっている、キングドリルの姿を残しつつ。

 ■
 
 ……彼等ツワモノ達の活躍もあり、レッサードラゴンの集団は、大いに数を経らしてゆく。
 キヨシがマレーナと再会できたのは、間もなくのことだ。
 
 ■
 
「え? じゃ、受験票は……」
「ええ、菫さんに渡してしまいましたから」
 マレーナは困り果てて、キヨシを見つめる。
「今頃は、空大の試験会場だと思いますわ」
「そ、そんな!」
 キヨシは、空を見上げた。
 日は既に高い。
 だが日没までに行けば、受験は可能だ。
(それに、ドラゴン達の数も少なくなったことだし……)
 キヨシは、うんと頷く。
 
「じゃ、とにかく空大に行ってきます!」
 マレーナに一礼して、
「管理人さんも、早く逃げて下さいね?」
 外に飛び出していく。
 
 ドラゴン達も、下宿から離れていく――。
 
(ん? ドラゴンが離れていくぞ???)
 迎撃隊の面々は、首を傾げた。
 自分達には目もくれず、ドラゴン達は移動して行く。
 なんだか、キヨシの後をついて行くようにも見える。
(妙だな?)
 彼等は、キヨシの後をいぶかしげについて行く……。