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リアクション
4&【2】
「……ってそんなことはどーでもよろしいっ!」
宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)はホームラン予告のようにデコバットを突き付ける。
「C.W.二コリーナ、凶器準備集合罪および内乱罪および……ええと、その他もろもろの罪で死刑を宣告する!」
「はぁ? いきなり何言っちゃってるんですかぁ、この人?」
「私は女王陛下より権を委ねらし判官! 裁判は省略。今、この場で、直々に刑を執行するわ!」
「またえっらそーに……。やれるもんならやればいいじゃないの。こちとら法律が怖くて森ガールやってねぇぞ!」
再び凶暴になるニコリーナ。マシンガンで地面をえぐるように銃弾を撒き散らす。
祥子は素早くダッシュで回避。間合いを詰め……鉄壁のニコリーナ部分ではなく、ゴリアテ部分に狙いを定める。
バットに宿らせるは史上最強の助っ人、大明神のソウル。全力フルスイングで脚をぶっ飛ばす。
「72!?」
ぐらりと揺れるゴリアテの巨体。がなにせ脚が六本もある、一本ぐらいダメージを受けてもまだバランスは取れる。
と思いきや、反対側の脚をアゲハがメッタ打ちに叩き伏せる。
「それナイスだわ、アゲハ」
ぐっと親指をおっ立て、祥子は永久欠番のナンバーワン、一本足打法で三つ目の脚をしとどに打つ。
流石に三本も殴られてはゴリアテもたまらない。ガシャアンと金属音を上げてその場に尻餅をついてしまった。
「た、大変だわ。ニコリーナ様の偉大なる下半身であらせられるゴリアテ様がお倒れにっ」
「神をも恐れぬ非道な振る舞いですぅ。わたし達でおふたりをお助けしなくては〜」
「HELL YEAH!!」
迫る森ガール。しかしその行く手をジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が阻む。
「我の戦闘プログラムに経験を蓄積させるいい機会と思うたが、まさかこんな変なのとやり合うことになるとは……」
二丁拳銃で足下に弾をバラまき足止め、その隙にカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)を呼ぶ。
「今のうちに決めてしまえ。流石にこの数はそう足止めできんぞ」
「うん、ありがとう」
デコバットを二刀に構え、カレンはニコリーナ本体に攻撃を仕掛ける。
左右から繰り出される連続攻撃……が、まだゴリアテの腕はフリー、いじらしく主人を暴力から遠ざける。
「……ニコリーナさん、君はボクの知るかぎり最高の森ガールだよ」
ふと、カレンは言った。
「ボクも君の気持ちがわかるよ。だってボクもイルミンスールを守る森ガールだもの。暗殺まではしたことないけど……密猟者をしばき倒したこともあったし。イルミンスールの森に工場とか建てられたら、多分ぶっ壊しに行くと思う」
「だったら、なんでそっちにいんだよぉ! こっちに来いやぁ!」
「……そうじゃない。だからこそ君にはちゃんと活動して欲しいんだよっ」
「ふん……!」
ニコリーナはカッと目を見開き、下のゴリアテを殴りつける。
その途端引っ込んだ腕が、すぐさま火炎放射器を持って飛び出し、炎を放射した。
「火炎放射器……そんなもので焼畑農業でもする気? こんなもの使ってたら森がダメになってしまうじゃないっ!」
「ああ!?」
「それにドルイドが鉄製武器を使っちゃダメだよ、まともなドルイド&森ガールなら自然に還る素材で武装しないと!」
「うるせぇ、オメーは先公かよっ! 鉄器はダメ、火炎放射器はダメ、っざけんなっ。要は使い方なんだよぉ。オレが武器を使うのは人間だけだ。てめぇーらを蜂の巣にして、丸焼きにして森の肥料にする分にゃ文句ねぇーだろ、ああ!?」
「な、なんでそんなに目の敵に……」
「ラブが足りねぇんだよ、自然に対するラブがよぉ。オレの夢は世界を緑溢れる小洒落たユートピアにすることだ。だからラブとリスペクトのねぇ屑どもは必要ねぇ。オレの作る世界にゃそんな屑はいらねぇんだよっ」
とその時、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)が二人の間に割って入った。
「そこまでです。双方武器を納めて下さい。もう十分です」
「なんだぁてめぇ?」
「シャンバラ大荒野を緑溢れるザンスカールの森の一部とすべく活動しているハーレックと言うものです。あなたがたのご活躍は常々耳にしていますよ。同じく自然を愛する者として、その活動には深く感銘を受けております」
ただ……と付け加える。
「しかしながら、表立った非合法活動や殺生は自然にも良くありません。ここを攻められたのも契機です。どうでしょう、非合法活動を自粛し合法路線に転換すると言うのは。さしでがましいようですが、当方には協力する準備もあります」
涼しげな顔で言うガートルードだったが、その内実はルメンザ同様の環境ゴロである。
一見するとまともなことを言ってるが、もしコミュニティが路線転換すれば、まずニコリーナが不要になる。
彼女の激しい気性は簡単には治らない。となれば、空いたリーダーのポストに座るのは……と言うわけだ。
「あんたらだってドンパチやるのが本業ってわけじゃないんじゃろ?」
相棒のシルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)も背中を押す。
だがしかし、アゲハは賛同しかねる様子。苛立ちを隠そうともせずシルヴェスターに突っかかる。
「マジうぜーんだけど。あたしらはコイツら潰しに来てんだからエコとかどーでもいいんだよ。邪魔すんな」
「そりゃおまえが自分のことしか考えとらんからじゃ」
「うっせー。ババアはすっこんでろ」
「ああ!?」……って「誰がババアじゃ、コラァ! わしゃれっきとした男じゃ!」
そして、ガートルードのほうもニコリーナの賛同を得られなかった。
「今、そんなこと話し合ってる場合じゃねぇ。まずはこのクソビッチをぶっ潰すのが先だ、ボゲッ!!」
まぁ正しく言えば、ガートルードが説得していたのは、ニコリーナではなく森ガール達だったのだが。
けれども結果は同じだろう。組織はニコリーナのカリスマで維持されてる以上、彼女なくして組織は立たない。
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