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地球に帰らせていただきますっ! ~3~

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地球に帰らせていただきますっ! ~3~
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 ■ 八雲山にて ■
 
 
 
 里帰りと聞いて柳玄 氷藍(りゅうげん・ひょうらん)に浮かんだのは、亡くなった父親が神職をつとめていた出雲大社だった。
「あそこには色々思い出があるし……皆のことが心配だからな」
 父のことを知っている須佐之男 命(すさのをの・みこと)を連れて帰省する氷藍に、真田 幸村(さなだ・ゆきむら)は命を監視するために同行した。

「そう言えば、スーは親父のパートナーだったんだよな? 親父の事、知っている事があれば聞かせて欲しい」
 向かう道筋で氷藍がそう言うと、命は僅かに目をすがめた。
「あ? 彼奴の話?」
「お前が俺の事を嫌っているのは知ってるが……知らないままじゃいられないんだ。俺はいつか、親父の役目を継ぎたいから……」
「ふん、お前も知っての通りぐうたらなおっさんだったよ。神職としての実力はあったし、俺も認めていた男だ。……あの時まではな」
 そんだけだ、と命は吐き捨てた。
「後はテメエで思い出しやがれ。俺がそこまで義理立てしてやる理由は無いんでな」
 それ以上は思い出したくないように、命はそっぽを向いてしまった。
 
 
 氷藍は八雲山に入った。氷藍の父親とは古い知り合いで、彼自身とも仲の良い山大蛇とその仲間たちに会うためだ。
 久しぶりに会った山大蛇にパラミタでのことを聞かれ、氷藍は楽しくやってると答えた。
「向こうでは友だちも出来たし。あ、ちゃんと神主としての仕事や修行もしてるから……な?」
 氷藍が思いつくままにパラミタでの出来事を語ると、山大蛇は静かにそれに耳を傾け、氷藍の身を案じた。
「俺は大丈夫だ。確かに皆と会えないのは寂しいけどな……お前たちも不知火みたいに連れて行ければ良いんだが……此処はお前たちに守ってもらわないといけないんだよな」
 自分が寂しいからと言って大山蛇たちを連れてはいけない、と氷藍は残念そうに言って大山蛇に触れた。
「いつかちゃんと親父より立派な神主になって帰ってくるから、此処でいい子にして待っててくれよ?」
「ではそれを楽しみに待つことにしましょうか」
「ああ。でも、今日は此処にいるから、昔みたいに山の仲で思い切り遊ぼう」
 何して遊ぼうか、考えて来なかったけれど、とりあえず、と氷藍は山大蛇の背に乗った。
 こうやって遊んでいたら、父に毎回怒られていたっけ……と思い出しかけて首を振る。
 違う。
 あれは父ではなく命だ。
 ということは……。
「ん? 2人とももしかして知り合い?」
 氷藍に聞かれ、命は山を見渡していた目を山大蛇に向けた。
「懐かしいな。山神」
「久しぶりですね、同胞。今は氷藍と契約しているのですか?」
「そうだ。今はこの餓鬼のお守りをしてる。何が悲しくてこんな……」
 ぼやく命に大山蛇は幾分警戒の混じる声音で頼んだ。
「……氷藍を守って下さいね」
 それに対して命はへいへいと答える。
「俺もあの男には借りがある。コイツぁ気に食わんが、奴との約束ぐらいは守ってやるさ。神が約束の1つも守れねぇでどうするよ。……つー訳でだ、お前もしっかり此処の番するんだな。俺も此処は気に入ってんだからよ」
 そう言ってから命は、氷藍に山大蛇の背に乗るなと怒った。
 昔……氷藍が小さかった頃、そうしていたように。