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Zanna Bianca II(ドゥーエ)

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Zanna Bianca II(ドゥーエ)

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●15

「やっと逢えたな……元気にしてたか?」
 クランジΡ(ロー)――大柄で大きな瞳をした、背格好の割に童顔の少女型クランジの隣に、垂が姿を見せた。
「アナタ、シヅリ」大きな口でローは笑った。再会を喜んでいるらしく声が弾んでいる。
「そう。垂だ」
 垂は油断なく眼を配った。敵はずいぶん押し戻した。もはや前線は、かなり前方に移動していた。ローの周囲は小康状態だ。しかし東園寺雄軒のパートナーことミスティーアが、「変なことしたらただじゃおかないから!」という顔をしてこちらを見ていた。とはいえミスティーアも、話す機会まで奪おうとする意図はないらしい。
 ローは垂に言った。「この前、ワタシ、暴れた。悪かった」
「いいってことよ。いやむしろ謝るのはこちらのほうだ。お前が、いや、お前とパイが、こんな境遇になったのは俺達の失態でもあるし、その償いも兼ねてお前の力になりたくてな」目の前にミスティーアがいるにもかかわらず、そちらのほうを示して躊躇せず垂は言った。「ロー、お前、連中に酷い目に遭わされなかったか? 解剖されたり……」
「ちょっと!」ミスティーアが激昂した。彼女は戦闘中なのも忘れて垂に詰め寄る。「カリスマの私がそんな残虐行為を認めるわけないでしょ! ローちゃんと私は友達なんだから! 変なことは一切してないんだからね!」
「本当か?」ミスティーアを無視して垂は問うた。
「本当。ミスティ、友達」ローは即答した。「睡蓮も、バルトも親切。九頭切丸、かっこいい。ドゥムカ、面白い人」
「しかしあの東園寺ってやつは……俺は多少知ってるが……」
 ローは首を振った。「それ誤解。雄軒、自分は知識以外興味ない、っていつも言ってる。でも嘘。少なくとも、もっと大切にしてるもの、ある。それは……」
 と言いかけたところでローは、黄金の髪をした少女がこちらに走ってくるのを見た。
「パイ!」
「ロー!」
 このとき垂はローよりも、すぐそばのミスティーアがパイに何かしないか警戒した。
 やはりミスティーアも、(「教導団員め……いきなりパイちゃんを逮捕したりしないでしょうね」)と垂を警戒した。
 もう一人、付近にはドゥムカもいたが、(「俺、『面白い人』枠なのか……九頭切丸と同じ『格好いい』枠が良かったなあ……でなきゃ『渋い』とか」)と、ローの最前の発言に苦笑いしており、やや警戒が緩んでいたのは否めない。
「パイ、もう怒ってない?」
「怒ってないわ。っていうか……ちょっと、なに!?」
 パイの小柄な体を両腕で抱きかかえ、ローはぐるぐると回ったのである。
「パイ、パイ、やっと会えた。ワタシ、裏切ってない。パイ、一番好き!」
「恥ずかしいでしょ、やめてよもう」頬を紅色に染めながらパイは言った。「い、一回しか言わないからちゃんと聞きなさいよ。さっきは、ごめ――」
 パイが言葉を言い終える前に、ローの唇から、ぷっ、と赤いものが噴いた。
 機晶姫の生体オイルだ。油特有の匂いは別として、その真っ赤な色は人間の血と酷似してた。
 ローの目が虚空を見つめていた。彼女は一度、膝を折り、そして雪の上に崩れ落ちた。
 ローの首の後ろから、やはり赤いものがどくどくと流れ出して彼女の黒髪を濡らしていた。