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第1章 真面目なインタビュー

1)宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)


宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は、緊張気味にスタジオ入りした。
(テレビでインタビューを受けるのは初めてだけど、
出演者の中でパラミタに来たのは私が一番早いんだし、
しっかりしなきゃ)
気を引き締めると、本番が開始する。
用意されていたのは、ヒラニプラ茶だった。

トッドさんの質問がさっそく、始まった。

「祥子さんは同人誌をお書きになっているそうですけれど、
今度の冬のイベントではどのような内容の本をお出しになるのかしら。
ぜひ、詳しく伺いたいわ」

祥子は、にこやかな笑みを浮かべた。

「今年も、冬のマジケットに出展するけど
詳しくは答えられないですね」
「まあ!どうしてですか?」
「ここで答えるとネタバレになるし、楽しみにしてる人に申し訳ないです」
祥子の同人作家としての意識の高さからの発言であった。
そのことはトッドさんにも伝わったようだった。
「わかりました。
いったいどんな過激な内容なのか、今年も楽しみですね!」
「過激って……」
生放送で言われるのはあまりな発言だが、祥子は褒め言葉と受け取ることにした。

「では、送られてきたメールからの質問です。
弁天屋 菊さんから、
転校経験者全員宛の質問です。

転校して苦労した事は?
転校して良かった事は?

祥子さんは、教導団憲兵科から、空京大学の史学科に転校されたんですよね」

「そうね……」
少し考えてから祥子は答える。
「苦労したのは引越し。
女性によくあるように、私も服を処分するのが大変だったんですけど、
特に私は『本』の量が多いので……」
「それは研究の資料だけではなく、同人関連もですよね?」
「そうです」
苦笑しつつ祥子はうなずいた。
「引っ越しの時は、本の段ボール運ぶ人が露骨に嫌な顔するのよね」
「では、よかったのは?」
「良かったのは見識を広めることができたこと。
やはり、複数の環境を経験できたことは、
私にとって、とてもいいことだったと思っています」

「では、出演者の緋桜 ケイ(ひおう・けい)さんからの質問です。

俺のパートナーも入っているんだけど、
そういえば魔法少女協会ってどこにあるんだ?
この際だから、最近の活動内容も含めて、
普段どういったことをしているのか教えて欲しいな。
メンバーのことをどう思っているのかとかも聞いてみたいぜ。

……だそうです。
祥子さんは【魔法少女えむぴぃサッチー】でもあるんですよね」

「トッドさん、すごいリサーチ力ですね。

ケイさんからの質問に答えますね。
魔法少女協会の本部の場所は実は私も知らないの。
活動拠点の有名所は空京の『豊浦宮』。

最近の活動は……魔法少女喫茶の運営とか
怪しいパラミタツアーの企画元を成敗したり色々ね。

魔法少女協会の基本方針は
『勧善懲悪で、みんな仲良く』よ。
メンバーのことは、切磋琢磨したり助けあったりできる
信頼の置ける人達だと思ってる。
時には衝突することもあるかもしれないけど、
それは、それぞれの正義だから、恨みっこなし」

「シャンバラは、魔法少女文化の盛んな場所でもあるんですよね」

「ええ。
テレビの前の良い子達のためにも、
これからも活動を頑張っていきたいと思います。
どうぞよろしくね」
トッドさんにうなずき、祥子はカメラ目線でウィンクして見せた。

「ありがとうございます。

では、次に、出演者全員に、
国頭 武尊さんからの質問です。

契約者になる前は、地球で普通に学生やっていて
争い事なんかにゃ無縁だった人も居るだろうから敢えて聞くけどよ。
やっぱ、契約者になってその活動期間が長くなると
人を傷つけたり、時には殺めたりする事に、
抵抗感や不快感を持たなくなるのかね。
すっげぇ答え難い質問だと思うから、無視してもらっても構わないぜ。

……とのことです。どうなのかしら」

「うーん」
難しい問いに、少し考え込んでから。
「答えになってないけど、抵抗感や不快感は『人それぞれ』だと思う。
付け加えて言うなら『その人が契約者としてパラミタで何をしているのか?』が
人を殺傷することに対する抵抗感や不快感を持ち続けるのか、
なくなるのかの分かれ目じゃないかしら?」
「祥子さんは?」
「私の場合は『ある』わね。
パラミタで生きていく為に、
銃を撃って、魔法を唱えて、剣を振るって来たけど
その為に相手を傷つけることを無条件に受け入れるのってなかなかできないわ。
私も、契約者になる前は、特別な力を持たない普通の女の子だったもの」
「なるほど。
真面目な質問に真面目に答えていただいてありがとうございました。
では、次は
青葉 旭さんから、やはり出演者全員に質問です。

自身の所属校ってどの程度大事に思っている?
質問がアバウトですが、極端な例を挙げると、
王国が滅んでも学校を守る。
他の学校を全部潰して自分の学校1校だけにしたい。
友達よりは大事だけど、恋人よりは大事でない。
嫌い、早く転校したい。
全く大事でないどころか明日にでも破壊したいくらい嫌い。
といったところかな。

自分の学校のこういう点が改善されたらもっと好きになれるのに、
というのがあったらそれもお願いしたい。

ということですけれど、どうかしら」

「そうね……。さっきの転校の件とも少し重なるのだけど。
パラ実出身の生徒が増えたからといって
空大をパラ実の分校みたいに言われるとカチンとくるし。
路頭に迷いかけてた時に入学させてもらえた教導団には本当に感謝してる。
愛校心はあるつもりだけど、
成したい事があった時に足枷になるようならスパっと転校する。
そのくらいの感じね」
「なるほど、さばさばしたところがあるという噂の祥子さんらしいお答えでしたね。

今日は、どうもありがとうございました。
またお会いできるといいわね」
「はい、こちらこそどうもありがとうございました」
トッドさんと祥子は笑顔で握手をかわしたのだった。