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【ダークサイズ】戦場のティーパーティ

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【ダークサイズ】戦場のティーパーティ

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 結局、長原 淳二(ながはら・じゅんじ)ミーナ・ナナティア(みーな・ななてぃあ)疾風迅雷リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)メアトリス・ウィリアムズ(めあとりす・うぃりあむず)が搭乗しベアトリス・ウィリアムズ(べあとりす・うぃりあむず)が上に乗っかった閃光甲冑・鳥兜が慌てて出動して、DSI−LLを抑え込み、止めてもらうことになる。
 最終的にDSIの10機中9機を使用不能にしてしまったダイソウは、案の定、綾香の壮絶なお叱りを受けながら、

「イコンの構造が複雑すぎるのだ」

 と、自分のロボット操作のセンスの無さを、機械のせいにする。

「ダークサイズって、一体どういう組織なんですか……」

 ミーナがコンクピットから降りながら、未だに掴めないダークサイズの雰囲気に、戸惑ったような困ったような顔をする。

「どうだい、楽しいところだろう?」

 淳二は嬉しそうに言うが、ミーナは、

「楽しいというか……変な人たちですね……」

 と、正直な感想を言う。
 淳二はミーナの感想を受け止め、

「そうか。でも心配ない。お楽しみは……これからさ!」

 と、白い歯を見せる。
 ベアトリスはイコンの上で足をぶらぶらさせながら、

「敵や空賊を警戒してたのに、ダイソウトウが暴れるとはね。まさに」
『獅子身中の虫!』

 メアトリスも加わってユニゾンで言う。

「ふふふ。さあ、ラピュマル内のパトロールを続けるよ。アリア、僕たちの本番は月に到着してからになると思う。余計なエネルギーは抑えながら動こう」

 リアトリスはメアトリスに指示を出す。

「よーし、いっけえー! 鳥兜おー」

 ベアトリスがイコンに跨って元気いっぱい指をさす。

「アトリ、あんまり騒いでいざ戦いの時にへたってないでよね」

 と、メアトリスがセーブモードでイコンを起動させる。

『月への港とはあれかのう?』

 ラピュマル内にダイダル卿の声が響く。
 淳二たちがラピュマルの舳先から見ると、ロケットの発射台のような突起物を中心に、施設が広がっているのが見える。
 洋機がスピードを落としてラピュマルの隣に回り、通信を入れる。

『まもなく月への港だ。総員、着陸と発射準備を怠るな!』

 港には先んじて、ヴェルデ機とゲブー機が到着している。
 二人のモヒカンレースは、機動力がわずかに上回ったヴェルデ機の勝ちのようだった。
 ニルヴァーナ捜索隊に後れを取るまいと、急ぎ発射の準備をするダークサイズ。
 護衛機のイコンはラピュマルに着地し、ラピュマルを発射台に据える。
 その準備中も、ラピュマル中央の神殿内では、何やら怪しげな儀式が行われていた。
 魔法円陣の中心にアルテミスが立ち、その円周沿いには巫女姿の菫、メイド姿のプリーストであるフォルトゥーナ、メイガスの結和とクロスとミスティ、ネクロマンサーの顕仁がろうそくを持ってゆっくりと周回している。

『らんらんるー……らんらんるー……』

 皆、歌とも呪文ともとれるトーンで妙なフレーズを繰り返し、アルテミスはゆっくりと目を開ける。

「我の出番のようじゃな……皆の者、ご苦労でじゃった」

 アルテミスは囲んでいたみんなを見渡し、訳の分からない儀式に付き合わされた結和がへたりと座りこむ。

「あ、あのー、アルテミスさん……これは何の儀式だったんでしょう……?」
「いかに悠久の時を生きる我とはいえ、大容量の魔力を長時間放出するのは初めてじゃからな。内なる力に淀みない流れを作る必要があったのじゃ」
「つまり、魔力の集中と集積の儀式であった、と」

 顕仁が合点がいったような顔をする。
 続いてフォルトゥーナが、

「あの変な呪文はなんて意味なのかしら?」
「ん? 意味などないが」
「え?」
「おぬしら人間も、集中する時は音楽を嗜んだり、暗いところに入ったり、五感の一部を強制的に塞ぐであろうが。それと同じじゃ」
「……この魔法陣と私たちが歩いていたのは?」

 というクロスの質問も、

「雰囲気が出るであろう」
「……なんであたしたちが呼ばれたの?」
「別に誰でもよかったが、おぬしらがそれっぽいクラスだったからじゃ」
「……じゃあ、私たちって、ただの飾り……?」
「そうじゃ」
『そ、そうなんだ……』

 菫とミスティの質問にもこんな具合で、顕仁もがっかりしたような顔で、

「なんじゃ。てっきり魔力の召喚か異界との魔力交信か何かと思うておったわ。選定神の召喚とはどのようなものか期待しておったのに」
「何を言う。おぬしらなら分かろう。我ら魔力を操る者は、精神の増強が必須じゃ。魔力向上や召喚に使う陣や呪文など、それを補う目印にすぎぬのじゃ。実際にそこから魔力や魔物が湧いてくるわけではないのだぞ?」
『え、そうだったの……?』

 と、魔法の概念を覆すようなことをアルテミスは言うが、それは彼女が選定神だから成立する持論。
 とにかく気息充分となったアルテミスは、満を持して神殿の外に出る。
 宇宙へ抜ける強力なスピードと重力に耐えるためにも、港から発射する際にはアルテミスのバリアを発動させておかなければならない。
 ダイソウはいつもより少し真剣味のある顔をして、

「アルテミス、頼んだぞ」
「お任せあれ、ダイソウトウさま」

 アルテミスもダイソウの言葉に応える。
 宇宙に出発してパラミタの月のオクタゴン到着までは、アルテミスのバリアに文字通り全員の命が預けられる。
 仲間の生命を自分の双肩で負うというのは、いかに選定神とはいえプレッシャーを感じないわけではない。
 それがわざわざ儀式を行う、という行動に出ていたのだが。

『アルテミス、わしもこういうのは初めてじゃが、しっかり頼むぞい』
「分かっておるわ。まったく、意味もなく巨大な図体をしおって。おぬしを全てカバーする我の身にもなれ」

 ダイダル卿に悪態をつきながら、アルテミスは一気に魔力を解放。
 アルテミスから強烈な波動が円形に広がり、皆の身体を突きぬけ、半透明の厚い膜がラピュマルをすっぽり覆う。
 つついてみると、そこから波紋が広がる。
 質感は静かな湖の水面、といったところか。
 アルテミスはカッと目を開き、驚きつつバリアを見る面々の中から、

「シシル!」
「えっ、あ、はいっ!」
「お腹すいた!」
「ええー! 早いー!」

 事前に食事を取るのをすっかり忘れていたのも手伝って、アルテミスは早速シシルにご飯を要求する。
 ダイソウはマントを翻し、空を見据える。

「無限の彼方へ! さあゆくぞ!」

 と、どこかで聞いたことのある台詞を吐き、蒼空の城ラピュマルは宇宙へ向けて発射する。