リアクション
● バチッ! ライトニングウェポンによって電撃を付与された弾丸が、シャドー目がけて連射された。 しかし、シャドーたちはそれをゆらりと音もなく避ける。左右を飛んだ弾丸から避けようとしたとき、彼らは必然的に中心に固まることになった。やはり、思考能力はそれほど高くないようだ。 銃弾を放ったハンドガンを片手に、浩一は自分の推測が当たっていたことを確信した。 「千里、前にっ!」 「任せてください!」 同時に、浩一の言葉を合図にして、彼のパートナーである希龍 千里(きりゅう・ちさと)が前へと飛び出した。 シャドーたちはとっさに距離を取ろうとするが、遅い。すでに千里の両手は重なり、自らの前に突き出されている。 「はあああぁぁぁっ!」 武闘派少女の凛とした気合いの入った声音。 重なって突き出された両手の前に集まったのは光の力だった。それは瞬時に丸い珠の形へと変化する。心身の調和が取れた武闘家のみが体得できると言われる〈則天去私〉の光だ。千里は重ねていた手を離すと、右腕を引いた。珠はそこにとどまったまま、激しく渦巻いている。 そして―― 「ッ!」 叩き込まれた右拳が光を貫き、その力を纏ってシャドーたちへ打ち込まれた。 ボウッ! と、巨大な光の珠が膨れあがる。それはシャドーたちを包み込み、一気に渦巻いた。渦の中で、シャドーたちは消滅していく。 まさしく浄化の光。武闘家が放つ、聖なる拳の一撃だった。 「……さすがですね、千里」 光の珠が空気に霧散して消えたあと、浩一はそう言って千里を褒め称える。 「いえ、そんな……」 だが、きゅっと結んだ唇と鋭い眼光を持った娘の顔は、実に遠慮深いものだった。 たとえ敵を倒したこのときでも、気を緩めてはならないという、謹厳な態度がうかがえる。 「これで、とりあえずは前進になるでしょうか」 「そうだね。おそらくは」 千里の言葉に頷いてみせて、浩一はハンドガンを構えた。 その銃口が狙い定めるは、人一人の身長ほどはありそうな《黒い柱》。 引き金が引かれると、銃弾が《黒い柱》を貫く。まるで水晶が割れるような音を立てて、亀裂が走った柱はミシミシとその亀裂を広げる。やがては、バリンッと粉々に砕け散ってしまった。 「やりましたね、浩一さん!」 浩一のもとに駆け寄ったのは、彼の部隊に属する諜報隊員たちだった。主に情報の回収と報告をメインとする浩一の諜報部隊は、またこうして新しい情報を各地に伝達させるだろう。 シャドーが生まれてくるこの《黒い柱》についての情報を与えてくれたのも、彼らだった。 「そうですね、皆さんのおかげです」 心の底からそう思って、浩一は彼らに笑いかけた。 しかし、内心ではまだ終わっていないと冷静な声が語りかけている。 (……全ては黒夢城。そしてモートとアバドンを倒さねば、終わらないのですから) はるか彼方の瘴気に満ちた空を見つめて、浩一はハンドガンをホルスターに収めた。 ● |
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