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第2試合

 
 
『第2試合を開始いたします。
 イーブンサイド、小鳥遊美羽、ベアトリーチェ・アイブリンガー、グラディウス
 オッドサイド、氷室カイ、サー・ベディヴィア、月詠
 これは、イーグリット・アサルト同士の対決となりました。けれども、双方共に激しくカスタマイズされています』
 フィールドは、第四世界のゴーストタウンだ。根無し草が風に吹かれてコロコロと転がっていく。
 まるで決闘のように、グラディウスと月詠が町の端と端に現れた。
「ほう、これは面白そうだのう。名乗りとかはあげぬのか?」
 ちょっと儀式張った始まり方に、織田信長が興味を示した。
「そういうことすると、やられちゃうんだよ」
 誰かのことを思い出して、ラブ・リトルが引きつった笑いを浮かべる。
 風にマントをはためかせたグラディウスが、まだ刀身を発生させていないダブルビームサーベルを両手に持った。月詠が、腰のハードポイントにあるレーザーマシンガンに手をかけるそぶりをする。
「始まるのう」
 緊張がピークに達するのを感じて、武者鎧『鉄の龍神』がつぶやいた。
 戦いは、ミサイルの撃ち合いから始まった。
 双方が持てるミサイルを一斉に発射すると、それを追いかけるようにして互いにダブルビームサーベルを抜いて突っ込んでいった。
 中央でミサイル同士が迎撃し合い、激しい爆炎が広がる。その中へと、グラディウスと月詠が躊躇することなく突っ込んでいった。
「まぶしくて見えないです」
 ソア・ウェンボリスが目を瞬く。
「どっちが勝った?」
 雪国ベアが目を凝らした。
 閃光が消えると、グラディウスの背中から、月詠のダブルビームサーベルの切っ先が二本、大きく突き出していた。
 だが、月詠の上半身も大きく傾く。胴部で真っ二つにされた月詠の機体が二つに分かれて崩れ落ちた。その反動で、グラディウスに刺さっていたビームサーベルが上むきに跳ねた。グラディウスのミサイルポッドをビームサーベルが斬り裂く。そのとたん、残弾が誘爆して、グラディウスと月詠が跡形もなく吹き飛んだ。
「ふはははは、潔いな。やはり、敗北したときは自爆に限る。あっぱれだ」
 なんだか満足して、ドクター・ハデスが両者を褒め称えた。
 
    ★    ★    ★
 
『なんと、両者破壊、相討ちです!』
 シャレード・ムーンのアナウンスが会場に響き渡った。
 
 
第3試合

 
 
『第3試合を開始いたします。
 イーブンサイド、ネフィリム三姉妹
 オッドサイド、富永佐那、北条氏康、クレーツェト
「これは……死んだな。パワードスーツで参加なんかするから」
 なんだか自分のことは棚に上げている三船甲斐に、猿渡剛利がおいおいと突っ込んだ。
 フィールドは空京遊園地だ。これまた、遮蔽物が多く、身を隠しやすいパワードスーツはやっかいな相手だった。
「あの機体……。我が国のためにも潰しておくべきか。頑張れ、ちっこい嬢ちゃんたち」
 先ほどのグレイゴーストIIのときと同じような大国の臭いを感じて、ドラニオ・フェイロンがネフィリム三姉妹を応援した。
 子供用ゴーカートの戦車のそばを巨大な脚がわずかに宙に浮きながら進んでいく。
 豪快でトリッキーな白兵戦を好む富永佐那ではあったが、相手がパワードスーツでは、勝手が違いすぎる。ちっとも豪快ではないのが大いに不満だ。
 ふいに、ロケット弾がクレーツェトにむかって飛んできた。避けようとしたところで、展望台に引っ掛かってクレーツェトが被弾する。運の悪いことに、フローターが被弾して出力が下がった。これでは高高度からの掃討は難しくなった。
 再びロケット弾の攻撃がある。反撃で、クレーツェトが観覧車を斜めに切り壊した。すぐさま脱出する赤い影を追いかけようとするが、今度はジェットコースターの方からロケット弾が飛んできた。
「よく動くなあ」
 ちょっと感心したように、ドール・ゴールドがネフィリム三姉妹の動きに注目する。
 富永佐那としては、いっそ遊園地ごと破壊してしまいたくなるのだが、北条氏康が冷静になるようにうながしているようだ。様々な威信を背負っていると自負する富永佐那に、無様な戦い方だけはさせてはならないと北条氏康は考えていた。
 少し冷静になって、クレーツェトが遊園地中央にある大きな空京遊園地タワーへと全速でむかった。周囲の見晴らしのいいタワーを背にして、敵を待ち構えるつもりだ。
 予想通り、隠れる場所がなくなったネフィリム三姉妹が姿を現した。
 ディミーア・ネフィリムが右から、セラフ・ネフィリムが左から迫って、ロケット弾で攻撃をしてくる。
 クレーツェトがバスターソードを展開して、内蔵されたレーザーマシンガンで二人を迎撃した。バーストダッシュで、二人が必死に逃げ回る。
 その戦いの隙に背後に回ったエクス・ネフィリムが、タワーの基部へと入り込んだ。ギロチンアームで、タワーの基部を破壊する。それでも足りず、至近距離でロケット弾を一気に自爆させた。青い爆炎が広がった。
 タワーが倒れる。
 あわてて脱出しようとするクレーツェトにディミーア・ネフィリムセラフ・ネフィリムがロケット弾を叩き込んだ。爆発に、クレーツェトが押し戻された。そのまま、クレーツェトが倒壊してきたタワーに押し潰される。
 
    ★    ★    ★
 
『勝負ありました、ネフィリム三姉妹の勝利です』
 
    ★    ★    ★
 
「クレーツェトが負けた……!?」
 ちょっと呆然として、富永佐那はブラックアウトしたコンソールモニタを見つめていた。
 状況によっては、イーグリット・アサルトでは、パワードスーツ隊に負けることもあるということなのか。
 そのとき、ふいに息を吹き返したコンソールモニタに、『NEXT!』という意味のキリル文字が表示されて、そして消えた。
「富永佐那は消えるが、ジナイーダ・バラーノワはまだと言うことか……」
 ふっと唇の端に笑みを浮かべて、富永佐那がつぶやいた。
 
    ★    ★    ★
 
「あーん、死んじゃいましたー」
 タワーの崩壊にみごとに巻き込まれたエクス・ネフィリムが、シミュレータの外で半べそをかいていた。
「構わん、上出来だ。貴様のちっぽけな犠牲で、勝てたんだからな。安い対価だぜ」
 上機嫌で、湯上凶司が言った。直後に、三姉妹全員にボコられる。
「分かったからもうやめてくれ。頼む、これをやるから」
 そう言うと、湯上凶司が割れた星形のステッカーを三人に一つずつ配った。
「これはなんですかあ?」
 ちょっと訝しげに、セラフ・ネフィリムが訊ねる。
「撃墜……されましたマークだ。めでたく全員この大会で一回ずつ死んでるからな、記念に……うぼあ!」
 再びボコられる湯上凶司であった。