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【2022クリスマス】聖なる時に

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第5章 プレゼント作り

「ここ、工作スペースの貸出してるんだ」
 24日の日中。空京の手芸店に武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は、セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)を誘って訪れていた。
「ふーん……」
 手芸店の中も、クリスマスの装飾がされている。
 ただそれらの装飾は、他の店とは違い、手作りの物が多い。
「で、なんでここに?」
 セイニィは不思議そうに牙竜に尋ねた。
 クリスマス直前に、自分に想いを寄せてくれている相手が誘ってくれる場所として、ちょっと不思議だったのだ。
「ティセラとパッフェルにクリスマスプレゼント、一緒に作らないか?」
「手作りのプレゼント? こういうのはパッフェルの分野だしなー」
「裁縫はそうかもしれないけれど、こういうのだったら、セイニィも楽しんで作れるんじゃないか?」
 牙竜はセイニィにパンフレットを見せる。
 セイニィに勧めたいのは、スノードームだ。
 球やドーム型の透明な容器の中を水で満たし、人形や建物等のミニチュア、雪に見立てた物などを入れて。
「動かすことで雪が降っている風景になるんだ」
「へー……面白いかも」
 セイニィはパフレットに興味を示してきた。
「入れる小物とか、ラッピング用品などは店内ですぐ買えるから、作業スペース借りてれば、すぐに作れる利点もある」
「そうねぇ……」
「手作りキットも売ってるから難しく構えることもないし、時間もあまりかからないから結構いいぜ?」
「うん、今年はどうしようかと思ってたのよね。パッフェルは恋人と過ごすだろうし、ティセラは仕事だし。あっ、あたしも仕事なんだけど、今晩は来なくていいとか言われちゃってね……」
 最後はもごもごと言うセイニィ。
「そっか、気を使ってくれたのかな」
「……やっぱり、これ作って夜勤手伝うことにする。教えてくれる?」
「勿論」
 牙竜は、セイニィを工作スペースへと連れていく。
 用意してあった、黄道十二星座をモチーフにしたマスコットをテーブルに広げた。
「これを雪だるまの小物に持たせるといい感じになると思うぞ」
「うん」
 セイニィは牙竜に習いながら、ティセラとパッフェルに贈るクリスマスプレゼントを作っていく。
 牙竜が用意してくれたマスコットを瞬間接着剤貼り付けて、選んだ容器の中に入れて。
 丁寧に慎重に、作っていった。
「……水、は少し待った方がいいかな。剥がれたら嫌だし」
 集中していたセイニィが顔を上げる。
「沢山あるけど……これはどうしたの?」
 そして、テーブルの上に置いてある他のスノードムに目を留めた。
「数日前から、ここに通って作るだけ作ってる」
 言いながら、牙竜もスノードームを作っていく。
 可愛いうさぎとクマのマスコットを入れたスノードームだ。
「今年も事件が多かったからな、事件で傷ついた子供達に贈ろうと思ってな」
「ふーん……」
「シャンバラ……いや、世界がこんな状態だからな…俺が幸せに過ごすのは、まだ、先になりそうだ……」
 淡く笑った牙竜を、セイニィは何も言わずに見ていた。
「世情の不安定さに子供は敏感だから、俺にできることをしたいと思って、せめて手に届くなら何かできることをしたくてな」
「あ、そっか。クリスマスっていったら、サンタさん、だよね。牙竜は今晩、プレゼントを運ぶ、サンタになるのね」
「自称ヒーローとしては出来ることをしたい」
 言った後、牙竜はセイニィを愛しげに見つめる。
「わりぃな、クリスマスだと言うのに気の利いた場所に誘えなくて……いろいろ片付いて、俺もセイニィも自分の幸せを考えられるようなったら、その時は……よろしく頼む」
 少し考えた後。
「……うん、その時にまた、話しましょ」
 セイニィはそう答えた。
 牙竜は頷くと。
「これは俺からセイニィへ」
 セイニィへのプレゼントを渡した。
 雪だるまのマスコットが小さなライオンを抱えてる小物を入れたスノードームだ。
「ありがと」
「メリー・クリスマス。セイニィ。よいクリスマスを……」
「メリー・クリスマス、牙竜。よいサンタになってね」