リアクション
「うううっ、癒してくれ、その胸で癒してくれー」 ☆ ☆ ☆ 同時刻。 種もみの塔46階にある不動産屋に駆け込むなり、吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)はカンゾーを呼びつけた。 「おい、カンゾー」 「吉永か。加勢に来たって感じじゃねぇな。だったら後にしてくれ、今は忙しい」 「うるせぇ、大事な話だ」 竜司が強く言えば、カンゾーは面倒くさそうにしながらも振り向いた。 「てめえ、優子を嫁に狙ってんだってなァ」 「それがどうした」 「つまり、オレの優子に勝つつもりだな?」 「当たり前ぇだ。あいつを嫁にしてこそ、この種もみ女学院計画も進むってもんだ」 竜司はそれを鼻で笑った。 カンゾーは不快そうに眉間にしわを寄せる。 「てめえには無理だな。優子の舎弟の弩S級四天王のゼスタにすら勝てねぇだろうよ、グヘヘ。優子を夢にしたきゃ、ゼスタに勝ってからオレんとこに来るんだな!」 「どえす……? ゼスタってのは、そういう趣向の奴なのか?」 カンゾーは不審そうな表情で何やら考え込んだ。 「神楽崎がどえむだとは聞いてねぇ。……まぁいい、障害がいくつあろうが関係ねぇ。ゼスタにはどえむの女を差し向けてみるか」 「知り合いにいるのか?」 「探すんだよ。だが、それは後だ。今は女学院開校が先だ! そしたらお前も倒しにいってやるから、今から必死で腕を磨いとくんだな」 竜司の挑戦を受けたカンゾーはニヤリとする。 カンゾーの意志を確認した竜司は彼に背を向け、もう一つ挑戦状を叩きつけていった。 「せっかくパラ実生が集まってくるんだ、オレも楽しませてもらうぜ。若葉分校も生徒募集だ!」 地上に戻った竜司は、種もみ女学院生徒募集の立札の隣に、若葉分校生募集の立札を立てた。 内容はこうだ。 『応募条件:特になし。男でも女でも誰でもウェルカム! ・女装なんてしなくても、分校生になれば百合園女子と仲良くなれる ・農家の女の子とも仲良くなれる ・ネットし放題なので、地球の女子とも仲良くなれる。契約者とパートナーにもなれるし、嫁探しにも使える』 さらに、これらのことを瀬蓮や美緒にくっついてきた若葉分校生にさりげなく宣伝してこいと命じていた。 若葉分校名誉番長の言うことなら、と分校生達は動き出す。 やがて、百合園一日体験入学や面接で精神的にも肉体的にも返り討ちにあってきたパラ実生の何人かが、若葉分校生に慰められながら竜司のもとに集まってきた。 真っ青な顔で、 「俺の百合園生は、いつの間にか冥府の使いになっていた」 などと呟いて震える彼らに、竜司は呆れ顔だ。 「おい、そんなに宦官になりたかったのか?」 「んなわけねぇだろ! ああ……姉妹校になったら、百合園の女の子とあんなコトやこんなコトをしたかったのに……!」 「こいつ、それでつい股間ふくらませてったら、リングでおそろしい柔道技でガツンとやられたんだよ」 目の周りに青アザを作ったパラ実生が、竜司に説明した。 「バカだな、てめえは。いいか、真のイケメンってのはそんなふうにがっつくもんじゃねぇ。己の欲望よりも、相手の願いを優先して叶えてやるもんだ」 たとえばオレのように、と竜司は神楽崎優子に出会った時から今日まで、どのように接して惚れさせてきたかを、思い込みも交えて話して聞かせた。 その話は、傷心のパラ実生には釈迦の説法のようにありがたく聞こえたとか。 「優子はいい女だからな……てめえらの中にも惚れる奴がいても仕方ねぇ。だがな」 竜司は言葉を切ると、ギロリとパラ実生達に睨みをきかせる。 「優子を嫁にしたいなら、まずは(舎)弟的存在であるゼスタを倒してからだ!」 竜司が叫んだこの場所は、ちょうどゼスタのいる保健室のある階の真下だった。 |
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