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太陽の天使たち、海辺の女神たち

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太陽の天使たち、海辺の女神たち
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●interlude

 大学生活と芸能活動、その両立は容易ではない。
 特に夏は。
 なぜなら、アイドルにとっては一年で一番忙しい時期といっても過言ではないからだ。
 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)、すなわち、コスプレアイドルデュオ『シニフィアン・メイデン』の二人も人気上昇の波に乗ったおかげか、今年はとても多忙な夏を過ごすことになった。学業との両立を考えると、まったく休みのない日々だった。
 それだけに、御神楽環菜からの招待は二人にとってまるで砂漠のなかのオアシス、水着写真集の製作でもなんでもない、仕事抜きの完全休暇となったのである。
「それなのに」
 ぽつりとアデリーヌが言った。
「どうしてこんなことに……?」
 気が付いたら人の気配のない……というより、誰も来ない砂浜へ二人はたどり着いていたのだった。
 右を見ても左を見ても誰もいない。
 いいようでもあるが、それは休息所にも事欠くということを意味する。
「ええ、私が悪いのよ。我がことながら、相変わらずの方向音痴ぶりに涙が出そう……」
 はらはらと落涙……はしないが、とりあえず泣き真似くらいはしてみるさゆみだった。
 そう、さゆみがどんどん歩いた結果、二人は無人島の中でも本当に無人、という場所に来てしまったのだった。
「飲み水とか、大丈夫かしら……」
 アデリーヌは不安げだが、さゆみは前向きだ。
「べつに遭難したわけじゃないし、しょせんは陸続きだし、誰にも邪魔されず楽しもっ!」
 と言ってもう、遠浅の海に向かって走り出していた。
「まあ、そうかもね」
 たまには素直になったほうがいい――そうアデリーヌも同意して、さゆみの後を追うのだった。
 他愛もないことかもしれない。けれど、仕事ばかりの日々から解放された二人には、その他愛のなさが嬉しい。遠浅の海を二人で手をつないで水中散歩したり、波打ち際で水を掛け合ったりと、時間を忘れはしゃぎあった。
「ねえ? 邪魔じゃない?」
 夢中で遊んでいるうち、突然さゆみが言った。
「なにが?」
「これ!」
 と言ったときにはもう、さゆみはビキニのブラを取り去って砂浜に投げ捨てていたのである。
「ちょ、ちょっと! それはいくらなんでも!」
「トップレスー♪ アディもやろうよ」
「さすがにわたくしは……あっ」
 逃げようとしたアデリーヌだったが、そのときにはもう、さゆみに水着の紐を握られていた。
「ほーら!」
 ブラはくるくると回転して、さゆみが投げ捨てた水着の上に重なる。
「もー!」
 露わにされた胸を、それでも隠そうとするアデリーヌと、その手をどけようとするさゆみ、じゃれあう二人だったがすぐに、もつれ合って波打ち際に倒れ込んでしまった。
「アディ……」
「さゆみ……」
 さゆみがアデリーヌを組み敷く格好。
 互いの瞳に、互いの姿が映り込んでいる。
 鏡のように、鮮明に。
 波が二人の体を洗った。
 唇と唇をつつきあう小鳥のようなキスが、舌を使う深いものに変わるまでの時間はあっという間だった。
「ね……?」
 興奮冷めやらぬ口調で、さゆみはアディの、最後の砦に指先をかけた。
「……さゆみ、ここじゃだめ……」
 いくら誰もいないからといっても、太陽が見ている。
 けれどさゆみは許さない。
「アディ、あなたのことが……今欲しいの……」
 そう言って彼女に愛を求め、自らも、与えた。
 アデリーヌもそれを受け入れていた。やはり彼女も、大胆になっていたのだろうか。
 限りある命だから――さゆみは思う――今こうしないときっと後悔しそうな気がする。
「生きている限りずっと、アディのことを愛していたいから」
 絡み合う二人の髪を、波が優しく解きほぐす。