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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)を連れて……否、ハイナに連れられて、お月見をしていた。
「この竹林の向こうに、大きな池があるでありんすね?」
 今日のハイナは、唯斗が用意した、萌葱色の生地に薄紫の帯という大人しい色合いの浴衣を着ている。普段の格好では到底外に出せない、と慌てた唯斗が、急いで新調したものだ。
「それじゃあ、早速池に向かうでありんすよ!」
 と、竹林の散策路を、いつも通り唯斗を先導するようにハイナが歩き始めたのだが。
「っていうか……あれ?」
 思わず唯斗は目をこすった。
(なんか、いつもより露出が少ないのに……なんか、狭い通りで近いだけなのに……ハイナがしおらしく見える……!?)
 カランコロンと下駄をならして一足先を歩くハイナが、いつもよりどことなくか弱く、小さく見えたのだ。
(なにこれどーいう事ですかよ!? は、恥じらいという奴なのか?! 浴衣を着たら和風美人!? というか、アメリカナイズしなければ大和撫子!?)
 もう一度唯斗は目をこするが、やはりハイナはどこか淑やかに見える。
(妙に可愛く見えるから、非常に困る……。し、しかしコレは尚更しっかりエスコートしないと駄目な感じ!)
 ぐっ、と唯斗が握りこぶしを作った瞬間。
「唯斗! 池が見えたでありんすよ!」
 散策路を外れ、竹林の真ん中を突っ切って走っていくハイナ。
「そこ通っていい道じゃない!! って、うん、中身はいつも通りなんですね。浴衣補正? って凄い」
 一人後に残された唯斗は、慌てるやら突っ込むやら、忙しなくハイナの後を追っていった。

「池に映った月……これぞ『和』でありんす!」
 池の畔についたハイナは歓声を上げ、池の畔に停泊している大船に目を止めた。
「このような大船を浮かべて、宴会をしてみたいでありんすね!」
「ああ、そういうの素敵」
「早速、船と酒を調達してくるでありんすよ!」
「今から二人で宴会!? っていうかその船使うの?!」
 唯斗のツッコミも虚しく、ハイナは近くに浮かぶ船に向かって全速力で走っていく。
「ああ! その格好でいつも通り動こうとしちゃ駄目ぇ!! 普通の服なんだから、生地が!!」
 と叫んだ時には、時既に遅し。ビリ、と音を立てて胸回りの生地が破れたのを、唯斗はしっかりと目撃していた。
「結局、背負って帰ることになると思ってたよ! 最初から!!」
 唯斗の心の叫びが、月下の池に響いたとかそうでないとか。