校長室
お月見の祭り
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リネン・エルフト(りねん・えるふと)とフリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)は、小舟に乗って月を見上げていた。 「月が綺麗ね……」 そう呟くフリューネと同じ月を見上げながら、リネンは黙ってその美しい光景を見つめていた。『月が綺麗ですね』を『愛しています』と訳した、その感覚が、今のリネンには何となく分かるような気がした。 「舟を動かすのも、意外と大変なのね。ちょっと海賊を見直したかも」 リネンは水面に視線を落とし、揺れる月を見つめた。 「……リネン?」 「ううん、大丈夫」 リネンはフリューネを見つめて、微笑んだ。 「私、焦らないわよ? 待つのは慣れっこだし……フリューネを思いで縛りたくないから」 リネンはこの間のジューンブライドで、もう一度フリューネに自身の思いを告げた。 フリューネのことが好きだと。一緒になりたいと。そして、フリューネの気持ちが決まるまで、いつまでも待つ……と。 「今なら大丈夫。どんな答えでも、きっと受け入れられるから。フリューネの思ったままに、言いたいって思った時に、聞かせて」 リネンの真剣な瞳に、フリューネが言葉を詰まらせた。リネンは微笑んで、月を見上げる。 「月が綺麗なのは手が届かないからだ……って言った人もいるけど、私は違うと思うの」 「どうして?」 「地球の月、パラミタの月には人が辿りついて……手が届いたでしょ? でも、だからってニルヴァーナの月と同じくらい綺麗で……えぇと……」 リネンは、自分の言いたかったことをまとめようと、少し言葉を濁らせた。 「だから……その、フリューネが誰を好きになっても、私も……みんなも、同じように変わらずやってくのってできると思うから……」 「リネン……」 「……ニルヴァーナの月、いけるかな? フリューネと……」 リネンが、ぽつりと零した。 「いけるわよ。少なくとも私は、そう思ってる」 フリューネの言葉に、もう戸惑うような響きはなかった。 「リネン……私、自分自身の心を問い直したの。リネンのこと、私はどう思っているんだろう……って」 そう言って、フリューネはリネンの瞳を見つめた。 「リネン……これからは、恋人として一緒の空を飛びましょう?」 それが、フリューネの答えだった。 「フリューネ……!!」 「たくさん待たせて、ごめんね」 少しだけ俯き加減で、言うフリューネ。それだけ、フリューネの中でも長い間迷っていたということが現れていた。 「しおらしいこと言うと、フリューネらしくないわよ」 リネンの言葉に、フリューネとリネンは思わず顔を見合わせて笑い合う。 「フリューネ、好きよ」 二人がどちらともなく見上げた月は、先ほどまで見ていた月よりも、遥かに美しく輝いていた。
▼担当マスター
八子 棗
▼マスターコメント
初めましての方は初めまして。そしてこんにちは、八子 棗です。 十五夜を過ぎてから半月。冷え込んできましたが、体調など崩されていませんでしょうか。 皆様、思い思いのお月見は楽しんで頂けましたでしょうか。 何かひとつでも関係を進展させたり、想いを確かめ合ったり、今までの関係に結論を出すお手伝いができれば、と思いながら執筆して参りました。 皆様一人一人が、今後良い未来へと進んでいけますよう、願っております。 それでは、また他のシナリオでお会いする機会を楽しみにしております。