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一会→十会 —指先で紡ぐ、聖夜の贈り物—

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一会→十会 —指先で紡ぐ、聖夜の贈り物—
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【丁寧に、丁寧に】


 ぬいぐるみ制作の作業台を回りお菓子を配り歩いていたクロエを見て、ジゼルは「いいなー」と言葉を漏らした。
「お菓子作り。楽しそう」
 そんな言葉に振り返って、クロエがにっこり笑う。
「すっごくたのしいわ! ジゼルおねぇちゃんもおかしづくりグループだったらよかったのに」
「うん。
 私ね、何時も破名の孤児院に行くときは、お菓子を持って行くの。やっぱりケーキが一番人気ね。今度クロエも一緒に作りましょ。どんなレシピがいいかしらね――」
 お菓子の名前を上げるジゼルと言葉を交わして、クロエは言う。
「ジゼルおねぇちゃんとのおかしづくり、たのしみにしてるわ。
 ねぇ、たべるのは? すき?」
「食べるのも好きよ。
 クリスマスのお菓子ってどれも甘くて美味しいわよね。
 この間お友達が言っていたクリスマスのお料理も、甘いパンだったわ。
 オレンジピールの入ったパンや、卵黄がたっぷり入った星形の金色のパンを食べるのだそうよ」
「すごくクリスマスなかんじね。かわいい」
「それからこの間は別のお友達と一緒にクッキーを沢山焼いたわ。それも彼の国の伝統なんですって」
「へぇぇ。ジゼルおねぇちゃん、いろいろなことをしっているのね」
「実は私は全然知らないの」と苦笑して息を吐き、それからジゼルは微笑んだ。
「沢山のお友達が沢山の事を教えてくれるの。
 シャンバラには地球の色んな国の人が集まっているから、それだけいっぱいの素敵な事があるのね」


*...***...*


 『クロエ・レイスのために、クリスマスの定番アイテムであるキャンディケインを作ってプレゼントしたい』
 そう、シャーロット・ジェイドリング(しゃーろっと・じぇいどりんぐ)から相談を受けたローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は、最後にキャンディ作りをしたのはいつだったかを懐かしみながら、シャーロットにキャンディ作りの難しさを説く。
「シャーロットはれでぃですから、諦めないのですぅ!」
「……分かったわ。じゃあ早速準備を始めましょう」
 シャーロットの意思が固いのを確認して、ローザマリアは準備を始める。
「どういうのを作るか、考えはある?」
「種類があるんですの?」
「……伝統的なものは赤と白の縞模様ね。他にも味や色を変えて作ることもあるわ」
「なるほど、そうでしたの。そうですわね……青と白と赤、がいいですぅ」
 クロエの全身を思い浮かべながら、シャーロットが答える。テーブルの上に砂糖と水飴、それと三色のフレーバーシロップが用意された。
「まずは砂糖と水飴を煮詰める。この時の温度で出来る飴が変わるわ。思い通りの飴にするのは容易では無いこと、覚えておいて頂戴」
 頷くシャーロットの前で、ローザマリアは煮詰め具合を確かめる。
「このくらいになったら、鍋を一旦水につけてそれ以上温度が上がらないようにする。あまり温度を上げ過ぎると硬くなって食べられなくなるから」
「どのくらい硬いんですの?」
「試したことはないけど……下手すると歯が欠けるかもね。試してみる?」
「イヤですぅ!」
 ぷい、と顔を背けるシャーロットにローザマリアが微笑みながら、敷いたホイルの上に溶かした飴を流す。
「ここから少し熱を取ったら、引き伸ばして、練り上げていく。フレーバーシロップを好みの量調節してね。
 何度も繰り返すと飴が空気を含んで綺麗な光沢を放つようになるわ。でも手早くやらないと固まってしまうから気をつけて。後、飴は熱いから気をつけないと火傷するわ」
「む、難しいですぅ! どうやればいいんですかぁ!?」
「火傷しないように手早く練り上げる、よ。私がリードするから、頑張って付いて来なさい」
「い、言われなくてもですぅ!」
 そう宣言したシャーロットが、おっかなびっくり、飴を練り上げていく。
(……そういえば、人形って熱さを感じるのかしら?)
 そんな事を考えながら、シャーロットが何とかキャンディケインを完成させられるようにフォローを続ける――。