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【2024VDWD】甘い幸福

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9.二十歳の誕生日♪

 2月14日。
 今日はバレンタインデーそして、秋月 葵(あきづき・あおい)の誕生日でもある。
 更に!
「葵さん、二十歳の誕生日、おめでとうございますっ!」
「ありがとう、アレナちゃん」
 2024年の今日、葵は二十歳になったのだ。
 葵はアレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)を誘いに、西シャンバラのロイヤルガードの宿舎に訪れていた。
「はい。葵ちゃん特製バレンタインチョコだよ♪」
 大切に持ってきた箱を、アレナへと差し出す。
「今回は苺と紅茶風味の二種類の生チョコ♪ あとこっちはシフォンケーキ。ちょっと大きめなので優子隊長と一緒に食べると良いかも〜」
「ありがとうございます。……優子さんと一緒に食べれたら嬉しい、です」
「ん? もしかして優子隊長しばらくこっちには来ないの?」
 葵の問いにアレナは首を縦に振った。
 でもあまり寂しそうではなかった。
「卒業前で忙しいのかな……」
「ずっと体調悪かったので、百合園でやることも沢山残ってるみたいで……でも、卒業したら、こっちにいることの方が多くなるんです」
 とても嬉しそうなアレナの顔を見て、葵の顔にも笑みが浮かぶ。
「それじゃ、優子隊長と会えなかったらこっちの宿舎にいるロイヤルガードの友達と食べてね♪」
「はい!」

 着替えてコートを纏って。
 葵とアレナは空京の街に繰り出した。
 心が温まる映画を見たり、ちょっとしたお買い物をしたり。
 寒いと言いながら、アイスを食べて。
 それからちょっと遅めのお昼ご飯を食べる為に、レストランに入った。
 アレナはリゾットを、葵はパスタを頼んで美味しく楽しく食事を終えたあとで。
「二十歳になったし、お酒もちょっと飲んでみたいな」
「お酒、ですか……。でも葵さん」
 まだ10代前半に見えます。
 とは言わない方がいいのかなと思い、アレナは言葉を飲み込んだ。
「お菓子作りで使ったりするけど直接飲んだりはしなかったからね〜♪ ちょっと興味があるんだ〜」
 パラミタでは外見10歳前後でも、実年齢は1000歳以上という魔女たちも沢山いるし、葵が飲む姿もここでは異質ではないはずだ。
「うん、いい匂い……かな?」
 注文したお酒はすぐに届いた。
 お菓子作りにも使っている酒、ということでブランデーを頼んだ。
「私もちょっとだけ」
 アレナは、グラスワインを頼んでいた。
「いただきます……」
 ちょこっと舐めて味を確かめた後、ジュースと同じようにごくごく葵は飲んでいった。
「これが大人の味なんだね〜っ」
「美味しいですか?」
「んんんん……味はちょっとわかんないかなあ〜」
 グラスを置いて、葵は水を飲もうとした。
 だけれどなぜか、水が入ったグラスを掴むことが出来ない。
「あれ? なんだか周りが歪んで見える……」
 向かいにいるアレナの姿も歪んで見えた。
「葵さん?」
 ゆらゆら揺れ出した葵に、アレナが慌てて駆け寄った。
「アレナちゃーん……なんだか喉が焼けるように熱い……」
「葵さん、しっかりしてください。そんなに量飲んでないはずですけれど……っ」
「んー……ふふふにゃにゃ……はわわん……」
 アレナに寄りかかって、幸せそうな顔で葵はないやら呟いていた。

 葵の意識がはっきりと戻ったのは、数時間後のことだった。
「葵さん、大丈夫ですか? 気持ち悪いですか?」
「ううん、大丈夫……ちょっと胃がびっくりしただけだと思う。ごめんね、迷惑かけちゃって」
 車を手配して、ロイヤルガードの宿舎まで連れてきてくれたアレナに、葵は申し訳なさそうに謝った。
「これからヴァイシャリーに戻るんですよね? 迎えに来てもらいましょうか……優子さんに」
「いや、それはいい!」
 びくっとして葵はベッドから飛び降りた。
「このことは優子隊長に秘密でお願い……!」
「……はい」
 不思議そうな顔でアレナは頷いた。
「それと、お酒はもう良いかな〜あはは……」
「ふふふ。ちょっとだけなら、お酒飲むの、楽しいですよ」
「う、うん……そうかな?」
 ふうと大きくため息をついて。
 葵はアレナに飛空艇発着場まで送ってもらったのだった。