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【2024VDWD】甘い幸福

リアクション公開中!

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リアクション


34.「リア充」の、バレンタイン

ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)は、
アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)を誘い、
空京のショッピングモールへとやってきていた。

アーデルハイトはリア充への嫉妬に身を焦がすのが恒例行事となっており、
バレンタイン時期ならではの
きらびやかなモールの中に入れなかったこともあったりしたのだが。

今は、もう、そんなことはない。

「『リア充め!』とか言いながら騒ぐのも悪くはありませんが、
こうゆうときは楽しんだ方が得ですよね」
「ふふ、大人の余裕というのを見せつけてやろう」
ザカコの言葉に、アーデルハイトが小さな胸を張ってみせた。
「さあ、今日は一日たっぷりとリア充になって楽しみましょう!」
普段より少し大胆な気持ちになり、
ザカコは、アーデルハイトの手を取って、モールの中を歩きだす。

「流石にバレンタインだけあって、カップル向けの物が多いですね」
買いものしつつ散策しながら、ザカコが言う。

「うむ!
私も、今年は、バレンタインを満喫するのじゃ!
誘ってくれてありがとうな、ザカコ」
「いえいえ、こちらこそお付き合いいただいてうれしいです」

ウィンドウショッピングしながら、アーデルハイトの見つめていたものを、
ザカコは見逃さなかった。

「じゃあ、これはバレンタインプレゼントです」

小さなペンダント。

「ありがとう。
よく見ていてくれたの」

「アーデルさんかわいいですし、良く似合いますよ。
自分も色違いのを持ってもいいですか?」

男女ともに持ってもよさそうなデザインであり、
ザカコも自分用をお揃いで買うのであった。

やがて、休憩に入った喫茶店で、
ザカコはメニューを見て言う。
「この、大きなストローの繋がったドリンク、
頼んでみたいのですが……ダメですか?」

「うむ、あの飲み物、美味そうじゃし。
いかにもリア充に見えるのではないかの。
今日は特別じゃぞ?」

アーデルハイトが、他の客が飲んでいるのを見て、快諾してくれた。

グラスには花火のようなものがささっており、
パチパチと火花を立てる。

「こ、これ、どうやって飲んでいけばいいのかのう!?」
「ふ、普通に飲めば平気だと思いますが、火傷しないですかね?
アーデルさん、気をつけてくださいね」
「な、何を言う。こんなもの、私の魔法に比べれば……!」
大騒ぎしつつ、二人は、飲み物を楽しんだ。



ゆっくりと、二人はバレンタインの一日を楽しみ……。
やがて、街は日が落ちてネオンが輝き始める。

「アーデルさんと一緒だったので今日も一日とても楽しかったです」
「うむ、私もじゃよ。
リア充が満喫できて楽しかったぞ!」

ザカコは、アーデルハイトに、
綺麗にラッピングされた手作りのチョコレートを差し出した。
「渡すのが最後になってしまいましたが、バレンタインのチョコレートです」
ザカコは、にっこりと笑い、続けた。
「色々買い物もしましたけど、
やっぱりバレンタインと言えばチョコですからね。
お口に合えば良いのですが」

アーデルハイトは笑みを浮かべ、チョコレートを受け取った。

「ありがとう。今日は、本当に楽しかった。
私も、おまえのために用意して来たんじゃ」

アーデルハイトがザカコにチョコレートを渡す。
ザカコは、期待はしていたものの、
感激しながらアーデルハイトの顔を見つめる。
「アーデルさん……!」

「まあ、言ってみれば、お歳暮のようなものじゃが。
……じゃが、私の手作りじゃぞ?
いろいろと秘密の材料を使ったからな」
アーデルハイトがウインクして見せる。

「そ、それは、食べるのがドキドキしますね。
でも、とってもうれしいです!」
ザカコは、満面の笑みで、アーデルハイトのチョコを受け取った。

「うむ、そこまで喜んでもらえると、私も、贈ったかいがあるというものじゃ。
おまえのチョコも、大切に食べるからな」
アーデルハイトもうれしそうに笑みを浮かべた。

そして、二人は、揃って、イルミンスールへと帰っていったのだった。