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【2024初夏】声を聞かせて

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【2024初夏】声を聞かせて
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5.あそぼ〜あそぼ〜あそぼ〜♪

 初夏の某日。
 シャンバラから子供達を沢山引き連れて、魔女のリーア・エルレンとゆかいな仲間達が、地球の森林公園を訪れた。
「はーい、良い子のみんな〜。帰りましょ〜の音楽がなったら、ここに戻ってくるのよ? それまでは公園内で自由に過ごしていいわ〜。汚れたらお着替えはここのコテージで、ご飯はこっち、トイレはここよ」
 子供達に簡単に説明をすると。
「はい、かいさ〜ん!」
 リーアは手を叩いて、子供達を開放する。
 わーいと声を上げて、子供達はお友達と一緒に遊び場へと走っていった。
「ああ、可愛い。やっぱり子供は可愛いわ〜ほのぼのする」
 リーアはベンチに腰かけて、飲みの物を飲みながら、自然というより自然の中で遊ぶ子供達の姿をほのぼの眺め始める。
「いえでも……本当はリーアさんより大きな方ばかりなのでは……」
「見かけはそうかもしれないけど、5000年以上生きてる私からみたらみーーーーーーんな、赤ちゃんのようなものなのよ。今日は本来の姿に戻してあげただけ。さ、あなたも遊んできなさい」
 リーアはサポートとして訪れたその女性――風見 瑠奈(かざみ るな)に、ジュースを差し出すが、瑠奈は首を左右に振った。
「契約者とはいえ、思考能力も皆幼児になっているみたいですので、事故が起こらないように看ていてあげないと……」
「えーい!」
「きゃっ!」
 突如、6歳児と化したブラヌ・ラスダーと悪友たちが瑠奈のスカートをめくった。
「なんだスパッツなんてはきがやって。ほかのおんなさがそーぜ」
「あっちに、さくらいしずかいるぜー」
「しずかのパンツ、みにいこうぜ〜」
「……こーらーーーーーっ!」
 悪ガキ達を追いかけて、瑠奈は走っていった。
「うふふ、悪戯っ子も可愛いわよね〜。ただ……私はほかの女に入らないのかしらね」
 お茶を飲み笑いながら、ちょっとだけ不満そうにリーアは言うのだった。

「アレナちゃん、おはなかざりできたよ〜」
 秋月 葵(あきづき・あおい)は一生懸命つくった花飾りを、一緒に遠足に訪れたアレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)にはいっと渡した。
「ありがとです、あおいちゃん」
 アレナの顔にぱっと笑みが浮かぶ。
「かわいい、です」
「うん、たくさんのおはなのひとつ」
 2人は一面に咲いている花々を見て嬉しそうな笑みを浮かべる。
「それじゃ、ここにシートひいて、おべんとうにしよっか」
「はい……っ」
 葵は青色のリュックの中から、空色のビニールシートを取り出して。
 アレナはベージュのリュックの中から、水玉のシートを取り出して、お花畑の側にしいた。
「ママがみんなでたべられるように、いっぱいつくってくれたの〜」
「わあ……っ」
 葵のリュックの中からは、美味しそうな料理が入ったパックやバスケットが出てきた。
「ちょっとおもかったよ〜。アレナちゃん、すいとうもってくれてありがとね」
「はい!」
 葵が重そうにしていたので、アレナは葵の水筒を持ってあげていた。
 水筒のコップにお茶を入れて、お手拭で手を拭いて。
「いただきます」
「いただきます♪」
 にっこり笑って言うと、二人はお弁当を食べ始めた。
「うめぼしのおにぎりすっぱーい」
「レモンもすっぱいですー。おやさいはちょっとにがーいです。うふふふ」
「あははは♪」
 笑い合いながら、2人は他愛ない楽しい話を沢山していく。

○     ○     ○


「しずかさんにちかづくなーーーーー!」
 ちっちゃくなったロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は、ぶんぶん木の枝を振り回して、悪ガキたちを追い払った。
「ちょっとめをはなしたすきに……こんなことになるなんて」
「ロザリンドさん、僕は大丈夫……というか、流石に自分で追い払えるから」
 悪ガキに囲まれていた桜井 静香(さくらい・しずか)は大人……というより、普段の女性のような姿のままだった。
「お弁当、貰ってきてくれたんだよね?」
「はい、もらってきましたー」
 一転、ロザリンドの顔が明るくなって、紙皿に沢山乗せてきた食べ物を静香に差し出す。
「しずかさん、はい、あんぜんなごはん!」
「ありがとう、ベンチに座って食べようか」
「うん」
 景色のいい場所にあるベンチに、静香は腰かけた。
 ロザリンドもその隣に、よじ登るように登って、腰かけた。
「おはなきれい、ちょうちょうさんもかわいいー」
 幼児化したロザリンドはご飯を食べながらも、花や蝶、遊ぶ子供達に気を取られていた。
「近くで見てきていいよ。ここでみててあげるから」
 サンドイッチを食べながら、静香が優しく言った。
「ううん! ここでいいの。ここがすきなの」
 ロザリンドは強く首を振って、小さな手で静香の腕を掴んだ。
「あのね……わたし、しずかさんのことだーいすき」
 だから、静香の側にいたいんだと、満面の笑顔で話していく。
「こまったことがあったら、わたしのやりでどーんとふん…ふん……ふんさい!
ふんさいするからあんしんしてね」
 そしてまた、木の棒を掴んでブンブンと振る。
「ふんさい……はははっ」
 可愛らしいロザリンドの言葉に、静香が笑い声をあげた。
「なにかわたしにしてほしいことある? できてないことある?
 たりないこといっぱいあるかもしれないけど、なんでもできるようにがんばるからね」
「ロザリンドさんはいつも頑張ってて凄いよ。何もしてあげられてないのも、できてないのも僕の方で……」
「そんなことないよ。しずかさん、がんばってる、えらいえらい」
 ベンチの上に立って、ロザリンドは静香の頭を撫でた。
「ありがとう」
 ひょいっと、静香がロザリンドの身体を持ち上げて、自分の膝の上に乗せた。
 ロザリンドは少しの間きょとんとしていて。
 次の瞬間とっても嬉しそうな笑みを浮かべて。
「わたしもっとがんばる。そしてぜったいぜった、まもるから」
 静香にぎゅっと抱きついた。
「ずーっとずーっといっしょにいようね!」
「……うん」
 静香は愛しげに小さなロザリンドを抱きしめて。
 彼女の頭に唇を寄せて、キスをした。
「ありがとう。
 僕は1人じゃ何も出来ないから、皆が必要なんだ。
 君が必要なんだ……」

○     ○     ○


「アレナちゃん、こっちこっち〜」
「あおいちゃん、まってください、あおいちゃーん」
「あたしは、あおい。まほーしょうじょなの♪」
 葵は笑い声を上げながら駆けていた。
「えっと、わたしはサジ……ん? アレナ、ほしのおはなの、えっとようせいさんなの〜」
 アレナも控え目にそう言いながら、葵を追いかける。
「アレナちゃんはようせいさんなんだ?」
「よーせいさん、かわいい、です。あおいちゃんも、まほうしょうじょよーせいなのです」
「うん、それじゃ、あたしはあおい、よーせーのまほーしょうじょなの♪」
 お花畑で、くるくる回ったり走り回ったり。
 2人は仲良く笑い合い、追いかけっこをしたり、木登りをしてみたり。
 本当にお花の妖精のように。
 笑顔で自然の中を飛び回るように、見ている人々の顔も笑顔にしながら走り回っていた。