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【5周年記念】スペシャル番組『パラミタ大陸』

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イーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)の一日】

 眠い。我々はひたすらに眠かった。
「ごめんなさいね……こんなところから撮るなんて思わなかったものだから」
 彼女はとても早起きで働き者だ。でなければこんな早くからレポートの採点を黙々とできるわけがない。

―朝早いですね。

「夜更かしより早起き派なの。昼間は開発の仕事もあるし……慣れちゃったわ。
 ……うん、よし。それじゃ朝食にしましょう。ご馳走するわ」
 優しく、落ち着いた物言いで、包み込まれるような気分になる。
 イーリャについていくと、ジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)ヴァディーシャ・アカーシ(う゛ぁでぃーしゃ・あかーし)が目を覚まし、朝食の準備をして待っていた。
「うわ、本当に撮影してる……適当に作ったから、適当に食べて頂戴」
 ぶっきらぼうなジヴァの言葉、食卓に並ぶシチューと黒パンは我々の胃を目覚めさせる。
「美味しいわ」
「及第点ですね。夕飯はボクが当番ですから腕を奮って」
「ごめんなさい。少し遅くなるの」
「あ、そうでした。……大丈夫です。作って待ってるです! ……ピースっ」
 微笑ましいやりとりをしている二人。と、不意にヴァディーシャが指でVの字を作ってカメラにポーズしていたのが、印象的だった。

 朝も終わると、イーリャは天御柱学院に出勤した。
 イコン開発の仕事を行うらしい。
「私は第三世代機……最新鋭機のセラフィムやストーク系列の開発に関わっているわ。
 完成したと言っているけど、色々と微調整や課題が残っているの」
 丁寧に解説をしてくれるイーリャ。が、実際我々には理解できない部分も多かった。
「最近では敵がセラフィム級のイコンを投入もしてくるわ……強化は急務なの」
 彼女はそう言う。少し顔つきに怖さが混じった。

 夜間になるとイーリャは講義を受け持つという。
「昼間の講義もやっているわよ? 今日はたまたまだから。
 あの人に負けないようにしないとね」
 昼、話をしていた人のことだろうか。
「……えぇと、今日の授業はこのページからね。それじゃテキストを開いてください」
 講義を受けに来ている生徒たちへ、自分が持てるありったけの知識を教えていく彼女。
 その表情に、我々が先ほど感じた怖さは感じられなかった。


長谷川 真琴(はせがわ・まこと)の一日】

 真琴は真田 恵美(さなだ・めぐみ)と一緒に起床する。
 朝食とお弁当の準備を手際よくこなしながら、テレビから流れるニュースをチェック。
 朝食が出来上がる直前にはシャワーを浴び終えたクリスチーナ・アーヴィン(くりすちーな・あーう゛ぃん)も合流し、三人一緒に朝食を食べる。これが毎日の日課だそうだ。

 昼になれば、天御柱学院での教官として彼女の一日が再度始まりを告げる。
 イコンの整備方法、イコン内部、メカニックについて座学で教える。
 普段は現場での仕事が多いが、後進育成にも力を入れているのが窺える。
 クリスチーナは実習で大いに活躍し、恵美は一学生として勉強する日々。
 教科書には載っていない自分自身の実体験を交え、よりリアルに、より伝わり易いように勉強を教える真琴。
 こと実習中は何時にもまして凛とした表情で生徒たちを見守る。
 クリスチーナも的確に整備をする様を見せて、生徒たちへイコン整備とは何かを、身をもって教えていく。
 だが実習が終われば、笑顔の絶えない美人な教官に戻る真琴。
 それだけ生徒たちの身を案じているのだろう
 お昼休憩ではゆっくりとお弁当をぱくつく。若干弁当がファンシーに見えるのは「恵美がやったから」とのこと。


 そしてここから、二人の一日が交差する――
【イーリャ・アカーシ×長谷川 真琴】

「あら、こんにちは」
「イーリャさん、こんにちは」
 お弁当を食べ終わった真琴の所へ、イーリャが姿を現した。
 共にイコンについて教える者同士、話題は尽きない。
「今日は開発のお仕事ですか」
「そうね。講義は夜間から。エレクトロンボルト、グラヒトリのこともあるから、そっちを優先といったところかしら」
「成程……あまり根を詰めないでくださいね」
「勿論。生徒たちのためにも、倒れるなんてことだけはしないわ」
 真琴の隣にイーリャが座る。
「生徒たちの方はどうかしら」
「ええ。皆さんいい目をしています。グラヒトリが空京へ向かってきた時、イコンパイロットとイコン整備士が力を最大限に合わせた、って皆喜んでいました」
「あれ、噂になっているのね。確か、真琴さんが火付け役よね」
 そう言われた真琴「いえ」と首を横に振る。
「私以外にもう一人いたんです。……だけど、私も嬉しかった。私の整備が皆の力になっていると、改めて実感できて」
「いいわね、私も負けないようにしないと。……それじゃ、夜間講義の準備があるから」
「はい。頑張って下さいね」
 そう言って、二人は別れた。

「クリスチーナ、イコプラ製作もほどほどにね」
「あいよー」
「真琴、ここなんだけど」
「ああ。それはね――」
 夕飯を終えた三人。クリスチーナは自室へ、真琴は恵美に勉強を教える。
 それもひと段落すると、明日の準備のためプリントを作成する真琴。
 全てのプリントをすり終えて、真琴は一息ついた。

―イコンパイロットとイコン整備士、これからも気持ちが一緒になるといいですね。

「そうあれるよう、私は皆さんが無事に戻ってきてくれるような、そんな整備を心がけます。
 ……さあ、明日も一日安全第一で頑張りましょう」

 これがイーリャ・アカーシ、そして長谷川 真琴の一日――